モナコの歴史あるレースFIA F3 山越陽悠選手が歓喜から一転の失格劇 “左右逆装着”という異例ミスでモナコ初優勝が幻に
【©️Formula 3】
FIA F3モナコ大会で歴史的快挙を成し遂げたはずだった。
だが、その歓喜はレース後、まさかの形で打ち砕かれることになった。
モナコ・モンテカルロ市街地コースで行われたFIA F3 第2戦スプリントレースで、トップチェッカーを受けた山越陽悠選手(VAR)が、レース後の車両検査で技術規則違反を指摘され、失格処分を受けた。原因は、フロントサスペンションを構成するプッシュロッドが左右逆に装着されていたという、極めて異例のメカニックミスだった。
今季からFIA F3に参戦する山越選手は 予選12番手を獲得。
上位12台リバースグリッド制が採用されるスプリントレースでポールポジションからスタートすると、“抜けないサーキット”として知られるモナコで完璧なレース運びを披露した。
スタート直後から首位を守り抜き、18周を走破してトップチェッカー。
無線では、1992年F1モナコGPの名実況として知られる「ここはモナコ・モンテカルロ、絶対に抜けない」というフレーズを日本語で叫び、ファンを沸かせた。
暫定表彰式にも登壇し、F3初優勝の喜びに浸っていた。
しかし、その数時間後に事態は急変する。
FIAによるレース後の車検で、14号車に装着されていた左右のフロント・プッシュロッドが、本来とは逆側に取り付けられていたことが発覚。左用パーツが右側へ、右用パーツが左側へ装着されていた。
問題となったのは、部品そのものの改造ではない。
スチュワードの裁定文でも「パーツに改造は施されていない」と認定されている。
だがFIAは、“設計された本来の位置に装着されていなかった”こと自体が、
技術規則違反に当たると判断した。
F3技術規則第1.5.3条には、「車両の本来の設計および構造は常に維持されなければならない」と明記されている。さらに第17.1条では、各部品がスペアパーツカタログによって厳密に分類されていることが定められており、左右指定部品を逆側へ装着する行為は、“本来の構造”を逸脱しているとの結論に至った。
チーム側は聴取の場で、左右逆装着の事実自体は認めた一方、
「技術規則違反には該当しない」と主張。
しかしスチュワードはこれを退け、山越選手の失格を正式決定した。
モータースポーツ界では、重量超過や車高違反、空力パーツの規定逸脱などによる失格は珍しくない。しかし今回のように、“左右逆装着”というメカニックの単純ミスが勝利剥奪へ直結するケースは極めて稀。しかも、モナコという世界屈指の大舞台で起きたことで、関係者にも大きな衝撃が広がった。
特にF3やF2、F1といったトップフォーミュラカテゴリーでは、車両管理は何重ものチェック体制で運用される。プッシュロッドのような重要部品は走行性能や車高、ステアリング特性にも影響するため、本来なら装着段階で即座に発見されるレベルのミスとも言われる。
それだけに、現場では「なぜ誰も気づかなかったのか」という声も少なくない。
結果として、優勝はDAMSのジェラード・シエ選手へ繰り上がり。日本勢では中村仁選手(ハイテック)が7位、リー海夏澄選手(ARTグランプリ)が9位へ繰り上がった。
山越選手にとっては、F3初優勝が目前で消えた悔しすぎる結末となった。
しかし同時に今回の一件は、モータースポーツが“ドライバーひとりの戦いではない”ことを改めて浮き彫りにした。
わずかな整備ミス、数ミリの違い、パーツ1点の装着位置―その全てが厳格に管理される世界。トップカテゴリーとは、速さだけでなく、完璧なオペレーション能力まで求められる




