ボクシング井上尚弥選手「2027年引退」を再表明
無敗王者の“美学”に揺れるファン心理
【井上尚弥選手・公式インスタグラムより画像】
4団体統一世界王者として日本ボクシング界に燦然と輝く井上尚弥選手(32=大橋ジム)が、2027年をキャリアの終着点に据えていることを改めて明言した。
米老舗ボクシング専門誌『リング・マガジン』のインタビューで語ったもので、
「今年を含めて、あと3年くらい」と自らの引退時期に踏み込んだ発言をした。
SNSやファンの間では驚きと戸惑い、そして静かな納得が入り混じる声が相次いでいる。
■ 引退は「35歳まで」と決めていた “延長の余地”も語っていた過去
井上選手はキャリア初期から、「現役は35歳まで」と語ってきたことで知られる。これは単なる願望ではなく、自身のピークを冷静に見極めたうえでの戦略的な選択だった。
しかし、2023年7月のスティーブン・フルトン戦(スーパーバンタム級転級初戦)で圧巻のKO勝利を収めた後、会長の大橋秀行氏に「35歳から2年プラスしてもいいですか?」と語ったというエピソードもある。ファンの間では「もしかしたら延びるのでは」と淡い期待も残されていた。
だが今回のインタビューでは、再び「あと3年くらい」という表現を用い、当初の“35歳引退”を再確認するような姿勢を見せた。言葉には、これまでのキャリアと、これからの限られた時間をどう積み重ねていくかに対する、静かな覚悟がにじむ。
■ 「衰えはないが、備える必要がある」 王者の自己分析と引き際の美学
「体力やパフォーマンスの衰えは、今はまだ感じていない」と語りつつも、「それでも、いつか必ずその日は来る。だからこそ、備えることが大切」と続けた。
この言葉に象徴されるように、彼の強さは単なるフィジカルや技術にとどまらない。年齢とコンディションを冷静に分析し、感情より理性を優先する姿勢に、ボクシング界のトップとしての矜持がある。
■「フェザー級が限界」――現実的な目標設定へシフト
23年9月には「32歳でフェザーの体をつくり、35歳くらいでスーパーフェザーに挑戦できれば」と将来の構想を描いていた。だが、最新の発言では「フェザー級が限界」と語っており、年齢や体格を踏まえた現実的な目標設定へとシフトした可能性がある。
スーパーバンタム級に続く階級制覇を目指すと同時に、「限界を見極め、無理をしない」方向性は、むしろ彼のストイックさを象徴している。
■ 2026年のビッグマッチに注目 “引退ロード”はすでに始まっている
井上選手の今後のスケジュールはすでに注目カードが並んでいる。
2025年9月にはムロジョン・アフマダリエフとの一戦が浮上。さらに、イギリスの無敗ファイター・ニック・ボールとの対戦の噂もある。
2026年5月には中谷潤人との“日本人頂上決戦”も予定されており、
そのすべてがボクシング史に残るビッグマッチとなる可能性を秘めている。
■ 井上尚弥選手、終わりを決める王者の強さ
最強を極めた男が、最強のままリングを降りる——
その姿は、現代スポーツにおける一つの理想形かもしれない。
2027年、引退のその日まで。井上の物語は、クライマックスに向けて動き出している。