米国UFC 316“進化”か“幻想”か──オマリー再戦に挑むも、ドバリシビリの壁は依然として高い現実
2025年6月8日(日本時間)、米ニュージャージー州ニューアークで開催される『UFC 316』のメインイベントでは、世界バンタム級タイトルマッチとしてメラブ・ドバリシビリ vs. ショーン・オマリーの再戦が組まれている。
話題性あるビックカードだが、実力差という現実を直視すれば、今回の再戦が“名勝負”に化ける可能性には慎重な目が必要だ。
▪️実力差の再確認となるか?前回完敗したオマリーの再挑戦
前回、2024年9月の一戦では、ドバリシビリが徹底したテイクダウンとコントロールでオマリーを封じきり、完勝といえる内容で王座を奪取した。オマリーが5Rにボディへの前蹴りを当てた場面があったとはいえ、それを“唯一の見せ場”と呼ばざるを得なかったのは事実だ。
その後、ドバリシビリは2025年1月、ダゲスタンの技巧派ウマル・ヌルマゴメドフに対しても判定勝利。試合内容としては派手さに欠けたが、バンタム級における安定感は際立っており、特に“倒されない・倒す”を徹底するファイトスタイルは、冷静に見れば極めて実利的で、タイトル防衛に相応しい戦略だった。
今回、オマリーが直接リマッチのチャンスを得たことには賛否がある。ランキングや他の挑戦者の存在を無視したこのマッチメイクは、やや興行寄りの判断とも受け取れる。もちろん話題性は十分だが、それが実力差を覆す保証にはならない。
▪️「謙虚さ」は武器になるか──変化をアピールするオマリー
ドバリシビリ戦後、オマリーは派手な言動を控え、SNSでの発信も減少。
再戦に向けて「変わった」姿勢を強調しているが、それが試合内容に直結する保証はない。むしろ、SNSでのパフォーマンスが鳴りを潜めたことで、ファン層の一部に“存在感の薄れ”すら感じさせている。
会見では「前回とは違う戦いになる」と自信をにじませたオマリーだが、それが精神面の成長を意味するのか、戦術面での新しい引き出しを得たのかは、現時点では不透明だ。
▪️ドバリシビリは減量も刷新、「淡々と勝つ」スタイルを貫くか
王者ドバリシビリは今回、減量法を変えて臨んでおり、134ポンド(60.78kg)で計量をスムーズにクリア。計量の時点でフィジカル面の不安は見えず、過去12連勝という実績も、伊達ではない。
ドバリシビリはメディア対応でも過度な発言は避け、「オマリーを甘く見てはいけない。彼はアルジャメインをKOした男だ」と、挑戦者へのリスペクトを口にした。だが、この発言は謙遜というよりも、試合の注目度を保つための“冷静な演出”とも読み取れる。
実際、ドバリシビリの試合は堅実でありながら、派手なフィニッシュが少ない分、“見せ場”を求めるファンには賛否がある。今回の再戦でも、そのスタイルに変化があるとは考えにくく、「判定でもいいから確実に勝つ」という従来の方針を貫く可能性が高い。
▪️アンダーカードは変動続き、注目の新鋭チョインスキーが登場
同大会では、ウェルター級のウロシュ・メディチが体調不良で欠場し、急遽アンドレアス・ガスタフソンが代打出場。さらにライト級では、無敗のマーク・チョインスキー(8勝0敗/6フィニッシュ)がUFCデビュー戦に臨む。安定性に欠ける試合カード変更が続く中、チョインスキーの試合が唯一の“未知の期待”を残す存在となっている。
UFCがオマリーに再びチャンスを与えた背景には、話題性・人気というビジネス的理由が見え隠れする。だが、ファンが求めているのは“ブランドの顔”の復活ではなく、“内容のある競技”だ。
再戦が真の意味でのクロスロードとなるか、それともドバリシビリによる再確認となるか。判定の先に待つ答えは、厳しい現実かもしれない。