ハワイも「想定外」の時代へ ハリケーン・ローウェルが直撃級の被害 停電3万3000件、道路寸断…温暖化で変わる南国の常識

2026.9.10

 

日本列島だけではない。世界各地で、これまで「そこまで大きな影響は受けない」と考えられてきた地域が、極端な気象に見舞われている。

その一つが米ハワイ州だ。

9月にハワイ諸島を襲ったハリケーン「ローウェル(Lowell)」は、ハワイ諸島に上陸したわけではなかった。それにもかかわらず、カウアイ島を中心に猛烈な風や高波、大雨が猛威を振るい、電力網や道路、港湾などに深刻な被害をもたらした。

現地メディア「Hawaii News Now(HNN)」は、ローウェル通過後のカウアイ島について、復旧作業や被害調査が続いている状況を相次いで報じている。


 

▪️上陸しなくても「大打撃」カウアイ島で広がった被害

ローウェルで特に大きな被害を受けたのが、ハワイ諸島西部に位置するカウアイ島だった。

HNNによると、激しい風によって電柱や樹木が倒れ、道路には大量のがれきが散乱。主要道路の一部が通行できなくなるなど、島の交通網にも大きな影響が出た。

さらに電力網も大きく損傷し、一時は約3万3000件が停電。電力供給だけではなく、水道にも影響が及び、住民には節水が呼びかけられたという。

ローウェルの中心が島を直接通過したわけではないことを考えると、その被害の大きさは決して小さくない。

米国メディアも、カウアイ島では約3万5000の電力契約のほぼ全てが一時停電したと報道。道路の冠水や倒木、送電設備の損傷など、生活インフラそのものが打撃を受けたと伝えている。

「海」がハワイを襲った 22フィートの波が住宅地へ

今回のローウェルで印象的なのは、風と雨だけではない。

HNNはオアフ島西部のマカハ地区で、高波による被害が発生したことも報じている。

最大22フィートに達する波が押し寄せ、

ファーリントン・ハイウェイが閉鎖されたほか、住宅地にも海水が流れ込んだ。

ハワイといえば、世界有数の観光地として美しい海岸線が象徴的な存在だ。

しかし、その「海」がひとたび荒れれば、道路や住宅、港湾施設を直接脅かす。

今回のローウェルは、南国の島が抱える自然災害への脆弱性を改めて浮き彫りにした。

 

▪️港も農業も大打撃の被害 観光地だけの問題ではない

被害は住宅や道路だけにとどまらない。

HNNは、カウアイ島の農場で約12万ポンド(約54トン)のエビが停電によって危険な状態に置かれ、農作物の被害確認や出荷への影響を調べていると報じている。

さらにラナイ島では、港湾施設が大きな波の影響を受け、防波設備が動かされたほか、海上にコンテナが流され、地面に陥没穴が発生するなど、港そのものが使用できない状態になったという。

つまり今回のローウェルは、「観光客が海に近づけない」というレベルの話ではない。

電気、水、道路、港、農業、物流

生活と経済を支える基盤そのものが影響を受けた。

さらに無視できないのが、今回のローウェルだけが突然現れた災害ではないという点だ。

ハワイでは8月にも熱帯暴風雨「ララ(Lala)」の影響で、

大規模な停電や洪水、住宅被害が発生した。

ロイターの報道によると、ララの影響で州内では一時18万件を超える電力契約が停電し、少なくとも100棟の住宅が被害を受け、2棟が流されたとされる。

そのわずか数週間後に、今度はローウェルが接近した。

相次ぐ嵐によってハワイのインフラが抱える脆弱性が露呈していると報じ、

水道網などが停電に弱い構造になっていることへの警戒を伝えている。

 

▪️「ハワイだから大丈夫」が通用しなくなる可能性

ハワイでは、これまで大型ハリケーンの直接的な影響は比較的まれだった。

しかし、今回のように台風・ハリケーンの中心が上陸しなくても、

巨大な波や強風、大雨によって社会インフラが大きな被害を受けるケースは、決して軽視できない。

ローウェルは一時カテゴリー4まで発達し、最大風速150mph(約240km/h)に達した。ハワイに接近する過程では進路が大きく変化する可能性もあり、

天気予報関係者にとっても難しい状況となった。

そして今回、ハワイで特に注目されているのが「海」と「大気」の温暖化だ。

 

▪️温暖化で「強い台風」が生まれやすくなるのか

ここは冷静に見なければならない。

ローウェルという一つのハリケーンについて、

「地球温暖化が原因で発生した」と単純に結論づけることはできない。

一方で、地球温暖化によって海洋が温められ、大気中に存在できる水蒸気量が増えることは、強い降水や極端な降雨のリスクを高める要因となる。

また、ローウェルがハワイに接近した背景には、2026年の強いエルニーニョや海洋の高い水温など、複数の気象条件が重なっていたと報じられている。

温暖化によって極端な気象が起こり得る環境そのものが変化している可能性については、ハワイも日本も無関係ではない。

 

▪️日本だけの異常気象ではない

日本では近年、記録的な猛暑、大雨、線状降水帯、台風による大規模な浸水などが相次ぎ、「これまで経験したことのない災害」という言葉が頻繁に使われることとなり

珍しくなくなった。

だが、海を越えたハワイでも同じように、

これまでの常識では測りにくい天災が起きている。

しかもハワイは、太平洋上に浮かぶ島々で構成されている。

道路や港湾、電力、水道といったインフラが限られた地域に集中するため、一度大きな自然災害が発生すると、生活への影響が一気に広がる。

今回のローウェルは、その現実を突きつけた。

 

▪️「自然災害」から「社会全体のリスク」へ

ハリケーンの強さだけを見ると、今回のローウェルは「大型ハリケーンがハワイに接近した」というニュースに見える。

しかし、現地報道を追うと、問題はもっと複雑だ。

停電すれば水道にも影響する。

道路が寸断されれば物流が止まる。

港が使えなければ島外からの物資にも影響する。

農業が被害を受ければ食料供給にも影響する。

そして観光業に依存するハワイでは、道路や空港、ホテル、ビーチなどの機能が止まれば、地域経済そのものが揺らぐ。

ローウェルは、自然災害がそのまま社会インフラの問題へと変わることを示した。