UFC平良達郎選手 “世界最高峰”の残酷な現実 日本人初戴冠の夢届かず…ヴァン選手の打撃革命に沈んだ5R TKO負け

2026.5.10

日本格闘技界が長年追い続けてきた「UFC王座」という悲願。その頂は、今回もなお遠かった。

米ニュージャージー州のプルデンシャル・センターで開催された「UFC 328: Chimaev vs. Strickland」で、フライ級3位の平良達郎選手が、王者ジョシュア・ヴァン選手に5R TKO負け。日本人史上初となるUFC王座戴冠は、またしても実現しなかった。

だが、この敗戦は単なる「一敗」では片付けられない。そこには、近年のMMAが急速に変貌している現実―そして、“世界最高峰”UFCの戦術進化が凝縮されていた。


 

平良選手は1Rから明確なゲームプランを打ち出した。

打撃戦を避け、徹底して組みに行く。

タックルの速度、バック奪取までの流れ、トップキープ能力はいずれも世界トップレベル。序盤は確かに試合を支配していた。観客からブーイングが飛んだこと自体、

平良選手のグラップリングが機能していた証明でもある。

しかしながら現代UFCのフライ級戦線は、

もはや“組み技だけ”で制圧できる時代ではない。

ヴァン選手が見せたのは、近年のMMAで急速に主流化している「対レスラー型ストライキング」の構図だった。相手のタックル動作に合わせて打撃を差し込む。

膝、アッパー、ショートの右ストレートを連動させ、レスリングそのものをリスクへ変えていく。これはかつての“打撃VS寝技”という単純な構図ではなく、「組みを読んだ上で打ち抜く」 蓄積型の打撃をMMAで示す象徴でもあった。

実際、2R終盤のダウンシーンは衝撃的だった。

平良選手が膝を狙った瞬間、ヴァン選手の右カウンターが正確に交錯。

わずかな重心移動、コンマ数秒の反応速度が勝敗を分けた。

3R以降も平良選手は顔面を腫らしながら前進したが、タックルの入り際に膝を合わされ、ジャブを浴び、流血。

かつて日本勢が世界で武器にしてきた“組みの強さ”が、逆に狙われる構図となっていた。

それでも平良選手は4R、一度は意地を見せた。

疲労が蓄積する中でも再び組み付き、テイクダウンを成功。

会場の空気を変えかけた。しかし5R、ヴァン選手のボディーフックから顔面への連打を浴びて膝をつく。レフェリーが割って入り、試合は終わった。

流血しながらも前へ出続けた平良選手の姿は、間違いなく“挑戦者”そのものだった。だが同時に、この試合は日本格闘技界に残酷な現実も突きつけた。

現在のUFCでは、「打撃ができる」だけでは足りない。

「組める」だけでも勝てない。

打撃、レスリング、フィジカル、ディフェンス、距離管理

すべてを高水準で融合した“総合格闘技2.0”とも言うべき時代へ突入している。

敗れはしたが、日本人ファイターがUFC王座へ現実的な距離まで迫っていることも証明したと言えるが、この敗戦は大きな黒星であったことは紛れもなき事実だ。