秋田豊監督が休養 J3高知に広がる波紋―問われる「昭和の指導法」
【監督就任時2024年12月の『X』画像より】
J3・高知ユナイテッドSCは6月29日、今季からチームを率いていた秋田豊監督(元日本代表DF)が同日付で休養に入ったことを発表した。背景には、選手やスタッフから「パワーハラスメント」に関する申し立てがあったことがある。クラブはヒアリングを実施した上で、事実関係を明らかにするため第三者による特別調査委員会を設置したという。
クラブ側は「両者の主張に相違点がある」とし、調査が終了するまでは秋田氏を試合や練習に関わらせない方針を明言。代行として神野卓哉ヘッドコーチがチームを指揮する。
秋田監督はクラブを通じてコメントを発表し、「私の指導で精神的に傷ついた方がいることを申し訳なく思い、深くお詫び申し上げます」と謝罪。一方で、「申し立ての中には事実と異なると感じる点もある」とも述べ、今後の調査にて自らの見解を述べる意向を示した。
▪️問われる「時代錯誤」の指導スタイル
近年、スポーツ界では「昭和型」の指導法に対する見直しが加速している。「叱って伸ばす」「鍛えて一人前」といった指導理念は、時代の変化とともに限界を迎えている。
特に、精神論や威圧的な言動による「統率」は、現代の選手たちとの間に深刻な価値観の乖離を生む可能性がある。背景には、指導対象の多様化、そして個の尊重という社会全体の変化がある。求められるのは、感情ではなく論理に基づいた指導、上からの命令ではなく、対話を通じた信頼関係の構築だ。
秋田氏は現役引退後、京都、町田、盛岡などで指導者として実績を積み、今季から高知の指揮官に就任。J3第17節終了時点でチームは20クラブ中13位につけていた。チームの成績向上が見られ始めた中での今回の事態は、クラブ内外に大きな波紋を広げている。
▪️「意図していない」は通用しない時代に
秋田氏は「ハラスメントを意図して行ったことはない」と強調しているが、現代の社会においては「意図の有無」ではなく、「受け手がどう感じたか」が重視される時代である。とりわけ教育・指導の場においては、指導者側の「常識」や「経験論」が、時として相手にとっての「加害」になり得ることを自覚する必要がある。
今後、調査委員会の結論によって詳細が明らかになるが、今回のケースは単なる一監督の問題にとどまらない。スポーツ界全体が、旧来の価値観から脱却し、現代にふさわしい「指導とは何か」を問い直すべき時に来ているのではないか。