イ・ヒョンジュン選手が長崎ヴェルカ退団 B1初優勝&CS MVPからNBA挑戦へ ポートランドと「Exhibit 10」契約 夢の本契約を懸けキャンプへ
長崎ヴェルカは9月7日に韓国人プレイヤーのイ・ヒョンジュン選手が
契約満了に伴い退団すると発表した。
新天地として決まったのは、米プロバスケットボールNBAのポートランド・トレイルブレイザーズ。イ・ヒョンジュン選手は同球団と、2026―27シーズンに向けた「Exhibit 10(エキシビット10)」付きの契約に合意した。
単なるキャンプ参加契約ではない。
NBAのトレーニングキャンプで実力をアピールし、開幕ロスター入り、あるいはTwo-Way契約、さらにはGリーグでのプレーを経てNBA定着を目指す――。25歳の韓国代表シューターにとって、長年追い続けてきたNBAへの挑戦が、いよいよ具体的なステージに入る。
▪️長崎で証明した圧倒的な3ポイントのチカラ
イ・ヒョンジュン選手が大きな注目を集めたのは、2025―26シーズンのBリーグでの活躍だった。
長崎ヴェルカの一員として高い得点力を発揮し、レギュラーシーズンでは3ポイントシュート成功率47.9%を記録。
外角から高確率でシュートを沈めるだけでなく、サイズを生かしたプレーでもチームに貢献し、長崎のクラブ史上初となるB1優勝を大きく後押しした。
さらにチャンピオンシップでは勝負どころで存在感を発揮し、ファイナルを含む戦いの中でチームをけん引。
最終的にCS MVPにも選出されるなど、Bリーグを代表するシューターの一人として評価を高めた。
その活躍を経て、イ・ヒョンジュン選手はNBAへの再挑戦を本格化させた。
▪️「Exhibit 10」とは? NBAへの入口となる重要な契約
今回の契約で重要になるのが「Exhibit 10」というNBA独特の仕組みだ。
Exhibit 10は、基本的に1年契約の非保証の最低年俸契約に付けられる条項で、
トレーニングキャンプやプレシーズンで若手選手らを評価するために活用される。
つまり、今回の契約だけでイ・ヒョンジュン選手のNBA本契約が確定したわけではない。
一方で、NBA球団と正式な契約を結び、トレーニングキャンプに参加できるという意味では、NBA入りを目指す選手にとって極めて重要なステップとなる。
海外報道でも、イ・ヒョンジュン選手の契約は1年の非保証契約で、ポートランドのトレーニングキャンプ参加につながる契約と報じられている。
▪️最大のポイントは「キャンプで何を見せるか」
Exhibit 10契約の選手にとって最大の勝負は、トレーニングキャンプとプレシーズンだ。
球団側は、単純な得点力だけではなく、
・NBAレベルのフィジカルへの対応
・ディフェンス力
・3ポイントシュートの安定性
・ボールを持っていないときの動き
・チーム戦術への適応力
・NBA選手を相手にした判断スピード
・限られた出場時間で結果を出す能力
などを総合的に評価する。
特にイ・ヒョンジュン選手の場合、大きな武器になるのが3ポイントシュートだ。
NBAでは、スペースを作るためのアウトサイドシューターの価値が非常に高い。
長崎で47.9%という高い3ポイント成功率を記録した実績を、NBAのスピードとフィジカルの中でも再現できるかどうかが、大きな評価ポイントになりそうだ。
▪️その先にある「Two-Way契約」
Exhibit 10契約からNBA定着へ向かうルートとして、特に注目されるのが「Two-Way契約」だ。
現在のNBAでは、各球団が最大3人までTwo-Way契約の選手を保有できる。通常の最大15人のNBA契約選手とは別枠で、NBAとGリーグの両方を行き来しながら成長を目指す制度だ。
Two-Way契約を結んだ選手は、NBAのロスターに登録されながらGリーグでもプレーすることができる。
NBAの公式Gリーグ情報によると、Two-Way選手はNBAチームで最大50試合までアクティブになることが可能で、NBAとGリーグの両方で経験を積むことができる。
つまり、イ・ヒョンジュン選手にとっては、
Exhibit 10契約
↓
トレーニングキャンプ
↓
プレシーズンでアピール
↓
NBA本契約入りを競う
↓
Two-Way契約への変更
