超RIZIN.5 第7試合 速報テキスト 朝倉未来が青木真也を17連発パウンドKO 組みの攻防を耐えて一瞬の隙をついて強烈な連打で決着

2026.9.10

 

「完敗、以上」

青木真也選手は、試合後のプレスルームでマイクを握ると、短くそう言い切った。

9月10日、京セラドーム大阪で開催された「ANGEL CHAMPAGNE presents 超RIZIN.5 浪速の超復活祭り」。

第7試合では、約11年ぶりにRIZINへ戻ってきた青木真也選手と、復帰戦を迎えた朝倉未来選手が対戦した。

RIZIN MMAルール、5分3R、71.0kg契約。

日本格闘技界を長く支えてきた青木選手と、現在の日本格闘技を象徴する存在の一人である朝倉選手。世代もファイトスタイルも異なる2人の対決は、1Rで決着した。

勝ったのは朝倉選手。

青木選手の組みをしのいだ朝倉選手がグラウンドでパウンドを連打し、レフェリーが試合をストップ。1RパウンドによるTKO勝利を収めた。

だが、この試合には勝敗だけでは語り切れない意味があった。

試合前から青木選手が向き合っていた「狂気」という言葉。その答えを、試合後の本人が自ら口にした。

「取り戻せなかったですね」

43歳の青木選手が、現在の自分と真正面から向き合った瞬間だった。


 

▪️青木が試合開始直後いきなり組みへ 得意のグラップリングで朝倉を捕らえる

ゴングが鳴ると、青木選手は迷わず前へ出た。

朝倉選手の左ストレートに合わせて組みつき、テイクダウンを狙う。さらに自ら引き込むような形から関節技を仕掛け、序盤から得意のグラップリングへ持ち込もうとした。

朝倉選手にその攻撃をしのがれても、青木選手は止まらない。

再び距離を詰めると、今度はバックポジションを奪う。

そして、青木選手が狙ったのは得意の腕十字だった。

朝倉選手の左腕を捕らえ、フィニッシュへ向かおうとする青木選手。

ここが勝負の瞬間だった。

朝倉選手は腕十字の狙いを察知すると、素早く左腕を抜いて脱出。そのまま青木選手への反撃に移った。

グラウンドでパンチを連打すると、青木選手は防御に回る。

朝倉選手の攻撃は止まらず、最後は17発のパウンドを浴びせたところでレフェリーが試合をストップした。

青木選手は、自らが最も得意とするグラップリングの展開に持ち込みながら、最後のフィニッシュまでつなげることができなかった。

 

▪️「狂気」を取り戻せるのか!? 青木が試合前から抱えていた問い

この一戦で青木選手が向き合っていたのは、単純な勝敗だけではなかった。

PRIDE、DREAM、ONE Championshipなど、長年にわたって世界のトップ舞台で戦ってきた青木選手。

寝技を軸とした独自のファイトスタイルで数々の一本勝ちを積み重ね、相手を一瞬で仕留める極めの強さを武器としてきた。

その象徴ともいえる言葉が「狂気」だった。

しかし、43歳となった現在、かつてと同じ感覚で戦えるのか。

青木選手自身も、その問いから逃げなかった。

試合前には、

「狂気みたいなものが湧いてこなかったら、湧いてこないでしょうがない」

と語っていた。

さらに、

「試合当日、もっと言うなら試合開始のゴングがなった時に自分がどうなっているのかは分からない」

とも話していた。

自分の中にかつての感覚が戻ってくるのか。

それとも、43歳の肉体は別の答えを示すのか。

その答えは、リングの上で明らかになった。

 

▪️セコンドに鹿志村仁之介選手 「かっこいい青木真也」を見せるために

今回、青木選手がセコンドの一人として選んだのが、RIZINで活躍するグラップラーの鹿志村仁之介選手だった。

鹿志村選手は、青木選手のファイトスタイルから大きな影響を受けてきた格闘家の一人。

青木選手は、鹿志村選手について、自分の「偶像」を見てきた存在だからこそ、そばにいることで自分自身が「かっこいい先輩、かっこいい青木真也」を見せようと思えるのではないかと話していた。

