大平龍選手がシルバーウルフ勢の新たな歴史を刻む 同門 長野翔選手との激闘制しKrushバンタム級王座獲得「格闘技界をこれから引っ張っていく」
【©️K-1】
10月31日に東京・後楽園ホールで開催された「Krush.193」。セミファイナルでは、第10代Krushバンタム級王座決定トーナメント決勝戦が行われ、K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフの大平龍選手が、同門の長野翔選手との対決を制して新王者に輝いた。
ともに同じジムで研鑽を積んできた2人が、タイトルを懸けて拳を交えるという特別な一戦。大平選手は3ラウンドに2度のダウンを奪い、3-0の判定勝ちでベルトを獲得した。
試合後には、長野選手への敬意や師匠への感謝、さらに自身の家庭環境についても率直に語った大平選手。シルバーウルフの歴史を背負う新王者として、K-1、Krushにとどまらず、格闘技界をけん引する決意を表明した。
▪️シルバーウルフ同門対決へ それぞれの道を歩んだ2人
今回の王座決定トーナメントは、前王者・黒川瑛斗の王座返上に伴って実施された。今年1月の「Krush.188」で1回戦が始まり、約10カ月にわたる戦いを経て、決勝にたどり着いたのが大平選手と長野選手だった。
大平選手は1回戦で松谷梛選手を1ラウンドKOで撃破。準々決勝では対戦相手の変更や計量失格という不測の事態を経て準決勝進出を決めると、続く試合でも1ラウンドKO勝ちを収めた。
7月開催の「K-1 DONTAKU 2026」で行われた準決勝では石郷慶人選手と対戦。2度のダウンを奪う試合運びで判定勝ちを収め、決勝への切符を手にした。
一方、シード枠から準々決勝に登場した長野選手も、早田吏喜選手を判定で下して勝ち上がった。準決勝では東選手との接戦を2-0の判定で制し、決勝進出を果たした。
こうして実現したのが、同じシルバーウルフに所属する2人による王座決定戦だった。
▪️カーフキックと多彩な攻撃で主導権、2度のダウンを奪う
1ラウンドは、長野選手が前に出て圧力をかける展開となった。左ミドルやジャブ、右ストレートで攻める長野選手に対し、大平選手はフットワークを使いながらローキックやパンチを織り交ぜ、冷静に応戦。互いに譲らない攻防が続いた。
試合が大きく動いたのは2ラウンドだった。
大平選手は右カーフキックを効果的に使い、長野選手の足を削りながら攻撃の幅を広げていく。さらにワンツーからカーフキックを重ね、打ち合いの中で飛びヒザ蹴りから左フックをヒット。これで長野選手から最初のダウンを奪った。
立ち上がった長野選手も懸命に応戦したが、大平選手は前蹴りやアッパー、ハイキックなどを織り交ぜて攻勢を維持。KOを狙う積極的な攻撃を見せた。
勝負を決定づけたのは最終3ラウンド。長野選手も右ストレートやワンツーで反撃を試みたが、大平選手はインロー、ボディー、カーフキックを使い分け、攻撃のリズムを崩さない。
終盤には互いにパンチを打ち合う激しい展開となったが、大平選手は的確に右カーフキックを当てながら前進。終了間際には左フックをクリーンヒットさせ、2度目のダウンを奪った。
試合終了のゴングが鳴り、判定は30-26、29-26、30-26の3-0。大平選手が同門対決を制し、第10代Krushバンタム級王者の座をつかんだ。
▪️シルバーウルフの歴史を背負う新王者、長野選手への思い
試合後のマイクで大平選手は、まず決勝で拳を交えた長野選手への思いを口にした。
「僕が上京してからずっと翔を超えようと思いながら練習していて。でも翔はめっちゃ強いし、試合前もめちゃくちゃ怖くて複雑な気持ちもありました」
勝利を喜ぶ一方で、同じジムで切磋琢磨してきたライバルへの敬意も忘れなかった。
「今日、僕が勝ちましたけど、これからも翔とは永遠のライバルだと思っているので。翔、これからも一緒に強くなっていこう。そして格闘技を一緒に盛り上げましょう」
さらに、上京して以来指導を受けてきた大宮司進氏への感謝を語る場面では、思わず涙を浮かべた。
「格闘技のことだけじゃなくても、人間としてめちゃくちゃ強くしてくれたと思います。これからも大きい壁に当たると思うんですけど、大宮司さんとだったらどんな高い壁でも乗り越えられると思います」
競技者としてだけでなく、人間として成長させてくれた師匠への感謝。その言葉からは、シルバーウルフで積み重ねてきた時間の重みが伝わってきた。
▪️魔裟斗、KANA、金子晃大らが築いた系譜に新たなベルト
今回の戴冠で、大平選手が特に強調したのが、所属するK-1ジム三軒茶屋シルバーウルフの歴史だった。
同ジムは、第一世代の大宮司氏や魔裟斗さんが活躍したことで知られ、その後も金子晃大選手、菅原美優選手、KANA選手らが国内外の舞台で存在感を示してきた。
それぞれの時代を代表する選手たちが築いてきた実績は、シルバーウルフの大きな財産でもある。
大平選手は、そうした先輩たちの歩みを振り返りながら、最近はジムにベルトがなかったことにも触れ、自身の戴冠が新たな一歩になるとの思いを語った。
「シルバーウルフはここ最近ベルトがなくて、僕が獲ったんですけれど」
そして、同大会のメインイベントで登場する児玉兼慎選手にも期待を寄せ、ジムとして2本目のベルト獲得を目指す姿勢を示した。
魔裟斗さんらが築いた歴史を受け継ぎ、金子選手や菅原選手、KANA選手らが活躍してきたシルバーウルフ。今回の大平選手の戴冠は、そうした系譜に新たな王者が加わったという意味でも印象深い出来事となった。
▪️大所帯 七人 家族への思いを胸に「格闘技界をこれから引っ張っていく」
大平選手のスピーチでは、家庭環境についての率直な告白もあった。
中学1年生の頃に家族が離れ離れになり、再び全員がそろうことはないかもしれないと思っていたという。しかし、自身が格闘技を続け、試合に出場するたびに家族が集まるようになった。
「僕は7人家族なんですけれど、試合の度に家族が集まって。こうして一緒に今日も来てくれているんですけれど、こうして家族が7人揃うのは僕が格闘技をしているから、格闘技があるからだと思っています」
自身の競技活動が、家族を再び結び付ける大切な機会になっている。
その思いを明かしたうえで、今後は格闘技を通じて恩返しをしていく決意を示した。
そして、最後には力強く宣言した。
「僕がK-1、Krushだけじゃなくて格闘技界をこれから引っ張っていくので応援よろしくお願いします」
同門のライバルとの決勝戦を制し、師匠や家族、
そして所属ジムへの感謝を胸に獲得したKrushのベルト。
シルバーウルフの新たな王者となった大平選手が、今後どのような戦いを見せていくのか。先輩たちが築いてきた歴史を受け継ぎながら、
自らの時代を切り開いていく挑戦が始まった。
【文:高須基一朗 瞬刊モッツ 編集部】



