UFC=鶴屋怜選手 上海で「次のステージ」を引き寄せる1R一本勝ち ボルハス選手を完封し「ランカーお願いします!」

2026.8.29

【©️UFC】

ジョシュア・ヴァン選手に敗れてから、鶴屋怜選手は再び勝ち続けている。

8月29日、中国・上海の浦東発展銀行上海オリエンタルスポーツセンターで開催された『UFC Fight Night: Nurmagomedov vs. Song』。

フライ級の鶴屋怜選手(THE BLACKBELT JAPAN)が、ケビン・ボルハス選手(ペルー)を1R4分14秒、リアネイキドチョークで下した。

これで鶴屋選手はUFCで2連勝。2025年3月、

『UFC 313』で喫したキャリア初黒星から、

再び上昇気流をつかんでいる。

しかも今回の相手は、決して簡単なファイターではなかった。

ボルハス選手は強烈なパンチを武器とするストライカー。

UFCでは現フライ級王者のヴァン選手からダウンを奪った実績を持ち、

前戦では当時無敗だったアンドレ・リマ選手を判定で破っている。

そんな危険な相手に対して、鶴屋選手が選択したのは真正面からの打ち合いではなかった。

組み、倒し、削り、最後は極める。

現在の鶴屋選手が持つMMAの完成度を、

そのまま1Rに凝縮したような勝利だった。

 

▪️「バックを獲れれば極められる」鶴屋選手が迷わず組んだ理由

ゴングが鳴ると、鶴屋選手は早い段階からテイクダウンを狙った。

ローシングルからボルハス選手の懐へ入り、相手の対応を見ながら組みの形を作る。ボルハス選手もスプロールで防ごうとするが、鶴屋選手は右を差してボディロックへ。

そして相手のバランスを崩すと、テイクダウンに成功した。

ここからが鶴屋選手の時間だった。

ボルハス選手がケージを背にしながら立ち上がろうとしても、鶴屋選手は逃がさない。

グラウンドでパウンドを重ね、相手の足をさばきながらポジションを前進させていく。

ボルハス選手が何とか立ち上がった瞬間、鶴屋選手はその背後へ。

バックを奪うと、リアネイキドチョークへ移行した。

逃げ場はなかった。

最後はボルハス選手がタップ。

1R4分14秒。鶴屋怜選手が、再びUFCのオクタゴンで一本勝ちを飾った。

試合後、鶴屋選手は「やったぜ俺。最高!」と喜びを爆発させた。

さらにケージインタビューでは、

「バックを獲れれば極められると思っていたんで。1Rで極めようと思っていたので。さっくり、いっちゃいました」

と試合を振り返った。

そして最後に、自分が次に進むべき場所をはっきりと言葉にした。

「また次も一本で勝つんで、ランカーお願いします」

この言葉からも、鶴屋選手がすでにUFCフライ級の上位戦線を見据えていることが伝わってくる。

 

▪️現王者ヴァン選手との敗戦から 鶴屋選手は何を変えたのか

今回の勝利を語るうえで鶴屋選手にとって大きな転機となったのが

ジョシュア・ヴァン選手との一戦だ。

2025年3月に『UFC 313』で対戦した鶴屋選手は激しい攻防の末に判定負け。

それまで無敗だった鶴屋選手にとって、

プロキャリアで初めて経験する敗北だった。

しかも対戦相手のヴァン選手は、その後にフライ級の頂点へと駆け上がった選手。

鶴屋選手にとっては、大きな壁にぶつかった瞬間だった。

しかし、その敗北を経験してオクタゴンへ戻ってきた鶴屋選手は、

再び強さを証明している。

2026年5月の復帰戦では、ルイス・グルレー選手を1Rで仕留め、

今回もボルハス選手を1R一本。

再起してから2試合連続でフィニッシュ勝利を収めた。

長期離脱を経て戻ってきた選手が、復帰後の2試合を連続フィニッシュで終える。

その事実だけでも、鶴屋選手が再びトップ戦線へ向かう準備を進めていることを感じさせる。

 

▪️ボルハス選手の危険な打撃を「組み」で封じた

今回の試合で特に印象的だったのは、ボルハス選手に自分の距離を作らせなかったことだ。

ボルハス選手はパンチを中心に攻撃を組み立てるストライカー。

UFCで11勝のうち8勝をKOで挙げている強打者だけに、スタンドでの攻防には当然ながら危険が伴う。

だからこそ、鶴屋選手は自分の強みを明確にした。

相手の得意な土俵で勝負するのではなく、自分が最も強い場所へ試合を持っていく。

テイクダウンからグラウンドへ。

そしてバックを奪い、フィニッシュ。

この流れを1Rの中で完成させた。

MMAでは、すべての局面で相手を上回る必要はない。

相手の武器を封じ、自分の武器を最大限に生かす。

鶴屋選手の今回の勝利は、MMAという競技の本質を高いレベルで実行した一戦だった。

 

▪️「ランカーお願いします」次はランキング戦へ

今回の勝利によって、鶴屋選手が次に求めるものは明確になった。

ランキング入りだ。

ボルハス選手という実力者を1Rで仕留めたことで、鶴屋選手自身が「ランカーとの対戦」を要求するのも自然な流れだろう。

もちろん、次の対戦相手やランキングについては、今後のUFCの判断を待つ必要がある。

それでも鶴屋選手自身は、すでにその先を見ている。

「また次も一本で勝つ」

そう言い切る24歳の視線は、明らかにタイトル戦線へ向いている。

UFCフライ級には、世界のトップファイターが並ぶ。

その中へ日本から鶴屋選手がどこまで食い込めるのか。

今回の上海での1R一本勝ちは、その答えを探すための新たな一歩となった。

 

▪️日本MMAの次世代を担う鶴屋怜選手

鶴屋選手は『ROAD TO UFC』シーズン2を制してUFCとの契約を勝ち取り、現在は世界最高峰の舞台で戦い続けている。

そして今、単に「UFCで戦う日本人選手」という段階から、

その先へ進もうとしている。

勝つだけではない。

どう勝つのか。

そこにも鶴屋選手の価値がある。

今回も1Rで相手をテイクダウンし、グラウンドで主導権を握り、最後はバックから一本。

2試合連続のフィニッシュによって、鶴屋選手は自身の存在感をさらに高めた。

次に待っているのは、ランキング入りを懸けた戦いになる可能性がある。

「ランカーお願いします」。

上海のオクタゴンで発したこの言葉が、次の大きな扉を開くことになるのか。

24歳の鶴屋怜選手は今、UFCフライ級の頂点へ向かう階段を、また一段上った。