試合後、鹿志村選手はセコンドとしての役割を振り返りながら、青木選手が実際にテイクダウンへ向かった姿を見て「本気」だったと感じたことを明かした。

そして、11月のRIZIN.55で太田忍選手との対戦が決まっている自身の今後について、青木選手からスタイルを受け継ぐ決意を口にした。

「今までの自分は青木さんの真似事だったんですけど、本人から許可をもらったので、僕が青木さんのスタイルを継承させてもらいます」

青木選手がこの日、かつての「狂気」を取り戻せなかったとしても、長年にわたって築いてきた技術や戦い方まで消えるわけではない。

それを次の世代へつなぐ存在が、すでに生まれている。

 

▪️「取り戻せなかったですね」 青木が43歳の自分を本音で語る

試合後のプレスルームで「完敗、以上」と話した青木選手。

その後、控え室へ戻る途中でも話を聞くことができた。

そこで青木選手は、打撃に対する反応が以前より鈍くなっていることを率直に認めた。

さらに、自分が思い描いていたようなタフファイトを続けられる状態ではなかったことも明かした。

改めて「狂気を取り戻せたか」と問われると、青木選手は迷わず答えた。

「取り戻せなかったですね」

試合に向けてやるべきことはやった。

しかし、実際にゴングが鳴ると、思うように力が出なかった。

それを踏まえた上で、青木選手はこう続けた。

「これ以上はやっちゃダメだし、もうやらないでもいいでしょう。ただ仕事としては抜群だったと思います。一休みして、もうひと頑張りしますよ」

現時点で引退を明言したわけではない。

むしろ、一度休みながらも「もうひと頑張り」という言葉を残した。

青木選手が今後、再びどの舞台に立つのかは分からない。

それでも、この一戦に向けて自分を追い込み、43歳で朝倉選手と向き合ったことは確かだ。

 

▪️朝倉未来は1R17連発パウンドTKO 復帰戦で強烈なインパクト

一方、勝利した朝倉選手にとっては、復帰戦をこれ以上ない形で終える結果となった。

青木選手の組みを受け、バックを許す場面がありながらも決定的な関節技を許さず、腕十字を抜けた瞬間に一気に反撃。

最後はグラウンドで17発のパウンドを浴びせ、TKO勝利を手にした。

試合前、朝倉選手は「すごい試合を見せます」と語っていた。

青木選手も「僕には積み上げてきたものがあります。明日、全力で出し切りたい」と話していた。

その言葉通り、2人が選んだのは互いの持ち味をぶつける戦いだった。

そして最後に勝負を決めたのは、朝倉選手の一瞬の判断と攻撃力だった。

 

▪️青木が朝倉の勝利を称える「日本の格闘技の1ページ」

試合後、印象的な場面もあった。

青木選手は朝倉選手の左手を持ち上げ、その勝利を称えた。

敗者としてリングを降りながらも、勝者を認める青木選手の姿だった。

朝倉選手もリング上で青木選手への感謝を口にした。

「日本の格闘技の1ページです。俺はこの経験を得て先を目指したいと思います。青木選手、ありがとうございました」

長年、日本の格闘技界を支えてきた青木選手との対戦を終えた朝倉選手にとって、この試合は自身のキャリアにおいても特別な一戦になった。

そして、その直後に飛び出したのが、朝倉選手らしい言葉だった。

「今日は、テキーラ100杯目指して頑張ります」

復帰戦を終えたばかりの朝倉選手は、

笑顔を見せながら大阪の夜を楽しむことを宣言。

リング上での緊張感とは一転した豪快な一言で、会場を沸かせた。


【文:高須基一朗】