那須川龍心選手 ONE参戦の真価 敗戦を恐れず世界へ挑む20歳
【©️ONE Championship 】
世界最大級の格闘技団体ONE Championshipが発表した那須川龍心選手(20=TEAM TEPPEN)のONE初参戦は、日本格闘技界にとって単なる海外デビューのニュースではない。
むしろそこには、日本軽量級の未来を担う若き王者が、
国内王者から世界基準のファイターへと進化するための明確な戦略が見えてくる。
龍心選手は7月24日に開催される「ONE Friday Fights 163」で、
タイの実力者トンプーン・PK・センチャイ選手と対戦する。
相手はONEで10戦を経験し、勝利の大半をKOで飾ってきた
超攻撃型の危険なファイターだ。
しかし今回、注目すべきは対戦カードそのもの以上に、
龍心選手がなぜ今このタイミングでONEへ向かうのかという点にある。
▪️直近の敗戦は評価を下げる材料ではない
龍心選手は6月、RISEのリングで大﨑一貴選手との激闘に敗れた。
デビュー以来積み重ねてきた連勝はストップしたものの、その敗戦だけで龍心選手の価値が揺らぐことはない。
むしろ重要なのは、その後の選択だ。
国内で再起戦を重ねる道もあったはずだが、龍心選手は世界最高峰の競争環境へ飛び込む決断を下した。
格闘技史を振り返れば、本物のトップファイターは敗北を経験しながら完成されていく。
敗戦そのものよりも、その後にどのような挑戦を選ぶかが選手の価値を決定づける。
20歳にして世界市場へ挑む姿勢こそが、龍心選手の最大の強みと言えるだろう。
▪️ストロー級参戦は「減量逃れ」ではなく最適解
今回の参戦で見落としてはならないのが階級設定である。
龍心選手は、これまでの主戦場としていたRISEでは53キロのスーパーフライ級王者として活躍している。
一方、ONEで戦うのは125ポンド(56.7キロ)のストロー級キックボクシングだ。
ONEでは、子のストロー級が最下級の体重となるゆえに、
この階級での選択肢以外は無いのが現状。
数字だけを見れば約3.7キロの差がある。
龍心選手は日本の軽量級トップ戦線で活躍してきた一方で、決して大柄な選手ではない。
国内競技では過度な減量を前提とした階級設定が珍しくないが、
ONEは独自のハイドレーションテストを導入し、極端な水抜きを認めていない。
そのためONEでは「実際の身体の大きさ」が試合に反映されやすい。
世界を見据えるならば、無理に体重を削るよりも、
本来のパフォーマンスを発揮できる階級で戦う方が理にかなっている。
今回のストロー級挑戦は、龍心選手がより大きな舞台で長期的に成功するための布石と見るべきだろう。
▪️TEAM TEPPENが見据える世界基準
さらに興味深いのは、その背景である。
2026年に入ってからTEAM TEPPEN所属選手のONE参戦は急速に増えている。
これは偶然ではない。
TEAM TEPPENを率いる父であり会長の那須川弘幸氏は、長年にわたって日本と海外のトップ選手たちを見続けてきた。
近年、所属選手たちがONEの舞台へ次々と挑戦する中で、弘幸氏は日本と海外のトップファイターとの違いを肌で感じているはずだ。
単純な身長やリーチだけではない。
骨格の強さ、フィジカルコンタクトへの耐性、体幹の強度、組み際の圧力、そして試合を通じて出力を維持する身体能力――。世界トップクラスの選手たちは、日本国内の競技環境とは異なる身体的アドバンテージを持っている。
だからこそTEAM TEPPENは、世界で勝つための適正階級を慎重に見極めている。
今回のストロー級への那須川選手の参戦への決断も、単なるマッチメークではなく、
世界基準を知る陣営だからこその勝てる未来が見えるからこその判断だろう。
▪️武尊選手 吉成名高選手に続く存在になれるか
現在のONEには
武尊選手、吉成名高選手をはじめ、日本を代表する軽量級トップファイターたちが参戦して
大きな結果を残している。
軽量級の世界最高峰とされるONEの舞台で結果を残すことは、
近年では国内タイトル以上の価値を持つ。
龍心選手もまた、その流れに続こうとしている。
敗戦を乗り越えた20歳の王者が、自らの可能性を世界へ証明する第一歩だ。
【文:高須基一朗】

