ジョコビッチが約8年ぶりトップ10から陥落 29勝0敗の北京へ 直近2年間の戦績から見える変化
男子テニスの元世界ランキング1位だったノバク・ジョコビッチ選手が、
9月30日に開幕するATP500「中国オープン」(中国・北京)にエントリー。
39歳のジョコビッチ選手にとって、北京は特別な舞台だ。
ATP公式によると、同大会での通算成績は29勝0敗。
2009年、2010年、2012年、2013年、2014年、2015年と過去6度出場してすべて優勝しており、今回は2015年以来11年ぶりの北京大会出場となる。
全米オープンでまさかの1回戦敗退を喫したことで、世界ランキングはトップ10圏外へ。長年にわたって男子テニス界の頂点に立ち続けてきたジョコビッチ選手だが、直近2年間を振り返ると、単純な「下降」だけでは説明できない戦績が浮かび上がる。
▪️2024年にはグランドスラム無冠でも五輪で悲願の金メダル
2024年のジョコビッチ選手は、シーズン序盤から従来のように大会を連戦するスタイルではなく、出場大会を絞りながらグランドスラムと重要大会に照準を合わせるシーズンとなった。
その象徴となったのがパリ五輪だ。
ジョコビッチ選手は男子シングルス決勝でカルロス・アルカラス選手を7-6、7-6で破り、悲願だった五輪金メダルを獲得。これにより、四大大会と五輪シングルスをすべて制覇する「キャリア・ゴールデンスラム」を完成させた。
一方、四大大会では全豪オープン準決勝、全仏オープン準々決勝、ウインブルドン決勝、全米オープン3回戦という結果に終わり、2017年以来初めて年間グランドスラム無冠となった。特に全米ではアレクセイ・ポピリン選手に4-6、4-6、6-2、4-6で敗退。ジョコビッチ選手はこの試合で14本のダブルフォルトを記録した。
ただし、年間成績そのものは37勝9敗。パリ五輪金メダルに加え、10月の上海マスターズでは決勝まで進出している。決勝ではヤニック・シナー選手に敗れたものの、ATP1000で準優勝する力は維持していた。
つまり2024年は、「グランドスラムのタイトルを失った年」であると同時に、「五輪という最大級の目標を達成した年」でもあった。
▪️2025年は四大大会すべてベスト4
2025年に入ると、ジョコビッチ選手の戦い方にはさらに特徴が表れる。
全豪オープンは準決勝でアレクサンダー・ズベレフ選手との対戦途中に棄権。全仏オープンでは準決勝まで勝ち上がったものの、シナー選手に敗れた。
ウインブルドンでも準決勝でシナー選手に敗退。さらに全米オープンも準決勝まで進み、アルカラス選手に敗れた。
つまり2025年のジョコビッチ選手は、四大大会すべてでベスト4以上に進出している。優勝こそなかったものの、年間を通じて最も大きな舞台で最後まで残り続けたことは、戦績を見るうえで外せないポイントだ。
そして2025年には、もう一つ大きな記録を打ち立てている。
5月のジュネーブ・オープンでフベルト・フルカチュ選手を破り、ツアー通算100個目のタイトルを獲得。男子オープン化以降ではジミー・コナーズ氏、ロジャー・フェデラー氏に続く3人目の100タイトル到達となり、さらに20シーズンでタイトルを獲得した男子選手として史上初の記録も達成した。
その半年後にはアテネでロレンツォ・ムゼッティ選手を破り、通算101個目のタイトルも獲得。ハードコートでのツアー優勝数は72となり、フェデラー氏の71を上回った。
2025年は「グランドスラム無冠」という結果だけを見ると厳しい印象になるが、年間2タイトルを獲得し、四大大会では4大会すべてで準決勝まで進んだシーズンだった。
▪️2026年は全豪決勝 ウインブルドン4強
そして2026年。
年初の全豪オープンでは決勝へ進出した。準決勝ではシナー選手を破ったものの、決勝ではアルカラス選手に敗れ、準優勝となった。ジョコビッチ選手が39歳を迎えるシーズンでも、グランドスラム決勝の舞台まで到達している。
一方、春以降は大会によって結果にばらつきが出た。
インディアンウェルズではベスト16でジャック・ドレイパー選手に敗退。全仏オープンでは3回戦でジョアン・フォンセカ選手に敗れた。
しかし、芝のウインブルドンでは再び存在感を示した。
準々決勝ではフェリックス・オジェ・アリアシム選手との5時間5分に及ぶ激戦を制して準決勝進出。ウインブルドン通算15度目となる準決勝だった。
準決勝ではシナー選手に6-4、6-4、6-4で敗れたものの、39歳で世界最高峰の芝の大会のベスト4まで進出している。