↓
Gリーグで経験を積みながらNBA昇格を狙う
という道筋も考えられる。
実際、NBAではExhibit 10契約からTwo-Way契約へ変更されるケースもある。2025年にはボストン・セルティックスがロン・ハーパーJr.選手のExhibit 10契約をTwo-Way契約へ変更した例もある。
▪️2026―27シーズンのTwo-Way契約は約67.9万ドル
契約制度を理解する上では、金額も重要だ。
2026―27シーズンのTwo-Way契約の年俸基準額は67万8882ドルとされている。
一方、NBAの0年目選手の最低年俸は135万7763ドル。
つまり、Two-Way契約は通常のNBA最低年俸契約とは異なる給与体系となっている。
ただし、Two-Way契約は単に「年俸が安い契約」という意味ではない。
NBAのレギュラーシーズンでプレーする機会を得ながら、Gリーグで継続的に出場し、NBAレベルへ適応するための重要な育成ルートでもある。
▪️Exhibit 10には「Gリーグでの道」も用意されている
今回の契約でさらに注目されるのが、Exhibit 10に付随するGリーグへのルートだ。
NBAのCBA(労使協定)では、Exhibit 10契約の選手がシーズン開幕前に球団からウェイブされ、その後、球団のGリーグ傘下チームと契約して一定の条件を満たした場合、ボーナスを受け取れる仕組みが設けられている。
その条件の一つが、Gリーグの傘下チームで60日間連続して在籍・活動することだ。
2026―27シーズンのExhibit 10ボーナスの上限は9万1000ドルとなっている。
したがって、仮にトレーニングキャンプ後にポートランドのNBAロスターに残れなかったとしても、それだけでNBA挑戦が終わるわけではない。
ポートランドにはGリーグの「Rip City Remix」があり、海外報道ではイ・ヒョンジュン選手が同チームでプレーする可能性も指摘されている。
▪️「NBAに残れなかった=失敗」ではない
ここが今回の契約を理解する上で最も重要なポイントだ。
Exhibit 10契約は、NBAのレギュラーシーズン開幕ロスター入りを保証する契約ではない。
しかし、それは決して「NBAから遠い契約」という意味でもない。
むしろ、NBA球団が選手を直接見極めるためのトレーニングキャンプに正式参加し、その後の選択肢として、
NBA本契約
Two-Way契約
Gリーグ
という複数の道が開かれる。
NBA公式情報でも、Two-Way契約から通常のNBA契約へ変更される仕組みが存在することが説明されている。実際にTwo-Way契約からNBAの標準契約へ昇格する選手もいる。
イ・ヒョンジュン選手にとって重要なのは、キャンプで「NBAで使える選手」という評価を勝ち取ることになる。
▪️長崎ヴェルカもNBA挑戦を全面的に後押し
長崎ヴェルカの伊藤拓摩社長兼ゼネラルマネジャー(GM)は、イ・ヒョンジュン選手の退団に際して、
「イ選手が入団当初から掲げている“NBA挑戦”を長崎ヴェルカ一同、最大限応援したい」
とのコメントを発表。
長崎で大きく成長し、B1初優勝とCS MVPという大きな実績を残した選手の次なる舞台が、NBAとなる。
▪️韓国代表からNBAへ「3ポイント」が最大の武器
イ・ヒョンジュン選手は韓国代表としてもプレーしており、国際舞台での経験を積んできた。
さらに過去には米大学バスケットボールのデビッドソン大学、NBA Gリーグのサンタクルーズ・ウォリアーズなどでもプレー。
日本では大阪エヴェッサ、長崎ヴェルカ、さらにオーストラリアでもプレー経験を積んでいる。
NBA Gリーグ、オーストラリア、日本、韓国代表と複数の環境を経験してきたことは、今回のNBA挑戦において大きな財産となる。
海外報道によれば、イ・ヒョンジュン選手は2026年夏のNBAサマーリーグではサンアントニオ・スパーズの一員としてプレーし、その後、ボストン・セルティックスやニューオーリンズ・ペリカンズのミニキャンプにも参加していたという。
そして今回、ついにポートランドから正式なキャンプ契約を勝ち取った。
ポートランドでのトレーニングキャンプは、その夢を現実に変えるための大きな一歩となる。

