TOHOシネマズ「ベイビークラブシアター」がグッドデザイン賞受賞 赤ちゃん連れでも映画を楽しめる上映サービス、20年以上の取り組みが評価
TOHOシネマズが展開する、赤ちゃん連れの保護者を対象とした上映サービス「ベイビークラブシアター」が、2026年度グッドデザイン賞を受賞した。通常より明るい照明や音量を抑えた上映など、赤ちゃんと一緒でも映画館で過ごしやすい環境を整え、育児中の人が映画を楽しむ機会を支えてきた取り組みが評価された。
2003年に前身の「ママズ クラブ シアター」として始まった同サービスは、新型コロナウイルス感染症の影響による休止を経て、2022年11月に再開。現在は全国61劇場に広がり、子育てとエンターテインメントを両立させる取り組みとして継続している。
▪️「赤ちゃんがいるから映画館に行けない」という悩みに対応
TOHOシネマズが「ベイビークラブシアター」を始めた背景には、出産や育児によって映画館へ足を運ぶ機会が減ってしまう保護者の声があった。
通常の上映では、赤ちゃんが泣いたり、保護者が席を立ってあやしたりすることに、周囲への気兼ねを感じる場合もある。同サービスは、赤ちゃん連れの観客を対象にすることで、そうした心理的な負担を和らげ、映画館での時間を楽しめる環境づくりを目指している。
鑑賞環境にも工夫を凝らしている。場内の照明を通常より明るくし、映画の音量を抑えるほか、赤ちゃんに配慮した空調設定を採用。ベビーカー置き場も設け、上映中に保護者が赤ちゃんをあやしたり、必要に応じて立ち歩いたりできる雰囲気を整えている。
赤ちゃん向けの作品だけに限定せず、保護者自身が楽しめる一般作品を中心に上映している点も特徴だ。
▪️利用者数は2022年の279人から2025年には4万4435人に
前身の「ママズ クラブ シアター」は2003年にスタートしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、2020年4月から実施を休止した。
その後、サービスの再開を望む利用者の声や当時の感染状況、同社のSDGsへの取り組みなどを踏まえ、2022年11月24日に「ベイビークラブシアター」として再始動した。
発表資料によると、再開した2022年の利用者数は279人だったが、
2025年には4万4435人に増加。
育児中の保護者が映画館で過ごす時間へのニーズが広がっていることを示す数字となった。
現在は全国61劇場で実施しており、木曜日を中心に開催。
ただし、上映日や実施頻度は劇場によって異なる。
▪️グッドデザイン賞の審査では「コミュニティーの場」という側面も評価
2026年度グッドデザイン賞の審査では、赤ちゃん連れの人を対象にすることで、映画を鑑賞するだけでなく、同じような状況にある人たちが時間を共有できる場を生み出している点にも注目が集まった。
審査委員は、音量や照明への配慮など、映画館で安心して過ごすための工夫を評価。23年間にわたって取り組みが続いてきたことにも触れ、サービスの普及という観点からも意義があると判断した。
映画館の設備を工夫するだけでなく、上映作品や開催時間、実施方法を含めて、育児中の人が足を運びやすい仕組みを整えてきたことが、今回の受賞につながったといえる。
▪️10月後半も話題作を上映予定
「ベイビークラブシアター」では、保護者が映画を楽しめるよう、幅広い作品を上映している。
発表資料に掲載された2026年10月後半の上映予定は、次の通り。
- 10月18日(日)『時給三〇〇円の死神』
- 10月22日(木)『汝、星のごとく』
- 10月24日(土)『汝、星のごとく』
- 10月29日(木)『うるわしの宵の月』
実施劇場や上映時間などは作品・劇場ごとに異なるため、利用を希望する場合は、TOHOシネマズの公式サイトで最新情報を確認したい。
▪️TOHOシネマズが考える映画館の役割
TOHOシネマズは、映画館を単に作品を鑑賞する場所としてではなく、作品との出会いや感動を分かち合い、人々の人生を豊かにする文化体験の場と位置づけている。
同社の代表取締役社長は今回の受賞にあたり、出産や育児を経ても映画館ならではの体験を楽しんでほしいという思いからサービスを続けてきたと説明。赤ちゃんと一緒でも周囲に気兼ねなく過ごせる環境づくりが評価されたことへの喜びを示し、今後も育児中の人が映画をあきらめずに済む上映サービスを大切にしていく考えを明らかにした。
【文:高須基一朗】

