与座優貴選手は世界最強の栄冠を奪取できるか!? ONE世界王座挑戦に透ける日本キック界の構造変化
【©️ONE Championship 】
4月29日、東京・有明アリーナで開催される『ONE SAMURAI.1』
この大会で与座優貴が、ONEバンタム級キックボクシング世界王座に挑むことが決まった。対するは王者ジョナサン・ハガティー。
舞台はアジア発の世界的格闘技団体、ONE Championshipである。
単なるタイトルマッチではない。
これは、日本キックボクシング界の実力水準を可視化する一戦でもある。
かつて日本はK-1を中心に、立ち技格闘技の“世界の中心地”だった。
しかし現在、競技の主戦場はグローバル配信を基盤とするONEへと移行している。競技人口、報酬体系、放映権ビジネス、ファイターの国際流動性―そのすべてが再編されつつある。
与座選手の挑戦は、個人の戴冠劇であると同時に、日本の育成システムが世界基準に適応できているかを問う検証でもある。
▪️王者ハガティーという完成されたモデル
ジョナサン・ハガティーは、ムエタイを軸にキャリアを積み上げてきた英国の技巧派ファイターだ。ISKA、WBCムエタイのタイトルを獲得後、ONEに参戦。サムエーを破ってフライ級ムエタイ王座を獲得し、その後ロッタンに敗れるも再浮上。2023年にはノンオーをKOで沈め、バンタム級ムエタイ王座を戴冠した。
さらに同年、ファブリシオ・アンドラージを破りキックボクシング王座も奪取。ムエタイとキックの二冠王へと上り詰めた。
2024年にスーパーレックに49秒KOで敗れムエタイ王座は失ったが、キック王座は保持。2025年2月にはウェイ・ルイを退け、初防衛に成功している。戦績24勝(16KO)5敗。精度と決定力を兼ね備えた、“倒せる王者”だ。
▪️与座優貴選手という越境者
一方の与座優貴選手は、極真空手出身という異色の経歴を持つ。
2017年に極真会館全世界ウェイト制空手道選手権を制覇。伝統派でもムエタイでもない、空手由来の間合いと踏み込みを武器に、2019年にキックボクシングへ転向した。
転機は2022年。当時のK-1王者・朝久泰央選手を延長戦で破り、一躍トップ戦線へ浮上する。再戦でも勝利し、第6代K-1 WORLD GPライト級王座を奪取。
国内団体の枠を超え、RISE、そしてONEへと戦場を拡張していった。
特筆すべきは2025年の連勝劇だ。
元ONE王者ペッタノンを撃破し、さらにはスーパーレックにも勝利。
これは偶然ではない。与座選手は国内実績の延長ではなく、世界基準を想定した戦い方へと進化している。
戦績は22勝(9KO)2敗。
爆発的なKOファイターというより、戦術遂行能力と適応力で勝ち切るタイプだ。
▪️勝敗が示すもの
この試合の本質は、単なるベルトの移動ではない。
国内団体で完成した王者が、国際マーケットの頂点に立てるのか。
日本のトレーニング環境、マッチメイク、戦術思想は、ONEという競争環境に対抗できるのか。
与座選手が、この大一番で勝利すれば、それは「国内王者でも世界を制せる」という証明になる。敗れれば、日本キック界は育成と国際戦略の再考を迫られるだろう。
▪️鍵を握る“序盤での主導権争い”
ハガティーは距離管理とカウンター精度に優れる。
相手のリズムを崩し、削り、最後に倒す。対する与座は独特の間合いと踏み込みで流れを断ち切るタイプだ。
焦点は序盤。与座選手が主導権を握れるかどうか。
ハガティーに試合を“組み立てさせれば”厳しい展開になる。
一方で、テンポを奪い切れば、番狂わせではなく必然の戴冠も見えてくる。
4月29日、有明アリーナで鳴るゴングは、一人の挑戦者の未来だけでなく、
日本キックボクシングの実力水準を明確に映し出すことになる。
【文:高須基一朗】

