秋元強真選手は試合序盤で左手中手骨を負傷していた それでもクレベルを攻略「2Rは流し気味」大晦日の王者戦に朝倉未来が慎重論

2026.8.12

【©️RIZIN FF】

20歳の秋元強真選手が、またしても強烈なインパクトを残した。

11日に東京・TOYOTA ARENA TOKYOで開催された「RIZIN.54」。メインイベントで元RIZINフェザー級王者のクレベル・コイケ選手と対戦した秋元選手は、3ラウンドを通じて打撃で主導権を握り、判定3-0で勝利した。

しかも、試合後に明かしたのは、左拳を負傷しながら戦っていたという事実だった。

「左手の中手骨をやっちゃったなって。1ラウンドあたりかな。だから2ラウンドは流し気味だった」

この一言は、今回の勝利を考えるうえで極めて重要だ。


 

クレベル選手といえば、RIZINフェザー級で長くトップ戦線を走り続けてきた実力者。

寝技の強さはもちろん、打撃を受けても前進を止めないタフネスも大きな武器として知られる。

そのクレベル選手を相手に、秋元選手は1ラウンドの途中で左拳を痛めた。

それでも試合を投げるどころか、2ラウンド以降も冷静に戦いを組み立て、最後まで主導権を手放さなかった。

そして本人の表現を借りれば、「2ラウンドは流し気味」。

力量の差を試合が終わって感じたからこそ、この言葉のインパクトは大きい。


 

▪️朝倉未来選手を苦しめたクレベルに「流し気味」

同じJAPAN TOP TEAM(JTT)に所属する先輩、朝倉未来選手も、かつてクレベル選手との対戦で厳しい戦いを経験している。

そのクレベル選手を相手に、20歳の秋元選手が打撃で試合を支配した。

しかも、左手の中手骨を痛めた状態でのリスク管理での試合運びだった点。

秋元選手自身も「本当、打たれ強くて。殴っている手がだんだん痛くなってくるぐらい」とクレベル選手のタフネスを振り返っている。

つまり、パンチを当てれば当てるほど自分の左手にも負担がかかる状況だった。

それでも勝ち切った。

だからこそ、「2ラウンドは流し気味だった」という言葉が際立つ。

もちろん、これは秋元選手本人の試合後の表現であり、実際の負傷の程度や試合中のコンディションについては今後の診断を待つ必要がある。

ただ、クレベル選手を相手に、拳を痛めた後も冷静に試合を進めることができたという事実は変わらない。

 

▪️「大晦日にやるなら、そんな無理してやる相手じゃない」

一方、秋元選手の視線はすでに次へ向いている。

RIZINフェザー級では、9月10日に現王者ラジャブアリ・シェイドゥラエフ選手とAJ・マッキー選手が対戦する予定となっており、その勝者とのタイトル戦が大晦日に組まれる可能性がある。

秋元選手にとっては、まさに一気に頂点へ駆け上がるチャンスだ。

しかし、ここで同じJTTの先輩である朝倉未来選手から、意外なほど慎重なアドバイスがあった。

秋元選手によれば、朝倉選手からは、

「練習時間が数カ月しか取れないんだったら、そんな無理してやる相手じゃない」

と助言されたという。

この言葉もまた、非常に興味深い。

勝利した勢いのまま「大晦日に王者とやりたい」と突っ走るのではなく、世界トップクラスの選手と戦うためには十分な準備期間が必要だと、先輩が現実的な視点を示したからだ。

朝倉選手自身、トップファイターとの戦いがどれほど厳しいものになるのかを身をもって経験してきた。

だからこそ、秋元選手の才能を認めているからこそ、無理をする必要はないと伝えたのだろう。

秋元選手は試合後、「安心しました」と笑顔を見せた。

20歳という年齢を考えれば、大舞台で元王者を破った直後に、さらに現王者級とのタイトル戦を要求したくなるのは当然だろう。

しかし、今回の試合で左手を負傷した。

そして大晦日までの時間を考えれば、十分な練習期間を確保できるかという問題もある。

秋元選手自身も、チームやRIZIN側と話し合ったうえで判断する考えを示している。

ここには、単なる勢いだけではない成長が見える。

クレベル選手を破ったことで、秋元選手の評価は大きく上がった。

一方で、次の相手がシェイドゥラエフ選手、

あるいはマッキー選手となれば、求められる準備のレベルは一段上がる。

だからこそ、今回の「2ラウンドは流し気味だった」という余裕と、

朝倉選手の「無理してやる相手じゃない」という慎重論は、表裏一体なのかもしれない。

強さを証明した20歳が、次に求められるのは「どこまで早く頂点に行くか」だけではない。

「どのタイミングで頂点に挑むのが最も自分の力を発揮できるのか」という判断もまた、トップファイターになるための重要な能力になる。

いずれを選んだとしても、今回のクレベル戦で見せた内容は、秋元選手がすでに「次世代の有力候補」ではなく、RIZINフェザー級の中心に立ち始めたことを強く印象づけた。


【文:高須基一朗】