那須川天心選手 今後について「わかんないです」「限界は感じてない」一方でSNSには再び「もう何が何だかよくわからないです」
那須川天心選手が、2度目の世界挑戦を終えた。
27日、東京・トヨタアリーナ東京で行われたWBC世界バンタム級タイトルマッチで、天心選手は王者・井上拓真選手に0-3の判定で敗れた。
ジャッジの採点は116-111、116-111、114-113。3人全員が井上選手を勝者とした。
昨年11月に続く再戦でも世界王座には届かなかったが、試合後の天心選手は敗戦を単純に受け入れたわけではなかった。
「限界は感じてないですよ。ダウンもとったし、自分の中では負けた気はしてない。ボクシングで負けて、ポイントゲームで負けた」
自身の敗戦を「ポイントゲーム」という言葉で表現した。
一方で、今後について問われると、
「わかんないです。とりあえず、わかんないです。今、口にしたくないです」
と答えた。
▪️「ポイントゲーム」で残った数字
天心選手の言う「ポイントゲーム」が何を意味するのか。
その一端は、ジャッジシートとパンチスタッツに表れている。
今回の採点は、
116-111
116-111
114-113
だった。
7回には天心選手がダウンを奪っている。
それでも、12ラウンド全体を通じた採点では井上選手が上回った。
さらにCompuBoxのパンチスタッツを見ると、
井上選手は420発中121発をヒットさせ、ヒット率は28.8%。
天心選手は498発を放ち、99発をヒットさせ、ヒット率は19.2%だった。
ヒット数は121対99。
一方で、パンチの総数は天心選手が498発、井上選手が420発。
つまり天心選手は手数では上回ったものの、
実際に届いたパンチの数と割合では井上選手が上回った。
ジャブでも井上選手が20/156で12.8%、天心選手が12/178で6.7%。
パワーパンチも井上選手が101/264で38.3%、天心選手が87/320で27.2%だった。
もちろん、パンチスタッツだけで各ラウンドの採点を説明できるわけではない。
ボクシングの判定は、単純なヒット数の比較ではなく、ラウンドごとの有効打、攻勢、試合の支配などをジャッジが総合的に判断する。
それでも、今回の公式採点とスタッツを並べると、天心選手が表現した「ポイントゲーム」という言葉の背景は見えてくる。
▪️ダウンを奪っても判定決着では巻き返せなかった
今回の試合で最も印象的だった場面の一つが、7回のダウンだった。
天心選手が井上選手からダウンを奪ったことで、試合の流れが変わる可能性もあった。
しかし、それでも12ラウンド終了後のジャッジは3人とも井上選手を支持した。
ここに、天心選手が感じた「負けた気はしていない」という感覚と、公式記録としての判定負けとの違いがある。
本人にとっては、ダウンを奪い、最後まで戦い切ったという手応えがあった。
しかし、世界戦は一つのラウンド、一つの場面だけで決まるわけではない。
12ラウンドを積み重ねた結果として、ジャッジシートには井上選手の勝利が記録された。
▪️一夜明けてSNS投稿も再び「もう何が何だかよくわからないです」
そして28日、天心選手は自身のSNSを更新した。
そこには、
「もう何が何だかよくわからないです ありがとうございました」
と記されていた。
試合後の会見でも、今後について「わかんないです」と話していた天心選手。
一夜明けても、すぐに次の方向を示すのではなく、現在の心境をそのまま短い言葉で伝えた。
2度目の世界挑戦に向けて準備を重ね、実際に7回にはダウンを奪った。
それでも結果は判定負けだった。
その落差を考えれば、試合直後に次の目標や進退について明確な答えを出せないこと自体は、不自然ではない。
▪️「限界は感じてない」という一言
ただし、天心選手はボクシングそのものについては、明確に「限界は感じてない」と話している。
ここは、今回の敗戦を考えるうえで重要な部分だ。
「今後はわからない」という言葉と、「限界は感じていない」という言葉は、意味が違う。
現時点で次の進路を決められていない。
しかし、自分のボクシングに終わりを感じているわけでもない。
少なくとも試合直後の発言からは、その二つを同時に読み取ることができる。
世界王座を懸けた2度の井上戦で結果を残せなかった一方、7回にはダウンを奪い、本人も「限界は感じてない」と話した。
だからこそ、今回の敗戦は「これで終わり」と結論づけられるものではない。
今回の試合で確定したのは、井上選手の判定勝利と、天心選手の世界王座獲得ならずという結果だ。
格闘技とボクシングのキャリアで初めて同じ選手に2度 負けたダメージは簡単に消えるものではない。世界挑戦を終えた28歳の天心選手が、次にどんな決断をするのか。

