『IT/イット』ペニーワイズ役ティム・カリーさん 死因が判明 冠動脈疾患だった 80歳で死去 脳卒中と腎臓がんの既往歴も
1990年のホーラー映画『IT/イット』で、恐怖の殺人ピエロ「ペニーワイズ」を演じ、世界中のファンに強烈な印象を残した英国出身の俳優ティム・カリーさんが8月25日、80歳で亡くなった。
死去から約1週間が経過したなか、海外メディアがロサンゼルス郡公衆衛生局の記録を確認し、死因が明らかになった。
カリーさんの死因は冠動脈疾患(coronary artery disease)。
米Peopleが入手した公的記録によると、死に影響した重要な病状として、過去の脳卒中と腎臓がんも記載されていたという。記録では、冠動脈疾患、腎臓がん、脳卒中について手術は行われていなかったとされている。
▪️ロサンゼルスの自宅で死去
カリーさんは先月8月25日に米ロサンゼルスのトルーカレイクにある自宅で亡くなった。
80歳だった。
死去当時、死因は明らかにされていなかったが、その後、ロサンゼルス郡公衆衛生局の記録をもとに米国の主要メディアが一斉に報道。
『ワシントン・ポスト』も9月3日にカリーさんの死因が冠動脈疾患だったと報じ、脳卒中と腎臓がんの既往歴についても伝えている。
『ロサンゼルス・タイムズ』や『バラエティ』など、ハリウッドを代表するメディアも相次いで死因を報道。英国の『インディペンデント』など海外メディアにもニュースが広がった。
▪️2012年の脳卒中、その後も声の仕事を継続
カリーさんの晩年を語るうえで大きな転機となったのが、2012年に経験した重度の脳卒中だった。
この脳卒中によって歩行が困難となり、その後は車いすで生活。映画や舞台などへの出演を大幅に減らす一方、声優やナレーションなど、身体的な負担が比較的小さい仕事を中心に活動を続けていた。
Peopleによると、2025年には『ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー』50周年を記念した上映イベントにも関わっており、身体的な制約を抱えながらも、作品やファンとのつながりを大切にしていた。
死去後、共演者や映画関係者からは、その才能と人柄を惜しむ声が相次いでいる。
▪️世界を驚かせた「フランクン・フルター博士」
ティム・カリーさんのキャリアを振り返ると、まず名前が挙がるのが1975年の映画『ロッキー・ホラー・ショー』だ。
カリーさんが演じたフランクン・フルター博士は、作品そのものを象徴する存在となった。
舞台版『The Rocky Horror Show』から同役を演じ、映画版でも圧倒的な存在感を披露。
作品は公開当初から独特の魅力を放っていたが、年月を重ねるにつれて熱狂的なファンを獲得。現在では映画史に残るカルト作品として知られている。
米『History』も、カリーさんが舞台、映画、テレビ、声優など多方面で活動した約6年のキャリアを振り返り、『ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー』をポップカルチャー史に残る作品へと導いた存在として紹介している。
▪️そして彼の伝説となる「ペニーワイズ」へ
世界的な知名度をさらに押し上げた作品が、スティーヴン・キング原作の『IT/イット』だった。
1990年にテレビミニシリーズとして映像化された『IT/イット』で、カリーさんはペニーワイズを演じた。
白塗りの顔。
不気味な笑顔。
そして、子どもたちに近づいていく異様な存在感。
カリーさんは単なる「恐ろしいピエロ」を演じたのではない。
どこかコミカルでありながら、次の瞬間には底知れない恐怖を感じさせる――。
その独特の演技によって、ペニーワイズはホラー史を代表するキャラクターの一つとなった。
英国紙『ガーディアン』も、カリーさんの『IT』でのペニーワイズ役を、彼の代表的な仕事の一つとして追悼記事で紹介している。
▪️映画、舞台、声優一つのジャンルに収まらなかった俳優
カリーさんの魅力は、ホラー作品だけではない。
『アニー』『クルー』『ホーム・アローン2』『ムペットの宝島』など、幅広いジャンルの映画に出演。
さらに舞台俳優としても高い評価を受け、トニー賞候補になるなど、スクリーンだけでは語り切れないキャリアを築いた。
悪役や個性的な人物を演じることが多かった一方、その演技にはユーモアと華やかさがあり、作品の空気そのものを変える力があった。
『バラエティ』も、カリーさんのキャリアを『ロッキー・ホラー・ショー』『クルー』『IT』などを軸に振り返り、ジャンルを超えて存在感を発揮した俳優として追悼している。
▪️海外では「ペニーワイズ」だけではない功績を惜しむ声
カリーさんの死去を受け、海外では『IT/イット』のペニーワイズ役だけに焦点を当てるのではなく、『ロッキー・ホラー・ショー』から舞台、映画、テレビ、声優まで、その長いキャリアを振り返る報道が続いている。
『ロッキー・ホラー・ショー』のファンコミュニティーでも追悼の動きが広がっており、カリーさんが演じたフランクン・フルター博士を受け継ぐ形で、作品を上映・上演し続けるファンたちもいる。
米カンザスシティーでは、カリーさんへの追悼を込めて『ロッキー・ホラー・ショー』のファンによるシャドウキャスト公演が行われている。そこには、作品だけではなく、カリーさんが長年にわたって築き上げてきた文化そのものを残していこうというファンの思いが表れている。
▪️2025年には自伝も発表
晩年のカリーさんは、自身の歩みを振り返る活動にも取り組んでいた。
2025年には自伝『Vagabond』を発表。
俳優として、歌手として、舞台人として、そして声の表現者として歩んできた人生を、自らの言葉で残した。
2012年の脳卒中によって身体的な制約を抱えることになっても、表現者としての歩みを完全に止めることはなかった。
むしろ、その後も声の仕事などを通じてファンとのつながりを持ち続けたことは、カリーさんのキャリアを語るうえで重要な一面となっている。
▪️「ペニーワイズ」はこれからも記憶される
ティム・カリーさんが演じたペニーワイズは、1990年のテレビ作品から30年以上が経った現在も、ホラー映画・ドラマを語る際にたびたび名前が挙がる存在だ。
2017年以降の映画版では別の俳優がペニーワイズを演じたが、カリーさんが最初に作り上げた強烈なイメージは、その後の作品にも大きな影響を残した。
一方で、カリーさんの功績はペニーワイズだけではない。
フランクン・フルター博士。
ペニーワイズ。
そして数多くの映画、舞台、テレビ、声の仕事。
それぞれの役柄に異なる表情を与え、観客の記憶に残る人物を作り上げてきた。
80歳でその生涯を閉じたティム・カリーさん。
死因が明らかになったことで、その最期だけでなく、半世紀以上にわたって世界のエンターテインメントに残した足跡にも、改めて注目が集まっている。


