トミー・ジョンさん死去「投手生命の終わり」を覆した画期的な再建手術 数々の名選手を救った功績
投手のひじの靱帯(じんたい)再建手術の代名詞となった「トミー・ジョン手術」の由来である元大リーグ投手、トミー・ジョンさんが米フロリダ州の自宅で死去した。
83歳だった。大リーグ機構(MLB)などが16日に発表した。
ジョンさんは1963年にメジャーデビュー。
ドジャース やヤンキースなどで1989年まで現役を続け、左腕投手として通算288勝を記録した。26年間にわたる長い現役生活は、メジャーリーグ史に残る実績の一つとなっている。
そのキャリアを語るうえで欠かせないのが、1974年に左ひじを負傷したことだ。
当時、投手のひじの靱帯を再建する治療法は確立されていなかった。
靱帯を大きく損傷すれば、投手として再び本格的な投球をすることは極めて難しく、競技生活の終わりにつながるケースもあった。
そんな時代に、ジョンさんは損傷した靱帯を別の部位から採取した腱で置き換える手術を受けた。
ドジャースのチームドクターだったフランク・ジョーブ医師が手掛けたもので、
現在のUCL再建術につながる歴史的な試みだった。
画期的だったのは、単に新しい手術法が考案されたことではない。
ジョンさん自身が、その手術によってトップレベルの競技へ復帰できることを実戦で証明した点にある。
1976年にマウンドへ戻ると、その後もメジャーで投げ続け、1989年まで現役生活を継続。
通算288勝のうち、手術後に実に164勝を挙げたとされる。
再建手術が「現役復帰の可能性」を示すだけでなく、長期にわたって第一線で投げ続ける道にもなり得ることを、自らのキャリアで示した。
この成功を契機に、UCL再建手術は改良を重ねながら野球界に広がった。
かつては投手にとって致命的ともいえる故障だったひじの靱帯損傷に対し、手術と長期のリハビリを経て競技復帰を目指すという選択肢が生まれたのである。
日本でも多くのプロ野球選手がこの手術を経験している。
村田兆治さん、桑田真澄さん、松坂大輔さん、ダルビッシュ有投手、大谷翔平選手らも手術を受けた選手として知られる。
一人の投手の復帰をきっかけに確立されていった治療法は、やがて野球界におけるスポーツ医学の重要な選択肢となった。MLBも、トミー・ジョン手術が数多くの選手のキャリアを支えてきたことを紹介している。
ジョンさんの名前は、288勝を挙げた左腕としてだけではなく、投手のひじの故障に対する医学的な可能性を大きく広げた存在として、野球史に刻まれることになる。

