身長差20センチの王者が崩された夜―ナビル・アナン陥落、ムエタイの完成度が体格を超えた瞬間

2026.3.21

【©️ONE Championship 】

タイ・バンコクのルンピニースタジアムで行われた『ONE Friday Fights 147』。
バンタム級ムエタイ世界タイトルマッチで、王者のナビル・アナンが挑戦者のランボーレック・チョー・アッジャラブーンに判定0-3で敗れ、王座から陥落した。試合の流れを決定づけたのは、ランボーレックが奪った2度のダウンだった。

この試合は、単なる王座交代劇ではない。ムエタイにおける「体格差」と「技術」の関係を、改めて浮き彫りにした一戦でもあった。


 

▪️195センチの王者が持っていた“規格外の武器”

アナンの最大の武器は、バンタム級とは思えない身長195センチという体格とリーチだった。ジャブ、前蹴り、ヒザ、ヒジ――長い距離から一方的に攻撃を当てることができる、いわば“ムエタイ離れした体格の王者”である。

実際、アナンは一度敗れた後、無敗街道を突き進み王座を獲得。勢いのまま王朝を築くかに見えた。

だが、この日リングに立ったランボーレックは、そのリーチ差を真正面から受け入れた上で、崩す戦略を徹底していた。

 

▪️勝負を分けたタイミングと右ストレート

試合は序盤から、アナンが距離を取り、ランボーレックがガードを固めてローとミドルで削る展開。派手さはないが、明らかに「距離を詰めるための作業」が続いていた。

そして3ラウンド、試合が動く。
前に出たアナンに対し、ランボーレックの右ストレートがカウンターで炸裂。これで最初のダウンを奪う。

さらに4ラウンド。距離を詰めようとするアナンに対し、再び右ストレート。
同じ形で2度目のダウンを奪い、勝負はほぼ決した。

偶然ではない。
距離を潰し、パンチの交換に持ち込み、右を合わせる――ランボーレックのゲームプランが完璧に機能した瞬間だった。

 

▪️体格差を超えた「ムエタイの完成度」

最終5ラウンド、王者アナンは猛攻を仕掛けた。しかし、ダウンを奪い返すまでには至らない。判定は3-0。新王者誕生の瞬間だった。

この試合が象徴的なのは、体格差約20センチという圧倒的なフィジカル差がありながら、技術とタイミングで試合が決まったことだろう。

ムエタイではしばしば言われる。
「体格は武器だが、完成されたムエタイはそれを無効化する」。

まさにその言葉を証明するような試合だった。

アナン時代が続くと思われていたバンタム級ムエタイ戦線は、この一戦で大きく勢力図が変わることになる。