GOAT 第4試合 白鳥大珠選手が激闘制してISKA世界王座獲得 カリスマ武尊が引退後のキック界を見据えた覚悟と直向きな気持ち

2026.5.28

【©️GOAT】

キックボクシング界が大きな転換期を迎えているのは周知の事実。

那須川天心選手がボクシングへ転向し、一時代を築いた武尊氏も現役を退いた現在、

次の時代を模索する局面に入った。

スター選手の存在に支えられてきた国内キック界にとって、

その空白を誰が埋めていくのかは大きなテーマとなっている。

そんな中、5月28日に東京・後楽園ホールで開催された「キックボクシングフェス.2 GOAT」で、白鳥大珠選手(TEAM TEPPEN)が

ISKAユニファイドルール世界ライトウェルター級王座を獲得した。


 

対戦相手は、ISKA欧州ウェルター級王者のアンソニー・ヴェレイ選手(フランス)。

183センチの長身を活かした蹴り主体のスタイルと、

巧みな距離感を武器に、序盤から白鳥選手を苦しめた。

 

ヴェレイ選手は左右に構えをスイッチしながら、左ミドルや前蹴り、テンカオを織り交ぜて主導権を握ろうとする。一方の白鳥選手は、左三日月蹴りや右フックを軸に応戦。1ラウンドにはローブローによる中断もあり、流れが切れる場面も見られた。

2ラウンド以降も、ヴェレイ選手の多彩な蹴りとヒザ蹴りが白鳥選手を襲う。白鳥選手はなかなか得意の連打をまとめ切れず、苦しい展開を強いられたが、それでも前進を止めなかった。

3ラウンドには左三日月蹴りを執拗にボディへ打ち込み、右ショートや左ボディで反撃。消耗の見えたヴェレイ選手に対し、最後までプレッシャーを掛け続けた。

判定は3-0。

ジャッジ3者とも29-28で白鳥選手を支持し、

接戦を制した白鳥選手がISKA世界王座を手にした。

 

試合後、白鳥選手がリング上で口にした言葉は、現在のキックボクシング界の空気を象徴するものでもあった。

「武尊さんが去って、キックボクシングが盛り下がるのは嫌なので」

「武尊さんにアマチュアで負けて、そのまま武尊さんはプロになって。ずっと背中を追いかけていました」

派手な“世代交代宣言”ではない。しかし、その言葉には競技人気への危機感と、自身がその盛り上がりを支えていきたいという覚悟がにじんでいた。

さらに白鳥選手は、「僕はカリスマにはなれないですが、僕は僕の色で示していきたい」とも語った。

魔裟斗氏、武尊氏、那須川天心選手ら、これまでの格闘技界は強烈な個性を持つスター選手が時代を牽引してきた。一方で現在は、SNSや配信メディアの普及によって、

競技の支え方そのものも変化しつつある。

絶対的スタが市場を引っ張る時代から、多様な個性を持つ選手たちが競技を支える時代へ。

白鳥選手の発言からは、そうした現在のキック界の構造変化も垣間見えた。

白鳥選手はボクシング転向や敗戦も経験しながら、

再びキックボクシングへ戻り、RISE王座獲得や世界戦線での戦いを続けてきた。

順風満帆だけではないキャリアを積み重ねてきたからこそ、

その言葉には現実味がある。

「格闘技生活終盤に入りましたが、まだまだ夢を見せていきたいし、夢を見ていきたい」とも語った。

キャリア終盤を自覚しながらも、なお世界の舞台へ挑み続ける。その姿勢は、今回の世界王座獲得によってさらに存在感を強めたと言えるだろう。

武尊氏ので引退試合が終わり約1ヶ月が経過し・・・

キックボクシング界は、いま新たな時代の入口に立っている。

白鳥大珠選手が掲げた“自分の色”が、

その時代にどのような足跡を残していくのか期待したい。


【文:高須基一朗】