スズキ「ジムニーノマド」ついに日本導入! 5ドア仕様がもたらす新たな可能性とは?

2025.1.30

スズキは1月30日、同社の人気クロスカントリーSUV『ジムニー』の

5ドアモデル『ジムニーノマド(以下ノマド)』を

日本市場に導入すると正式発表した。
発売日は2025年4月3日で、価格は265万1000円から。

 

インドで2023年1月に初公開されて以来、

日本市場への導入が期待されていた5ドア・ジムニー。

その背景にはどのような開発思想があったのか。

開発を統括した佐々木貴光チーフエンジニアに、

こだわりや開発の狙いが発表されている。

 

▪️「5ドアでもジムニーであること」開発の葛藤

ジムニーといえば、その本格的なオフロード性能とコンパクトな3ドアボディが特徴だ。しかし、5ドア化により、快適性や利便性が向上する一方で、

オフロード性能の低下が懸念される。

開発責任者の佐々木氏は、

ノマドの開発にあたって最も重要視したポイントについてこう語る。

「ジムニーは悪路走破性が命。

ラダーフレーム構造とスクエアなボディは必須条件です。

5ドア化によって利便性を向上させながらも、

このDNAを崩さないことが最大の課題でした」

実際、ホイールベースを単純に延長すれば、

後席の乗降性や居住性は向上する。

しかし、それではジムニーらしいオフロード性能が損なわれてしまう。

そのため、開発陣は「ジムニーの走破性を維持しながら、

いかに5ドア化するか」という難題に取り組んだ。

 

▪️5ドアの「ジムニー」誕生の背景

実は、スズキ社内では以前から「5ドアジムニー」の構想はあったという。しかし、長らく実現しなかったのは、まさに「走破性と快適性のバランス」が難しかったからだ。

しかし2018年、現行ジムニー(JB64/JB74)がデビューすると、

その人気は爆発的なものとなった。

「もともとジムニーは“細々と長く売っていく”クルマでした(笑)。でも現行モデルになってからは想像以上の反響があり、世界中で需要が拡大しました」(佐々木氏)

人気が高まるにつれ、「3ドアでは後席が使いづらい」「荷室がもう少し広ければ」といった声が多く寄せられるようになった。そこでスズキは、オフロード性能と快適性のバランスを突き詰めた結果、ついに「ジムニーノマド」の開発に踏み切ることになったのだ。

 

▪️「ホイールベースは伸ばしすぎない」開発のこだわり

5ドアモデルの開発において、最も重要視されたのが

「ホイールベースの延長幅」だった。

「単純にホイールベースを延ばせば快適になりますが、それではジムニーの魅力が失われてしまう。だからこそ、いかに短く抑えるかが命でした」

その結果、3ドアの『ジムニーシエラ』比で+340mmの延長にとどめた。これは、フロントドアを100mm短縮し、シート形状やフロアデザインの工夫で乗降性を確保しつつ、最小限の延長で収めることで実現したものだ。

また、重量増に伴う剛性低下を防ぐため、ラダーフレームには補強材を追加。さらにクロスメンバーを増設し、オフロード走行時の耐久性を確保した。

 

▪️5ドア化で向上した「乗り心地」と「安定性」

ジムニーといえば、オフロードでの走破性はもちろんだが、オンロードでの安定性も求められる。

5ドア化によりホイールベースが伸びたことで、「ランプブレークオーバーアングル(車体底面のクリアランス)」は若干減少したものの、一方で「走行時のピッチング(前後の揺れ)」が抑えられ、高速道路での安定感が向上した。

また、サスペンションは重量増に対応するため、フロントのコイルスプリングやショックアブソーバーのセッティングを最適化。リアもショックアブソーバーのチューニングが施され、しなやかで快適な乗り心地を実現している。

「5ドア化による走行性能の変化を最小限に抑えながら、

むしろオンロード性能を向上させることができました」

さらに、ATモデルでは機械的なロック機構を強化し、ブレーキ負荷を軽減するためにフロントブレーキをソリッドからベンチレーテッドディスクに変更。これにより、安全性も向上している。

 

▪️ターゲット層とは?

今回、日本市場で発売されるジムニーノマド。

果たしてどのようなユーザーをターゲットにしているのだろうか。

佐々木氏は、

「3ドアと5ドアはそれぞれ異なるニーズに応えるモデル。オフロードを本格的に楽しみたい方や、荷室を広く使いたい方に向けたモデル。ノマドは、よりファミリー向けで、リアシートの快適性を求める層にぴったりです」

 

例えば、まだ子供が小さいファミリー層であれば、チャイルドシートを設置しつつ、後席の利便性を活かした使い方ができる。また、アウトドア好きなユーザーにとっても、5ドアの利便性は魅力的だろう。

 

▪️「5ドアジムニー」は日本市場で成功するのか?

現在、日本市場ではジムニーの納車待ちが続いており、

ノマドの導入も市場に大きな影響を与えそうだ。

しかし、「ジムニーといえば3ドア」と考えるユーザーも多い。

そのため、5ドアモデルがどこまで受け入れられるかは未知数。

 

世界的なSUV人気の高まりや、日本国内でのアウトドアブームを考えれば、

「ノマド」の登場はジムニーの新たな可能性を広げる一歩となるかもしれない。