テスラ「サイバートラック」生産縮小へ 米国販売は前年比48%減 当初目標25万台に届かず 2027年半ばからサイバーキャブへ転換
米電気自動車大手テスラが、独創的なデザインで世界的な注目を集めた電動ピックアップトラック「サイバートラック」の生産を、2027年半ばごろから段階的に縮小する方針を明らかにした。
イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は11月6日、SNSのXへの投稿で、米南部テキサス州のギガファクトリーにおけるサイバートラックの生産を縮小し、自動運転タクシー「サイバーキャブ」の生産拡大に向けて設備を振り向ける考えを示した。
2019年の発表時には、従来の自動車の常識を覆す次世代ピックアップとして大きな話題を呼んだサイバートラック。しかし、米国での販売実績は当初の構想を大きく下回っている。今回の決定は、テスラが自動車メーカーとしての事業構造を見直し、自動運転やAIを軸とした新たな成長戦略に重点を移す動きとしても注目される。
▪️米国販売は2025年に前年比48%減 年間25万台の構想との大きな隔たり
サイバートラックは、外装にステンレス鋼を採用した直線的で角張ったデザインが特徴。2019年に発表され、2023年11月に初の納車が行われた。
発表当初、マスク氏は年間25万台規模の販売を視野に入れていた。しかし、実際の販売はその想定に届いていない。
ロイター通信が自動車調査会社ケリー・ブルー・ブック(Kelley Blue Book)の集計として報じた米国販売台数は、2024年が3万8965台、2025年が2万237台。2025年は前年から約48%減少した。
年間25万台という当初の目標と比較すると、2025年の販売実績は約8.1%にとどまる。
革新的なデザインや話題性によって発売当初は強い関心を集めたものの、継続的な販売拡大には結び付かなかったことが、今回の生産方針転換の背景にある。
▪️テスラが選んだ次の主力戦略 サイバーキャブの生産拡大
今回の生産縮小について、マスク氏はサイバーキャブの増産に向けた工場設備の再配置が目的であると説明している。
サイバーキャブは、テスラが開発を進める自動運転タクシー向けの専用車両だ。従来の自動車とは異なり、ハンドルやペダルを備えない設計を採用し、無人運転による移動サービスの実現を目指している。
テスラが2026年第3四半期に公表した公式資料では、テキサス工場におけるサイバーキャブの年間設置生産能力は12万5000台超とされている。
同資料では、サイバートラックについても同じく年間12万5000台超の設置生産能力を公表している。
ただし、これは工場の設備上の生産能力を示す数字であり、実際に年間12万5000台を生産・販売しているという意味ではない。
サイバートラックの販売が当初の想定を下回る一方、テスラは自動運転車両の生産体制を整備している。限られた工場スペースを、今後の成長戦略の中心に位置付けるサイバーキャブへ振り向ける判断とみられる。
▪️品質問題や市場適合性も課題に 発売後11回のリコール
サイバートラックを巡っては、販売面だけでなく、品質や安全性に関する課題も指摘されてきた。
ロイター通信によると、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の記録では、2023年の発売以降、同車種は11回のリコールを実施している。
対象となった問題には、部品の不具合やソフトウエアに関するものが含まれ、物理的な修理を必要とするケースだけでなく、ソフトウエアの更新によって対応したケースもある。
また、ステンレス製の鋭角的な車体デザインは、従来のピックアップトラックとは一線を画す個性である一方、歩行者保護などの安全基準が異なる海外市場への展開にも課題を抱えてきた。
米国市場での販売減少に加え、こうした市場適合性の問題も、世界的な販売拡大を難しくする要因となった。
▪️サイバートラックの技術は次世代車両へ テスラの事業転換が本格化
今回の発表を受け、サイバートラックの開発を担当した技術者ウェス・モリル氏はXで、同車について「素晴らしい技術開発基盤となった」と評価。その成果はサイバーキャブを通じて生き続けるとの趣旨の投稿を行った。
つまり、テスラにとってサイバートラックの開発がすべて無駄になったというわけではない。独自の車体構造や製造技術など、開発過程で得られた知見を次世代車両に生かす考えが示されている。
もっとも、サイバーキャブがサイバートラックの販売不振を補えるだけの事業に成長するかは、まだ未知数だ。
自動運転サービスには技術面だけでなく、各国・地域の規制、安全性の検証、運行体制の整備など、乗り越えるべき課題が残されている。
かつて年間25万台という大きな販売構想を掲げたサイバートラック。
その生産方針の転換は、テスラが従来型の電気自動車販売だけでなく、自動運転やロボティクスを将来の収益の柱に据えようとしていることを象徴する動きと言える。

