試合直前に暗転―寺地拳四朗選手の歴史的挑戦、思わぬ事態で白紙に 王者ガルシアが前日計量後に入院 サウジ世界戦は開催不透明

2025.12.27

大一番を目前に控え、リングは突然沈黙した。

27日にサウジアラビアで行われる予定だったボクシングの

IBF世界スーパーフライ級タイトルマッチで、

挑戦者・寺地拳四朗選手(33=BMB)と対戦予定だった

王者ウィリバルド・ガルシア(36=メキシコ)が、

前日計量後に体調不良を訴え入院したことが判明。

試合は事実上の中止となる可能性が高まっている。


 

この情報は、米老舗ボクシング専門誌「リング」が報じたもの。

同誌によると、主催するサウジアラビア総合娯楽庁の

トゥルキ・アラルシク長官は、

代替カード実現の可能性を探るため、

複数の対戦候補をリストアップしているという。

しかし、世界戦という性質上、短時間での調整は困難とみられ、

開催の行方は極めて不透明だ。

寺地選手にとって、この一戦は単なる王座挑戦ではなかった。

ライトフライ級、フライ級に続く階級転向初戦での世界挑戦は、

日本人史上8人目となる3階級制覇が懸かる節目の舞台。

さらに勝利すれば、WBC・WBO王者の

“バム”ことジェシー・ロドリゲスとの4団体統一戦へと

道が開ける可能性もあり、ボクシングキャリアの行方を左右する重要な局面だった。

試合前、寺地選手は「ここで絶対に勝ってチャンスをつかみたい。

危機感もあるが、その分ワクワクしている」と語り、

並々ならぬ覚悟を口にしていた。

それだけに、相手側の事情とはいえ、

試合そのものが消滅しかねない現状は、やりきれない現実と言える。


 

前日26日の計量では、寺地選手が51・9キロ、

ガルシアが51・6キロで規定体重をクリア。

公開計量ではフェースオフで互いに視線を交わし最後は握手を交わすなど、

決戦への準備は整っているように見えた。

その直後に起きた体調の急変は、

関係者のみならずファンにも大きな衝撃を与えている。

世界戦という非情な舞台では、勝敗だけでなく

「試合が成立するかどうか」すら、最後まで保証されない。