ONE SAMURAIタイトルマッチで与座優貴選手が王座奪取ならず “テンカオの壁”とチーム戦略の遅れが生んだ0-3の敗北
【©️ONE SAMURAI 1】
4月29日、有明アリーナで開催された「ONE SAMURAI 1」。
元K-1ライト級王者・与座優貴選手が、ONEバンタム級キックボクシング世界王者の【©️ONE SAMURAI 1】に挑んだ一戦は、判定0-3という明確な決着を迎えた。
内容は拮抗していた。
だが、その内実を丁寧にひも解くと、“埋めきれない差”が随所に顔を出していた。
▪️勝敗を分けた「テンカオの設計」
初回、与座選手は前蹴りでハガティーのバランスを崩すなど、上々の入りを見せる。
しかし主導権は長く続かない。ハガティーは距離を修正すると、得意のテンカオ(ヒザ蹴り)を軸にムエタイ式の戦術と距離で試合を組み立て直した。
このヒザが、単なるカウンターではなかった点が重要だ。
与座選手の前進に対する“迎撃”でありながら、同時に試合全体のリズムを規定する“主導打”として機能していた。
踏み込もうとする瞬間に差し込まれるヒザは、ダメージ以上に心理的な制動をかける。
結果として与座選手は前に出続けながらも、連続攻撃の組み立てが分断されていった。
▪️チームとしての対応が後手に回った現実
第2ラウンド以降、与座選手はカーフキックやミドルで削り、終盤にはアッパーもヒットさせるなど、局面では見せ場を作る。しかし、試合の構図自体は変わらない。
ここで浮き彫りになったのが、所属するチーム・バシリウスとしての対応の遅れだ。
ハガティーのテンカオが明確に機能しているにもかかわらず、その対策―例えば踏み込みの角度変更、フェイントの増加、あるいはヒザを誘ってからのカウンター設計―が十分に整理されないままラウンドが進行した印象は否めない。
結果として、与座選手は“分かっていながら被弾する”場面を繰り返し、主導権を引き寄せる決定打を見いだせなかった。
さらに、足と使ったアウトボクシングの技術でも明らかにハガティー選手がテクニックの側面でも上回っており上下に散らされて攻撃を受けるシーンが多く印象に残った。
▪️既視感―武尊選手とスーパーレックの構図
この展開に、ある既視感を覚えた関係者も少なくないはずだ。
それが、武尊選手とスーパーレックの過去の一戦である。
前に出続ける日本人ファイターと、それをテンカオで迎撃し続けるムエタイ巧者。
距離を詰めたい側がヒザで止められ、攻撃の連続性を断たれていく構図は、
今回の試合と驚くほど重なる。
いずれも、“攻めているのに主導権がない”という矛盾を抱えたまま試合が進む。
そして最終的には、クリーンヒットの精度と試合コントロールで上回る側に軍配が上がる―そんな共通項が浮かび上がる。
判定0-3・・・「攻め」と「制御」の差
最終ラウンド、与座選手は逆転を狙い圧力を強める。
だが、最後まで決定機は訪れない。
距離に入るたびにヒザで止められ、
攻撃の連続性を作れないまま試合終了のゴングを聞いた。
判定は与座選手の完敗での0-3。
ハガティーは“攻めさせながら制御した”。
この差こそが、ジャッジの評価を分けた本質だろう。
試合後、V2防衛に成功したハガティーはこう語った。
「カーフキックを怖がるな。ただ足を上げればいい」
与座選手のカーフキックは有効だった。それでも勝敗を動かすには至らなかったのは、テンカオによる距離管理と迎撃が機能していたからにほかならない。
今回の敗戦は、個の問題だけではない。チームとしての戦術対応、試合中の修正力、そしてムエタイ的な距離支配への適応―複合的な課題が凝縮された一戦だった。
キックボクサーとして与座選手は愚直に前に出続けて戦った。
だが、勝つための“設計”には届かなかったのが現実だ。
【文:高須基一朗】


