格闘技は「IP産業」へ進化するのか 人気ボクサーのライアン・ガルシア来日で始まった「Combat Entertainment 3.0」という新構想
6月5日、都内で行われたabc株式会社の事業発表会には、世界的人気を誇るプロボクサーのライアン・ガルシア選手が登壇。さらに、格闘家としてだけでなくSNS世代を象徴する存在として高い支持を集める三浦孝太選手も姿を見せた。
この日発表されたのは、単なる格闘技イベントではない。
Web3やブロックチェーン技術を活用し、
格闘技、デジタルコミュニティ、グローバル市場を融合させる
新プロジェクト「Combat Entertainment 3.0」である。
その本質は、“格闘家の価値”を再定義することにある。
▪️格闘技ビジネスは「興行」から「IP」へ
これまで格闘技産業は、チケット販売、スポンサー収入、放映権、PPV(ペイ・パー・ビュー)といった興行中心の収益モデルによって成長してきた。
しかし近年、スポーツビジネスを取り巻く環境は大きく変化している。
SNSの普及によって、選手個人の発信力やコミュニティ形成力が、競技そのものと並ぶ価値を持つ時代へと移行した。海外ではすでに、アスリートを単なる競技者ではなく、一つの「IP(知的財産)」として捉える流れが加速している。
今回abc株式会社が掲げた「Combat Entertainment 3.0」も、
その新時代を見据えた構想だ。
会見でabc株式会社代表取締役の松田元氏は、
「これまで格闘技業界では、ファン、選手、スポンサー、興行主がそれぞれ独立した存在だった。その上でブロックチェーン技術を活用することで、それぞれを一つの経済圏として接続できる可能性がある」と語った。
▪️「ファイターIP」を世界市場へ接続する
今回のプロジェクトの中核となるのが、「ファイターIPのオンチェーン化」という考え方だ。
試合映像、限定コンテンツ、イベント参加権、SNS投稿、
オリジナルグッズなど、これまで個別に存在していた選手の価値をデジタル上で統合。ファンとの継続的な接点を生み出し、新たなコミュニティ形成を目指していく。
同社は事業の柱として、
・集める(AGGREGATE)
・広げる(GLOBALIZE)
・稼ぐ(MONETIZE)
・分かち合う(ON-CHAIN)
という4つの軸を提示した。
特に注目されるのが、“グローバル展開”だ。
今回、無敗の世界王者として知られるテレンス・クロフォード陣営とライアン・ガルシア選手との連携構想も発表された。米国PPV市場のノウハウ、日本格闘技が持つ熱量、さらにSNS時代の情報拡散力を融合させることで、
海外市場を視野に入れた新たなビジネス展開を進めていくという。
▪️ライアン・ガルシアが持つ「世界発信力」
会見で大きな注目を集めたのが、ライアン・ガルシア選手の存在だ。
SNS総フォロワー数は約1300万人。
競技力だけでなく、世界規模の発信力を持つ
“現代型スターアスリート”として知られている。
ガルシア氏は、「日本に来ることを非常に楽しみにしていた。素晴らしい機会をいただけた」とコメント。さらに、「いつか日本で試合をしたい」と語り、日本格闘技市場への強い関心も示した。
滞在中には、世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥選手との交流予定も明かされ、「井上はモンスターだ」と絶賛。さらに、中谷潤人選手についても高く評価するなど、日本ボクシング界へのリスペクトを見せた。
今回、ガルシア氏は合弁会社「Crawford Production Japan(仮称)」の
広報戦略アンバサダーにも就任。世界規模のファンダムを持つ存在として、
同プロジェクトの発信力強化を担っていく。
▪️三浦孝太選手が象徴する「新時代ファイター像」
そして、今回の構想を象徴する存在の一人が三浦孝太選手だ。
競技活動に加え、SNSでの発信力、若年層への高い認知度、
アジア圏での人気など、従来の格闘家とは異なる存在感を確立している。
いまやファイターは、「試合で勝つ」だけではなく、
「世界観を発信する存在」へと変化している。
abc株式会社は今後、限定グッズやイベント参加権、デジタルコミュニティなどを通じ、ファンとの新たな接点づくりを進めていく方針を示した。
リアルイベントとオンラインコミュニティを連動させることで、
従来型の“観戦”を超えた新しい格闘技体験の創出を目指す。
かつてPRIDEやK-1は、日本独自の演出と熱狂によって世界的な支持を獲得した。
そして現在、その熱量をデジタル技術と融合させ、
新たな形で世界市場へ接続しようとする動きが始まっている。
「Combat Entertainment 3.0」が目指すのは、単なるWeb3事業ではない。
格闘技そのものを、グローバルIP産業として再構築する挑戦だ。
【文:高須基一朗】





