【UFC】中村倫也選手 ヒースタンド選手に2R一本負け 明暗を分けた「組み」の攻防、長期ブランク明けの相手にバックを許す
中村倫也選手のUFC連勝は、2試合で止まった。
9月26日(日本時間27日)、米ネバダ州ラスベガスのMETA APEXで開催された「UFC Fight Night: Rosas Jr. vs. Barcelos」。バンタム級で行われた一戦で、中村選手はブレイディ・ヒースタンド選手に2R4分07秒、リアネイキドチョークで一本負けを喫した。
約1年1カ月ぶりの復帰戦となった中村選手に対し、ヒースタンド選手も長期離脱からの復帰戦。
ともに再起を懸けた一戦だったが、最後に勝敗を分けたのは打撃ではなく、
グラップリングの攻防だった。
▪️1Rは中村選手の左の攻撃が機能していたが・・・
サウスポー構えの中村選手は、序盤から左の蹴りを中心に距離を作った。
左インロー、左ミドル、左ハイを織り交ぜながら、前に出てくるヒースタンド選手をけん制。ヒースタンド選手が組みに入る場面でも、簡単には倒されず、距離を取り直していく。
中村選手の左ミドルが入る場面もあり、ヒースタンド選手の右の攻撃をさばきながら、自分のレンジを維持する時間も作った。
ヒースタンド選手は右を振りながら前進し、ニータップやダブルレッグなどで組みつこうとする。
それに対して中村選手もテイクダウンを切り、右方向へ回りながら対応した。
1Rは両者の攻防が入れ替わる展開となり、少なくとも中村選手が一方的に押し込まれていたわけではない。
むしろ、中村選手が打撃で距離を作り、ヒースタンド選手が組みで崩そうとする構図がはっきりしたラウンドだった。
大きな変化が起きたのは2Rだった。
ヒースタンド選手は右を出しながら前進。中村選手がシングルレッグに入ると、ヒースタンド選手は首を抱えて対応する。
ここからアナコンダチョークを狙う。
中村選手は横方向へ回転することで脱出に成功したものの、ヒースタンド選手は攻撃を止めなかった。
立ち上がる中村選手に対して再び組みつき、首を狙う。
中村選手もヒジを使って対応するが、ヒースタンド選手はシングルレッグからさらに組みを続ける。
ここで重要だったのが、一つの攻撃を防がれても、次の攻撃へ移行するヒースタンド選手の連続性だった。
テイクダウンを狙う。
首を狙う。
ポジションを変える。
そして再び組み直す。
中村選手は一つ一つの攻撃には対応していたものの、その連続したグラップリングに付き合わされる時間が長くなっていった。
▪️決定的だったバック奪取
さらにヒースタンド選手は四つの状態からボディーロックへ瞬時に動く。
中村選手も右の小手を使って抵抗するが、ヒースタンド選手は投げから上のポジションを奪い、
さらに背中を狙う。
中村選手は一瞬、後ろ三角を狙う場面を作った。
しかしヒースタンド選手はそこを許さない。
潜りながら中村選手の背中へ回る。
ここで試合の流れが決定的に変わった。
背中につかれた中村選手は、ヒースタンド選手の右足を巻き込むようにして前転し、逃れようとする。
ところがヒースタンド選手はその動きについていき、先に右腕を首へ回した。
さらに両足を絡め、バックを完全にコントロール。
中村選手は後ろ手を剥がそうとするが、ヒースタンド選手は頭を隠すようにしてグリップを完成させる。
そしてリアネイキドチョークを完璧に食い込ませる
中村選手からタップを奪った。
2R4分07秒。
試合は一本で決着した。
▪️「レスリングで負けた」だけでは説明できない
中村選手はフリースタイルレスリング61キロ級で2017年U-23世界選手権を制した実績を持つ。
そのため今回の結果を、「レスリングの強い中村選手が組みで敗れた」とだけ捉えると、試合の内容を十分に説明できない。
1Rには中村選手がテイクダウンを防ぐ場面があり、2Rに入ってからもアナコンダチョークを一度は回避している。
つまり、ヒースタンド選手の最初の攻撃に対して何もできなかったわけではない。
試合を分けたのは、その先だった。
一つの攻撃を防いだ後、次の組みの局面をどう終わらせるか。
そこではヒースタンド選手が上回った。
組みから首を狙い、首からポジションを変え、ポジションを変えた先でバックを奪う。
そしてバックから一気にフィニッシュへ持ち込む。
この連続性が、中村選手にとって大きな壁になった。
ヒースタンド選手にとっても簡単な復帰戦ではなかった。
2024年6月のギャレット・アームフィールド戦以来、2年以上の長期間にわたって実戦から離れていた。
過去には前十字靱帯の手術も経験しており、今回が長期離脱後の復帰戦で、ここで勝利しなければリリースの可能性もあり、首の皮一枚の可能性もあった。
その崖っぷちの状況下での試合では鬼気迫る覚悟のようなものがあった。
組みの局面に入ると粘り強さを発揮。
特に2Rは、アナコンダチョークを逃げられた後も攻撃を止めず、最終的にはバックから一本まで持っていった流れるようなスピード感は好機を逃さない完成度の高いフィニッシュだった。
試合後のインタビューで、ヒースタンド選手は自身のグラップリング能力について強い言葉を口にした。
中村選手について「U-23の王者で、オリンピックレベルのレスラー」と評価したうえで、
「誰がバックを取った? 誰がチョークで落とした? 誰が最初にテイクダウンを奪った? 俺だ」
と勝利を振り返った。
さらに、長期ブランクからの復帰戦で勝利したことについて、
「2年ぶりの復帰だ。ブレイディ・ヒースタンドという名前を覚えておいてくれ」
とアピール。
次戦についてはランキング入りした選手との対戦を要求し、この日のメインイベントの勝者との対戦も希望した。
復帰戦で中村選手から一本を奪ったことで、ヒースタンド選手にとっては今後のUFCキャリアにつながる大きな勝利となった。
一方、中村選手にとっては悔しい復帰戦となった。
2025年1月のUFC 311ではムイン・ガフロフ選手に判定負けを喫したものの、その後のネイサン・フレッチャー戦では1R TKO勝ち。
そこから肩の腱や右膝の負傷などもあり、再び長い離脱を余儀なくされた。
今回、約1年1カ月ぶりにUFCへ戻ってきたが、2Rのグラップリングで試合を終わらされた。
今回の敗戦は、中村選手にとって、UFCのこの階級の猛者ばかりの厳しさを改めて突きつけられてしまう一戦になった。
【文:高須基一朗 瞬刊モッツ編集部】


