流血も止められなかった大砲 RISE世界王者の大﨑孔稀選手がラジャダムナンで衝撃KO戴冠 ムエタイでも頂点への扉を開く
【©️RWS】
日本の立ち技格闘技界が誇るRISE世界王者 大﨑孔稀選手が、
ムエタイの“聖地”ラジャダムナンスタジアムで新たな歴史を刻んだ。
6月27日、タイ・バンコクのラジャダムナンスタジアムで開催された「RWS(ラジャダムナン・ワールドシリーズ)200」。暫定スーパーバンタム級(55.3キロ以下)王座決定戦で、大﨑選手はランキング8位のチャイトーン・ウォー・ウラチャー選手(タイ)を1ラウンド2分31秒KOで撃破。RISE世界王者に続き、ムエタイでもベルトを腰に巻く快挙を成し遂げた。
この勝利の価値は、単なるタイトル獲得にとどまらない。近年、日本のキックボクサーがムエタイ本場で存在感を示すケースは増えているものの、ラジャダムナン王座は依然としてタイ人選手が築き上げてきた牙城だ。その頂点に、日本人王者が名を刻んだ意味は極めて大きい。
▪️「ムエタイの洗礼」を浴びても止まらなかった攻撃
試合は開始直後から緊迫した展開となった。
サウスポーのチャイトーン選手は左ミドルキックや前蹴りで巧みに距離を支配。さらに開始早々、大﨑選手は相手の鋭い左ヒジを受け、額から大量出血するアクシデントに見舞われた。
ムエタイではヒジ打ちが大きな武器となる。その“本場の洗礼”をまともに浴びた形だったが、大﨑選手は一歩も引かなかった。
流れる血をものともせず前進を続けると、持ち味である強打が一気に爆発。右ストレートで相手の動きを止めると、さらに右ストレート、左フックと畳み掛け、チャイトーン選手を豪快にマットへ沈めた。
ダウンしたチャイトーン選手は焦点が定まらず、マウスピースも口からこぼれ落ちそうな危険な状態。レフェリーは迷うことなく試合を止め、鮮烈なKO決着となった。
▪️「倒せばいい」。覚悟が生んだ豪快フィニッシュ
勝利の瞬間、大﨑選手はコーナーポストへ駆け上がり、力強いガッツポーズで歓喜を爆発させた。
試合後には「最高です!」と第一声を発すると、
「1ラウンド目からムエタイの洗礼を浴びましたけど、ヒジで切られても最後まで打撃を振り続けると決めていました。もらっても倒せばいいと思って振り切りました」
と、自身の覚悟を振り返った。
大量出血という不利な状況でも攻撃姿勢を貫き、最後は一撃で試合を終わらせる。その勝負師としての資質を改めて世界へ印象付ける内容だった。
▪️暫定王座の先にある「真の王者」との決戦
本来、大﨑選手は正規王者ペッシラー・ウォー・ウラチャー選手への挑戦を予定していた。しかし、王者の病気欠場により、急きょ暫定王座決定戦へ変更される異例の展開となった。
それだけに、大﨑選手の視線はすでに統一戦へ向いている。
リング上で王座統一戦への意欲を問われると、
「もちろんです。僕はペッシラー選手を倒すためにタイへ来ました。ペッシラー選手、やりましょう!」
と力強く対戦をアピール。暫定王者に満足することなく、“本当の世界一”を目指す姿勢を鮮明にした。
▪️兄の雪辱を果たした意味
今回の戴冠には、もう一つの物語があった。
兄の大﨑一貴選手も昨年12月、RWSでラジャダムナン認定バンタム級王座に挑戦したものの、ジャルンスック・ブーンラナームエタイ選手に判定負けを喫し、本場タイの壁の高さを痛感していた。
その悔しさを胸に、大﨑孔稀選手は「兄の分も」という思いを抱いてリングへ上がった。そして流血を乗り越え、自らの拳でベルトをつかみ取る最高の結末を演出。兄弟で追い続けてきた夢を、一つの形として実現させた。
さらに、この日の勝利で大﨑選手は勝利ボーナス、KOボーナスなどを合わせて85万バーツ(約375万円)を獲得。競技面だけでなく、世界市場で評価されるファイターとしての価値も一段と高まった。
RISE王者として国内を制し、今度はムエタイ最高峰でもタイトルを手にした大﨑孔稀選手。日本の立ち技界を代表するエースは、いまや国内王者の枠を超え、世界の軽量級戦線を牽引する存在へと歩みを進めている。次なる焦点は、正規王者ペッシラー選手との王座統一戦。その一戦は、大﨑選手が真の世界王者となるかを占う試金石となりそうだ。


