Krush.191=10年ぶりのKrushで北井智大選手が見せた“ベテランの意地” 20歳・猪瀬尚希が鮮烈3連続KO「同じ流れを受け継ぐ」師弟の系譜にも注目
【©️K-1】
「Krush.191」(8月30日 東京・後楽園ホール)の第5試合で、
北井智大選手と猪瀬尚希選手が-64kg契約ワンマッチで激突した。
注目を集めたのは、34歳のベテランと、
20歳の新鋭という大きく世代の異なる2人による対決だった。
北井選手にとって、この一戦は特別な意味を持っていた。
2016年6月12日の「Krush.66」以来、実に約10年ぶりとなるKrush参戦。Krushのリングで数々の激闘を繰り広げ、その後はRISEを主戦場としてキャリアを積み重ねてきた北井選手が、再びKrushのリングに帰ってきた。
一方の猪瀬選手は、今年プロデビューしたばかりの20歳。
1月のデビュー戦では北原有起選手をKOで破ると、
4月にはK-1にも参戦し、聖来選手からKO勝利を挙げた。
プロ2戦2勝、2KO。
そして今回がKrush本戦初登場となった。
キャリアでは大きな差がある。
しかし、リングに上がれば年齢もキャリアも関係ない。
10年ぶりにKrushへ戻ってきたベテランと、
これからK-1・Krushの未来を担う可能性を秘めた20歳。
この一戦には、まさに世代交代を象徴するような意味も込められていた。
▪️1R、猪瀬がいきなり主導権
ゴングが鳴ると、猪瀬選手は落ち着いた立ち上がりを見せた。
カーフキック、ジャブ、ローキックを織り交ぜながら距離を探り、徐々にパンチの回転を上げていく。
北井選手も右フックや左ジャブ、左インローで応戦。
しかし、猪瀬選手はプレッシャーを強める。
右ストレートを効かせて北井選手の動きを止めると、そこから一気にパンチをまとめた。
左フック、右ストレート。
北井選手をロープ際へ追い込み、上下にパンチを打ち分ける。
そして、開始早々に最初のダウンを奪った。
北井選手は立ち上がる。
ベテランらしく、ここからの反撃が期待された。
しかし猪瀬選手は攻撃の手を緩めなかった。
再びパンチを連打し、北井選手をロープへ。
北井選手もガードを固めながらパンチを返そうとするが、猪瀬選手は攻撃を止めない。
顔面だけではない。
ボディーにもパンチを散らし、北井選手の防御を崩していく。
最後は左ボディー。
北井選手の身体がくの字になったところへ、猪瀬選手が左フックを追撃。
再び北井選手がダウンすると、レフェリーが試合をストップした。
1分30秒。
猪瀬選手が鮮烈なKO勝利を飾った。
これでプロ戦績は3戦3勝。
しかも、3試合すべてKO勝利という圧倒的なスタートとなった。
▪️10年ぶりのリングで挑戦した北井選手
結果だけを見れば、猪瀬選手の完勝だった。
しかし、この試合を語るうえで、北井選手が約10年ぶりにKrushのリングへ戻ってきたという事実も欠かせない。
北井選手は2011年9月から2016年6月までKrushで戦い、激闘派ファイターとしてファンを沸かせてきた。
その後はRISEへ活動の場を移し、長いキャリアを積み重ねてきた。
プロ戦績は51戦26勝(10KO)23敗2分。
決して平坦ではない道のりを歩みながら、それでもリングに立ち続けてきたベテランだ。
今回、約10年ぶりにKrushへ帰還したこと自体が、北井選手が積み重ねてきたキャリアの大きさを感じさせる場面だった。
若い選手が次々と台頭するなか、ベテランが再びKrushのリングに挑戦する。
そこには勝敗だけでは測れない価値がある。
▪️そして、この大会では“格闘技の系譜”を感じさせる場面も
今回のKrush.191では、試合そのものだけでなく、
リングサイドにも印象的な光景があった。
それが、チームドラゴンの前田代表がK-1関連大会のセコンドとして姿を見せたことだ。
かつてK-1の世界で数多くの選手を育て、格闘技界に大きな足跡を残してきた前田代表。
そして現在、K-1ジム総本部チームペガサスを率いる梶原代表。
この2人の間には、単なるジム同士という関係ではなく、格闘技を通じた師弟のつながりがある。
チームドラゴンから生まれた技術や精神、指導の流れは、時代を超えて次の世代へ受け継がれている。
その先に現在のK-1ジム総本部チームペガサスがある。
つまり今回、猪瀬選手が所属するチームペガサスの背景を見れば、そこにはK-1、チームドラゴン、そして前田代表から梶原代表へとつながる格闘技の系譜が存在している。
一人の選手だけを見るのではなく、その選手を育てる指導者、その指導者が受け継いできたものまでたどっていく。
