ブラッド・ピット“映画以上にF1漬け”の役作りで来日 トム・クルーズとの絆、そして叶わなかった鈴鹿走行
【©Warner Bros. Ent.】
ハリウッドスター、ブラッド・ピットが6月25日、主演映画『F1(R)/エフワン』(6月27日公開)のプロモーションのため東京・丸の内ピカデリーで舞台あいさつを行った。2022年『ブレット・トレイン』以来3年ぶりとなる来日は、前日発表という異例の“電撃来日”で、制作陣の本作にかける意気込みを象徴するかのようだった。
ピットは壇上で「東京だったらいつでも来ます!」と述べ、満場の観客に笑顔を見せたが、その裏にはハリウッドが抱えるプロモーション戦略の変化が透ける。ストライキ以降、スター俳優の現地露出が激減する中での今回の来日は、単なる“ファンサービス”に留まらず、映画業界の巻き返しを示す試金石とも言えるだろう。
▪️“俳優がF1マシンを操る”という異例の挑戦
本作は『トップガン マーヴェリック』のジョセフ・コシンスキー監督とジェリー・ブラッカイマーが再集結し、F1界からの全面協力を得て制作された。ピットが演じるのは、引退した伝説のF1レーサーが弱小チームを率いて再起に挑むというストーリーだが、何より注目されるのは、ピット本人がF1マシンを実際に操縦し撮影に臨んだという点にある。
「2年かけて6,000マイルを走り込んだ」「実際のF1サーキットで撮影した」という発言には、もはや“演技”の域を超えた役作りへの執念がにじむ。ピットは「これまで俳優がF1マシンを走らせた前例はない」と語り、制作陣がリアリティを最優先した姿勢を強調した。
▪️トム・クルーズとの旧交、そして“陸派”の宣言
ヨーロッパでのプレミアでは、かつて共演歴もあるトム・クルーズとの再会が話題に。舞台上でもピットは「90年代に一緒にレースをしたことがある」と明かし、「彼は空と海、僕は陸」と役割分担のようなコメントで会場を笑わせた。
だが、このやりとりは単なるジョークにとどまらない。『トップガン』以降、アクション俳優としての存在感をさらに強めたクルーズと、いわば“同じフィールド”での競演・競争を意識した戦略的発言にも聞こえる。俳優である以上、選ぶ題材やジャンルはセルフブランディングの一環だ。
▪️鈴鹿を走れなかった悔しさ
最後にピットは「唯一の心残り」として鈴鹿サーキットでの撮影が叶わなかったことに言及。「いつかは走ってみたい」と願望を口にした。F1ファンにとって聖地とも言える鈴鹿を走ることができなかったのは、本人にとっても不完全燃焼だったに違いない。
▪️映画というより“スピードという体験”
映画『F1(R)/エフワン』は、単なるスポーツ映画の枠にとどまらない。主演俳優が極限の訓練を経てF1ドライバーに“変身”することで、映画そのものがドキュメントのような性質を帯びている。
ハリウッドにおける「リアリティ信仰」の新たな到達点を象徴する作品として、興行成績だけでなく、今後の映画制作の在り方にも一石を投じることになりそうだ。