『トイ・ストーリー5 』が示す新たな映画公開戦略 世界興収1744億円超でも早期デジタル配信へ
【©️Disney studio】
ディズニーとピクサーの人気シリーズ最新作『トイ・ストーリー5』が、劇場公開からわずか約2カ月でデジタル配信へ移行する。6月19日に米国で公開された同作は、世界興行収入10億9700万ドル(約1744億円)を突破。北米でも公開9週目を迎えた8月中旬時点で1925館で上映されており、依然として高い集客力を維持している。
それでもディズニーは、8月18日からプレミアム・ビデオ・オン・デマンド(PVOD)での配信を開始する。大ヒット作が劇場でロングランを続ける一方、家庭でも早い段階から楽しめる環境を整えるという、現在の映画ビジネスを象徴する動きだ。
今回の決定を単純に「劇場公開から配信へ移った」と捉えるだけでは、その意味を十分に捉えることはできない。むしろ、世界的な大作が集中する映画市場で、限られた劇場スクリーンを確保しながら作品を最大限に届けるための、新たな公開戦略と見ることができる。
■世界興収1744億円超 『トイ・ストーリー5』は依然として劇場で存在感
『トイ・ストーリー5』は、公開初週末から圧倒的なスタートを切った。
6月19~21日の北米公開初週末には4425館で上映され、
1億5960万ドル(約254億円)を記録。
その後も観客を集め続け、北米興収は4億7310万ドル(約752億円)、
北米以外では6億2420万ドル(約992億円)に到達した。
世界興収は10億9700万ドル。
日本円にして約1744億円という巨大な数字となっている。
しかも8月14日から始まる公開9週目の週末でも、
北米1925館で上映が継続。
大作映画としての劇場での存在感は依然として大きい。
つまり今回のデジタル配信は、劇場で結果を残せなかった作品が配信へ移るケースとは大きく異なる。十分な興行成績を上げ、現在も劇場で上映されている作品が、次の段階へ進むための判断だ。
■大作が相次ぐ夏の映画市場「スクリーンを確保する」ことの意味
近年の映画市場では、世界規模で注目を集める大作が次々と公開されている。
とりわけディズニーやピクサーのような大型ブランド作品は、公開時に多くのスクリーンを必要とする一方、同じ時期に他社の話題作も集中する。映画館のスクリーン数には限りがあるため、どれほど人気の高い作品であっても、いつまでも大量の上映枠を維持できるとは限らない。
これは作品の人気とは別の、映画ビジネス上の大きな課題だ。
そこで重要になるのが、劇場公開とデジタル配信を柔軟に組み合わせる考え方だ。
『トイ・ストーリー5』は、劇場で作品の魅力を最大限に届けたうえで、次の段階では家庭で楽しめる環境を早期に整える。映画館のスクリーンという限られた資源だけに依存せず、デジタルという巨大な視聴市場へ観客を広げていく。
今回の判断は、そうした新しい映画公開の在り方を象徴しているともいえる。
■8月18日からPVOD「観たい」と思った人がすぐに楽しめる
米ウォルト・ディズニー・ホーム・エンターテインメントは、
8月18日から『トイ・ストーリー5』をPVODで提供する。
PVODは、定額制動画配信サービスとは異なり、作品ごとに料金を支払って購入またはレンタルする方式。
Apple TV、Fandango at Home、Prime Video、YouTube Movies & TVなどの
デジタルプラットフォームで視聴できる。
新作映画にとって、この仕組みは劇場公開後の観客をつなぎ止める重要な選択肢となる。
映画館へ足を運べる人だけでなく、家族の予定が合わなかった人、劇場で見逃した人、もう一度作品を楽しみたい人にも、早い段階で鑑賞機会を提供できるからだ。
特に『トイ・ストーリー』のように親子で楽しめる作品にとって、家庭での視聴環境を整える意味は大きい。
■「劇場か配信か」ではなく両方で作品を届ける時代へ
映画業界では長らく、劇場公開と家庭向け映像商品の間に一定の期間を設けることが一般的だった。
しかし、観客のライフスタイルが変化し、動画配信サービスが急速に普及した現在、その境界は少しずつ変わり始めている。
劇場でしか得られない大画面と音響による体験を提供しながら、一定期間後には家庭でも楽しめるようにする。
この二つを対立させるのではなく、それぞれの強みを生かして観客との接点を増やすことが、今後の大作映画にとって重要になりそうだ。
『トイ・ストーリー5』のケースは、その可能性を分かりやすく示している。
世界興収1744億円超という大ヒットを記録しながら、劇場公開を終えるのを待つのではなく、次の市場へ早い段階で作品を送り出す。劇場での成功を土台に、デジタルでさらに観客層を広げるという発想だ。
■購入版には未公開シーンなど充実の特典
デジタル購入版には、本編だけではなく、制作現場を紹介する特典映像5本、未公開シーン5本、音声解説なども収録される。
さらに、エンドクレジットで使用されるテイラー・スウィフトの楽曲「I Knew It, I Knew You」に合わせた公式ミュージックビデオとリリックビデオも、デジタル版ならではのコンテンツとして用意される。
劇場では本編を中心に作品を楽しみ、家庭では特典映像や音声解説まで含めて作品世界を深く味わう。こうした「二度楽しめる」仕組みも、デジタル販売の魅力となっている。
■豪華声優陣も話題 9月には4K、ブルーレイ、DVDも
『トイ・ストーリー5』では、ウッディ役のトム・ハンクス、バズ・ライトイヤー役のティム・アレン、ジェシー役のジョーン・キューザックらおなじみのキャストが続投。
さらに、キアヌ・リーブス、バッド・バニーことベニート・アントニオ・マルティネス・オカシオら、多彩なキャストが参加している。
監督は『ファインディング・ニモ』『ウォーリー』などで知られるアンドリュー・スタントン。新たなキャラクターや現代的なテーマを取り込みながら、『トイ・ストーリー』の世界をさらに広げている。
デジタル配信に続き、9月22日には4K Ultra HD、ブルーレイ、DVDも発売予定。劇場、デジタル、パッケージ商品と、複数の入り口から作品を楽しめる環境が整えられる。