そうすると、今回の猪瀬選手の勝利は、20歳の新鋭が突然現れたというだけではなく、長い時間をかけて受け継がれてきたものの先にある勝利として見ることもできる。
▪️久しぶりに前田憲作代表がK-1関連大会のセコンドに立った意味
そして何より印象的だったのは、前田代表が久しぶりに
K-1関連大会のリングサイドでセコンドとして選手を支えていたことだ。
長い時間を知るファンにとっては、非常に感慨深い光景だったのではないだろうか。
かつて自らが選手を育て、リングで戦う選手たちを支えてきた指導者が、
時代を経て再びK-1のリングサイドに立つ。
そこには、格闘技が持つ「継承」という魅力が詰まっている。
師から弟子へ。
弟子から、そのまた次の世代へ。
技術だけではなく、リングに向き合う姿勢や、
選手を支える指導者としての精神も受け継がれていく。
前田代表と梶原代表の関係は、まさにそうした格闘技の歴史を感じさせるものでもある。
そして今回、前田代表がセコンドに立つ姿を見せたことで、過去と現在、そして未来が一つのリングサイドでつながった。
それは勝敗とは別の意味で、非常に感動的な場面だった。
▪️猪瀬尚希選手 3戦3KOでさらに大きな舞台へ
一方、リングの上では猪瀬選手が圧倒的なインパクトを残した。
北井選手という豊富なキャリアを持つベテランを相手に、開始直後から主導権を握り、2度のダウンを奪って1R・1分30秒でKO。
プロデビューから3試合。
そのすべてをKOで終えている。
20歳という年齢を考えても、今後の成長が非常に楽しみな選手だ。
しかも、今回の勝利によって、K-1、Krushという舞台でさらに存在感を高めることになった。
試合後、猪瀬選手はマイクを握ると、会場のファンに向けて明るく語った。
「今日はまだKOがないと思うんですが、これで会場が盛り上がったと思うので、
あと4試合盛り上がって、明日からまた頑張ってください」
自分の勝利だけではなく、この日の大会全体を盛り上げようとする姿勢も印象的だった。
▪️ベテランの挑戦と若き才能。そして受け継がれるもの
北井選手にとっては、10年ぶりのKrush。
猪瀬選手にとっては、プロ3戦目にして3度目のKO。
猪瀬選手の躍進も、
格闘技という世界が世代を超えて続いていくからこそ生まれる物語だ。
勝者だけではなく、挑戦するベテランがいる。
その一方で、新たな才能が台頭する。
そして、その両者を見守るように、長い歴史を持つ指導者たちがリングサイドに立つ。
Krush.191は、そんな「格闘技の過去、現在、未来」が交差する一場面となった。
【文:高須基一朗】
▪️その他 試合結果
【プレリミナリーファイト】
Krushフェザー級
3分3R
岩上行統選手 vs 齊藤律選手
判定3-0で岩上行統選手が勝利。
ジャッジは30-27、30-26、30-26。
岩上選手が3者から支持を集め判定勝利。
【第1試合】
Krushスーパー・フェザー級
3分3R・延長1R
伊藤渚選手 vs 安晟太選手
安晟太選手が判定2-0で勝利。
判定は29-29、29-30、29-30。
【第2試合】
Krush女子アトム級
3分3R・延長1R
高梨knuckle美穂選手 vs 大西日和選手
高梨knuckle美穂選手が判定3-0で勝利。
判定は30-28、30-28、30-27。
【第3試合】
Krushフライ級
3分3R・延長1R
大久保世璃選手 vs 金太郎選手
大久保世璃選手が判定3-0で勝利。
判定は30-29、30-29、30-29。
【第4試合】
Krushスーパー・バンタム級
3分3R・延長1R
白幡裕星選手 vs 寛心選手
白幡裕星選手が判定3-0で勝利。
判定は30-29、30-28、30-29。
【第5試合】
-64kg契約
3分3R・延長1R
北井智大選手 vs 猪瀬尚希選手
北井智大選手が1R・1分30秒、KO勝利。
【第6試合】
第10代Krushフェザー級王座決定トーナメント準決勝
3分3R・延長1R
倉田永輝選手 vs 松本海翔選手
松本海翔選手が判定2-0で勝利し、決勝進出。
判定は29-28、28-28、30-28。
【第7試合】
第10代Krushフェザー級王座決定トーナメント準決勝
3分3R・延長1R
橋本雷汰選手 vs 齊藤龍之介選手
橋本雷汰選手が1R・1分13秒、KO勝利。
【セミファイナル・第8試合】
Krushライト級
3分3R・延長1R
古宮晴選手 vs 上野空大選手
古宮晴選手が2R・1分7秒 KO勝利。
【メインイベント・第9試合】
第13代Krushスーパー・フェザー級王座決定戦
3分3R・延長1R
西元也史選手 vs 上野奏貴選手
西元也史選手が1R・53秒 KO勝利。


