諸橋愛選手が49歳で死去 奈良競輪場で落車 競輪の死亡事故と補償・法的責任

2026.9.22

 

競輪S級1班の諸橋愛選手が9月21日、49歳で亡くなった。

競輪を統括するJKAが22日に公表した。

死因は頚髄損傷による多臓器不全だった。

諸橋選手は9月12日、奈良競輪場で行われた11R「S級準決勝」に出走。

レース終盤に落車して病院へ搬送され、治療を受けていたが、

21日午前2時14分に死亡が確認された。


 

▪️最終2センターで落車で顔面から強打 病院へ救急搬送

事故が起きたのはレース終盤の最終2センター付近。

諸橋選手が内側へ進路を取った際、ほかの選手と絡んで落車し、顔面からバンクに叩きつけられるように転倒した。

走路補助員が現場に向かって応急処置を行った後、諸橋選手は奈良市内の病院へ救急搬送された。

その後、治療が続けられていたが、事故から9日後の21日午前2時14分、死亡が確認された。

JKAが公表した死因は、頚髄損傷による多臓器不全だった。

 

▪️レース中の死亡事故は過去にも

競輪では過去にレース中の事故による死亡が51件発生している。

近年20年間では、2008年9月の一宮競輪場で内田慶選手(27歳)、2012年7月の小田原競輪場で坂本照雄選手(40歳)、2026年7月の松阪競輪場で伏見俊昭選手(50歳)がレース中の事故で亡くなっており、諸橋選手は4件目となる。

JKAも過去の競輪における落車死亡事故について公表しており、競輪では事故防止と安全確保が継続的な課題となっている。

 

▪️レース中の死亡で刑事責任はどうなるのか

競輪のレース中に選手が死亡したからといって、事故に関係した別の選手や関係者に直ちに刑事責任が生じるわけではない。

刑事責任が問題になるかどうかは、事故の具体的な状況や競走上の行為、ルール違反の有無、必要な注意義務を怠ったかどうかなどを踏まえて個別に判断される。

一般論として、他人の死亡について必要な注意を怠ったこととの因果関係などが認められれば、刑法上の過失による犯罪が問題となる可能性がある。

ただし、通常の競技行為に伴って発生した事故について、死亡という結果だけをもって刑事責任が成立するものではない。

したがって、今回の諸橋選手の事故についても、現時点で公表されている情報だけから、特定の選手や競輪関係者に刑事責任があると断定することはできない。

それでもこの競技で一緒に滑走した選手たちの過失責任の音大とは別に、共に競技を戦ってきた戦友という立場の競技者たちには心のケアもとても大切なことだろう。

 

▪️「競技中だから責任はない」とも限らない

一方で、スポーツ競技中の事故だから法律上の責任がすべてなくなるというわけでもない。

裁判例では、競技中の事故について、競技者が一定の危険を認識して参加していた事情を考慮しながらも、競技中であることだけを理由として、過失による損害賠償責任が当然に否定されるわけではないと判断されたケースがある。

そのため、競輪においても、実際の事故について法的責任が問題となる場合には、競走中の具体的な行為、競走ルール、事故に至った経緯などを総合的に確認する必要がある。

 

▪️残された遺族への補償はどうなるのか

競輪選手については、一般の会社員などとは異なる競輪選手の制度が設けられている。

JKAは、全国競輪選手共済会について、選手の福祉や社会保障・共済制度の調査研究に加え、競輪参加中に発生した事故による選手の災害補償などを行っていると説明している。

また、JKAの競技実施業務規程でも、全国競輪選手共済会から委託を受け、選手の災害補償に関する事務を行うことができると定められている。

そのため、競輪参加中の事故によって選手が死亡した場合、一定の制度に基づく補償の対象となる可能性がある。

ただし、補償の具体的な金額や支給対象、遺族への給付内容については、選手の加入制度や事故の状況、当時の規定などによって異なるため、「死亡すれば遺族に必ず○万円が支払われる」といった一律の表現は避ける必要がある。

 

▪️民事上の損害賠償が問題になるケースも

事故の原因となった行為に法的な過失が認められる場合には、刑事責任とは別に、民事上の損害賠償責任が問題となる可能性もある。

死亡事故の場合、一般的には遺族が損害賠償を請求する場面が考えられ、具体的な損害としては、死亡に伴う慰謝料や逸失利益、葬儀関係費用などが問題となり得る。

もっとも、競技中の事故では、通常の交通事故などとは異なり、競技そのものに伴う危険性を選手がどの程度認識していたか、競技規則がどのように定められているか、事故を起こした直結の原因に具体的な注意義務違反があったかなど、さまざまな事情が考慮される。

スポーツ事故に関する過失判断でも、競技者が競技に伴う一定の危険を引き受けていた事情を考慮した事例がある一方、具体的な過失が認められれば損害賠償責任が問題となることが示されている。

したがって、競輪の死亡事故についても、「競技中の事故だから賠償請求できない」と一律に決めつけることはできない。

 

▪️諸橋愛選手 49歳で競技人生に幕

諸橋選手は新潟県出身で、S級1班として長年にわたり競輪界の第一線で走り続けてきた。

今回の事故では、9月12日の落車から治療が続けられていたものの、9日後に帰らぬ人となった。

7月には伏見俊昭選手もレース中の事故で亡くなったばかりで、競輪界にとって2026年は相次いで重大事故が起きた年となったことは、再発防止に向けて重く受け止めるべきことなんだ。