この結果からも、ジョコビッチ選手がグランドスラムの長丁場で勝ち上がる能力を失ったと見るのは早い。むしろ大会を選択し、コンディションを整えながら重要な大会で結果を出す戦略が色濃くなっている。
▪️全米は・・1回戦敗退で約8年ぶりトップ10陥落
ただ、2026年全米オープンでは大きな変化が起きた。
ジョコビッチ選手は1回戦でマリアノ・ナボーネ選手と対戦。第1セットをタイブレークで落とした後、第2、第3セットを連取したものの、その後ナボーネ選手に巻き返され、最終的に7-6、5-7、4-6、6-2、6-1で敗れた。
グランドスラムでの1回戦敗退は、2006年の全豪オープン以来。実に20年ぶりとなる出来事だった。
さらに、この結果によって世界ランキングでもトップ10から外れることになった。
長くランキング上位を維持してきたジョコビッチ選手にとって、大きな節目となるランキング変動だ。
ただし、ここで見落とせないのが「トップ10から落ちた=グランドスラムで戦えなくなった」という単純な構図ではないことだ。
2026年の四大大会だけを見ても、全豪オープン準優勝、全仏オープン3回戦、ウインブルドン準決勝、全米オープン1回戦という結果。大会ごとの振れ幅は大きくなっているものの、シーズン前半には依然としてメジャーの決勝・準決勝へ到達している。
▪️シナーやアルカラスら若手世代との競争
直近2年間を語るうえで欠かせないのが、シナー選手とアルカラス選手の存在だ。
2025年の四大大会では、ジョコビッチ選手は全仏オープンとウインブルドンでシナー選手に敗れ、全米オープンではアルカラス選手に敗れた。
2026年も全豪オープン準決勝ではシナー選手を破ったものの、決勝でアルカラス選手に敗退。ウインブルドンでは再びシナー選手に準決勝で敗れている。
この構図は、現在の男子テニスを理解するうえで重要だ。
ジョコビッチ選手は依然として、サーブを起点にした展開力、リターン、バックハンドの安定性、守備から攻撃へ切り替える能力、そして重要ポイントでの判断力という武器を持つ。
一方で、シナー選手やアルカラス選手は高い打球速度とコート後方からの攻撃力を持ち、ラリーのテンポを上げながらジョコビッチ選手にプレッシャーをかける。
そのため、現在のジョコビッチ選手を評価する際には、単純なランキングだけではなく、グランドスラムの後半でどの選手と対戦し、どこまで勝ち上がったのかを見る必要がある。
▪️「29勝0敗」の北京は特別なデータ
そこで注目されるのが中国オープンだ。
ATP公式によれば、ジョコビッチ選手の北京での成績は29勝0敗。6度の優勝はいずれも決勝でセットを落としていない。2015年大会では決勝でラファエル・ナダル氏を6-2、6-2で破り、29連勝を完成させた。
今回は2015年以来11年ぶりの北京となる。
北京の大会会場であるナショナル・テニス・センターは、ジョコビッチ選手にとって単なる一大会の会場ではない。本人も大会側が公開したメッセージ動画で、同地を自身のキャリアにおける「素晴らしい思い出と大きな成功」を得た舞台として語っている。
2026年の中国オープンは9月30日から10月6日まで開催予定。ATP公式のエントリーリストには、ジョコビッチ選手のほか、シナー選手、ズベレフ選手、フェリックス・オジェ・アリアシム選手らも名を連ねている。
さらに、翌週には上海マスターズも控える。
北京で11年ぶりに公式戦へ戻り、そのまま上海へ向かうアジアシーズンは、今後のジョコビッチ選手を占ううえで重要な期間となりそうだ。
▪️「トップ10陥落」だけでは見えないジョコビッチの強さ
直近約2年間を数字で振り返ると、2024年は37勝9敗、2025年は年間2タイトルを獲得し、年末ランキング4位。2025年には通算100タイトル、101タイトルという節目にも到達した。
2026年は全豪オープン決勝、ウインブルドン準決勝まで進んだ一方、全仏3回戦、全米1回戦と早期敗退も経験した。
この数字が示しているのは、かつてのように年間を通じてツアーを支配するジョコビッチ選手から、出場大会を選び、グランドスラムなど重要な舞台にピークを合わせるスタイルへの変化だ。
そして今、そのジョコビッチ選手が向かうのが、29勝0敗という異例の戦績を残す北京である。
11年ぶりの中国オープン。
トップ10から外れた元世界1位が、最も得意とする舞台の一つで再びラケットを握る。

