UFCが上海で仕掛ける「アジア争奪戦」日本人4選手が挑む世界最大MMA市場への登竜門
格闘技ファンの視線は、ラスベガスではなく上海へ向かっている。
UFCは8月28日に『ROAD TO UFC シーズン5 準決勝』、
翌29日に『UFCファイトナイト上海』を開催すると正式発表した。
舞台は上海・浦東発展銀行上海オリエンタルスポーツセンター。
2夜連続開催という異例のスケールで行われる今回のイベントは、
単なる興行日程の発表以上の意味を持つ。
そこには、世界最大の総合格闘技団体が描くアジア戦略の現在地と、
中国市場を巡る国際スポーツビジネスの思惑が色濃く反映されている。
▪️UFCが見据える「14億人市場」の現実
近年のUFCは、北米中心だったビジネスモデルから大きな転換を進めている。
成熟市場であるアメリカでは成長余地が限られる一方、中国や東南アジアでは中間所得層の拡大とデジタル配信の浸透によって、新たなスポーツ消費市場が急速に形成されている。
その象徴が、中国移動(チャイナ・モバイル)傘下の動画配信プラットフォーム「Migu」との提携強化だ。
Miguは数億人規模のユーザー基盤を抱える中国有数のコンテンツプラットフォームであり、UFCにとっては単なるスポンサーではない。言い換えれば、中国市場への“玄関口”そのものだ。
今回の上海大会が上海市スポーツ局や浦東新区政府の後援を受けていることも見逃せない。スポーツイベントが単なる民間興行ではなく、都市ブランディングや消費喚起政策の一環として位置づけられている点に、中国市場特有のダイナミズムがある。
▪️ROAD TO UFCが変えた「格闘技版ドラフト会議」
一方で、競技面に目を向けると、最大の注目は『ROAD TO UFC』だろう。
この大会はしばしば「アジア版コンテンダーシリーズ」と説明される。しかし、その本質は少し異なる。
むしろアジア全域を対象にした“格闘技版ドラフト会議”と表現した方が実態に近い。
中国、日本、韓国、モンゴル、インド、豪州など各国の有望選手を集め、トーナメント形式で選抜していくシステムは、才能発掘と市場開拓を同時に実現する極めて合理的な仕組みだ。
選手が勝てばUFCは新たなスター候補を獲得できる。
その選手の母国では新たなファン層が生まれる。
競技とビジネスが同時に拡大していく構造が、ROAD TO UFC最大の特徴なのである。
▪️日本勢4選手が迎える「人生を変える一戦」
今回、日本からは4選手が準決勝へ駒を進めた。
バンタム級の田嶋椋選手。
フライ級の内田タケル選手と鈴木崇矢選手。
そして女子ストロー級の福田万智選手である。
特に注目したいのはフライ級だ。
現在のUFCフライ級は、堀口恭司選手や平良達郎選手をはじめ、
日本人選手への評価が再び高まりつつある階級でもある。
内田選手は中国のジー・ニウシュイエ選手と対戦。
鈴木選手は無敗のジョセフ・ラルチネーゼ選手と拳を交える。
一見すると準決勝に過ぎない。しかし実態は異なる。
世界最高峰への入口に立つ選手にとって、この試合は契約書にサインする前の最終面接に近い。
勝利はUFC本戦への道を切り開き、敗北は再び長い下積み生活を意味する。
だからこそ、彼らが背負うプレッシャーはタイトルマッチにも匹敵する。
日本格闘技界が世界市場にどれだけ競争力を持ち続けているのかを測る、
一種の国際比較テストでもある。
アジア最大級の経済都市・上海で行われる2日間の戦い。
日本勢4選手が掴もうとしているのは、一枚のUFC本戦出場を実現させる契約書だけではない。
世界最高峰への挑戦権と、日本格闘技の新世代たちの強さを世界へ証明する機会でもあるのだ。
【ROAD TO UFC シーズン5 準決勝】
▼フェザー級準決勝 5分3R
ジョージ・マンゴス(豪州)9勝1敗 vs アヘジャン・アイリヌアー(中国)17勝3敗
▼フェザー級準決勝 5分3R
ダギースレン・チャグナードルジ(モンゴル)11勝2敗vs ソン・ヨンジェ(韓国)10勝1敗1分
▼バンタム級準決勝 5分3R
カシブ・マードック(ニュージーランド)8勝0敗 vs ラビンドラ・ダント(ネパール)
▼バンタム級準決勝 5分3R
田嶋 椋(日本)11勝3敗 vs チュングレング・コレン(インド)
▼フライ級準決勝 5分3R
ジー・ニウシュイエ(中国)17勝4敗 vs 内田タケル(日本)8勝2敗
▼フライ級準決勝 5分3R
ジョセフ・ラルチネーゼ(豪州)6勝0敗 vs 鈴木崇矢(日本)8勝1敗
▼女子ストロー級準決勝 5分3R
ファリダ・アブドゥエヴァ(キルギス)8勝1敗 vs パク・ボヒョン(韓国)9勝3敗
▼女子ストロー級準決勝 5分3R
メン・ボー(中国)23勝8敗 vs 福田万智(日本)11勝2敗
【文:高須基一朗】

