NCAA大学バスケット制覇から10年 ニックスを頂点へ導いた ビラノバ・トリオの軌跡

2026.6.14

ニューヨーク・ニックスが、半世紀以上にわたって待ち続けた栄冠をついに手にした。

6月14日(現地時間13日)に行われたNBAファイナル第5戦で、ニックスはサンアントニオ・スパーズを94-90で下し、シリーズを4勝1敗で制覇。1973年以来、実に53年ぶりとなるNBAチャンピオンの座を獲得した。


 

この歴史的な優勝の裏側には、一つの大学プログラムから生まれた特別な絆があった。

ジェイレン・ブランソン選手、ジョシュ・ハート選手、ミケル・ブリッジズ選手。

3人は全員が米名門ビラノバ大学の出身であり、

2016年にはNCAA(全米 大学バスケットボールリーグ)トーナメント優勝を経験したチームメンバーでもある。

そして今回、その3人が再びニックスのユニフォームを身にまとい、NBAの頂点に立った。

NBAの長い歴史において、同じ大学でNCAA王者となった3人のチームメートが、後にNBAチームでリーグ制覇を成し遂げた例はなかった。

米メディアESPNが、彼らはNCAAタイトルとNBAタイトルの双方を獲得した史上初のチームメート・トリオとなったと報道。

ビラノバ大学は2010年代の後半よりNCAA屈指の強豪大学の名門として知られている。その黄金期を支えた三人は今でもレジェンド級の扱いを大学OBとして語られ続けている。

ジェイ・ライト監督の下で徹底された組織バスケットは、個人能力だけでなく判断力や献身性を重視するスタイルで評価され、多くのNBA選手を輩出してきた。

その象徴的存在がブランソン選手、ハート選手、ブリッジズ選手だった。

2016年のNCAAトーナメント制覇時、ハート選手はチームの精神的支柱として活躍し、ブランソン選手は将来を嘱望される司令塔として、大学時代に頭角を現した。ブリッジズ選手は当時まだ成長過程にあったが、その後リーグ屈指の3&Dプレーヤーへと進化していく。

大学卒業後、3人の道はそれぞれ別方向へ進んだ。

ブランソン選手はダラス・マーベリックスで経験を積み、2022年の夏にフリーエージェントとしてニックスへ移籍。加入直後からチームの絶対的エースとして君臨し、低迷が続いていた名門再建の中心人物となった。

ハート選手はロサンゼルス・レイカーズ、ニューオーリンズ・ペリカンズ、ポートランド・トレイルブレイザーズを渡り歩き、2023年のトレードでニックスへ加入。

献身的なディフェンスとリバウンド、そして勝利への執着心でチームカルチャーを支える存在となった。

ブリッジズ選手はフェニックス・サンズでNBAファイナル進出を経験した後、ブルックリン・ネッツへ移籍。2024年夏、ニックスが大型トレードを敢行して獲得したことで、かつてのビラノバ戦友たちは再び同じロッカールームに集結することとなる。

彼らの再会は単なる“同窓会”ではなかった。

大学時代から共有してきた価値観や競争意識、そして互いへの絶対的な信頼は、ニックスのチーム文化そのものを形成していった。派手なスター軍団ではなく、守備と組織力を重視するトム・シボドー体制のバスケットとも高い親和性を示し、数年をかけて優勝を狙える集団へと成熟していったのである。

その集大成となったのが今回のファイナルだった。

第5戦ではブランソン選手が45得点を叩き出し、エースとしてチームをけん引。

ブリッジズ選手は14得点4アシスト、ハート選手は13得点11リバウンドを記録し、それぞれが持ち味を発揮した点を数字に表れた。

試合終盤まで続いた接戦を制した瞬間、ビラノバ大学の体育館でともに夢を語り合った若者たちは、NBA最高峰の舞台で再び肩を抱き合った。

2016年のNCAA制覇から10年。

大学バスケットボール界の頂点を知る3人は、今度は世界最高峰リーグの頂点にも到達した。ニックスの53年ぶりの優勝は、単なるフランチャイズ復活の物語ではない。長い年月をかけて育まれた仲間との絆が、ついにNBA史に新たな1ページを刻んだ瞬間でもあった。


【文:高須基一朗】