RIZIN = 伊澤星花選手 出産から3か月で大みそか復帰へ 女子格闘技の危機感を背負う決断、榊原CEOが明かした本音「彼女だけですよ」
【©️RIZIN FF 】
2026年の大みそか、RIZINのリングに異例の復帰を果たす選手がいる。
元女子スーパーアトム級王者の伊澤星花選手だ。
9月25日に第一子となる女児を出産した伊澤選手が、12月31日に愛知・バンテリンドーム ナゴヤで開催される「超RIZIN.6 師走の尾張名古屋下剋上祭り」への参戦を決めた。
出産から約3か月という短期間でのMMA復帰は格闘技界でも大きな注目を集めている。
しかし、今回の参戦を単純に「産後最速の復帰」という話題だけで捉えると、その背景にある本質を見落としかねない。
伊澤選手の決断には、競技者としての復帰への意欲に加え、RIZINの女子格闘技を取り巻く現状に対する強い問題意識があった。榊原信行CEOが会見後に語った「彼女だけですよ」という言葉には、女子格闘技の将来をめぐる主催者側の危機感が率直に表れている。
▪️榊原CEOが明かした女子格闘技への危機感
11月3日、名古屋市内で行われた記者会見で、伊澤選手は大みそか大会への参戦を発表した。
会見には生まれたばかりの我が子を連れて登壇。榊原CEOに自ら出場を直訴し、参戦を実現させたという。
会見後の取材で榊原CEOは、伊澤選手について「彼女だけですよ、本当に何とか女子格を盛り上げようとしているのは」と発言。さらに、女子格闘技に対して厳しい意見が聞こえてくる状況に触れ、「女子格不要論みたいな辛辣な意見も聞こえてきている中で、彼女は何とか女子格にスポットライトを当てたいという思い切ったチャレンジだと思う」と、その決断を評価した。
この発言から読み取れるのは、RIZINが女子格闘技の競技的な価値だけでなく、興行全体における存在感や観客への訴求力についても課題を感じているということだ。
格闘技興行において、競技レベルの高さと観客動員につながる人気は、必ずしも同じ尺度では測れない。選手の実績、試合内容、知名度、ストーリー性、対戦カードの魅力など、複数の要素が重なって初めて大きな注目が生まれる。
その意味で、女子格闘技の存在感を高めるには、個々の選手が実力を示すだけでなく、競技そのものに関心を持ってもらうための継続的な取り組みも必要になる。
榊原CEOの言葉は、そうした課題を主催者側も認識していることを示すものといえる。
▪️復帰を急がせなかったRIZIN、本人の強い出場意思
今回の復帰決定にあたり、RIZIN側は当初、慎重な姿勢を取っていたという。
榊原CEOは「ゆっくり休んで来年でいいんじゃない」と伊澤選手に伝えていたことを明かしている。出産という大きな身体的変化を経た選手に対し、無理に早期復帰を求める考えではなかった。
ところが、伊澤選手本人は「絶対出してください」と大みそかへの出場を強く希望した。
榊原CEOによれば、ケイトーNOELの試合が伊澤選手の気持ちに火をつけたという。女子格闘技の存在感が薄れてしまうことへの危機感が、本人の中で一段と強まったようだと説明している。
ここで注目したいのは、今回の参戦が主催者側から与えられた復帰機会ではなく、伊澤選手自身が強く望んだ挑戦だったという点だ。
王者としての実績を持つ選手が、競技から一時的に離れた後も自ら舞台を求める。その姿勢は、単なる現役続行への意欲にとどまらず、自身が女子格闘技の注目度を高める役割を担いたいという意思の表れとも受け取れる。
▪️出産から2週間後にトレーニング再開 大みそかに照準
榊原CEOは、伊澤選手が出産を終えて約2週間後からトレーニングを開始していたことも明かした。
そして、精神面と身体面の両方について、大みそかに向けて試合に臨める準備が整う見通しを確認したうえで、参戦を認めたという。
ただし、産後の身体の回復には個人差があり、出産からの経過期間だけで競技復帰の適否を判断することはできない。MMAは打撃や組み技、投げ、寝技などが複合する極めて負荷の高い競技であり、通常のトレーニング復帰とは異なる慎重な判断が求められる。
今回の伊澤選手のケースも、本人の意思だけでなく、身体の回復状況や試合に向けた準備を踏まえた個別の判断として捉える必要がある。
出産後も競技者としての目標を持ち続け、再びトップレベルの舞台を目指す。その挑戦は、アスリートのキャリア形成という観点からも関心なポイントだろう。
▪️伊澤選手の復帰が女子格闘技の未来へ問いかけるもの
今回の参戦発表で浮き彫りになったのは、伊澤選手個人の復帰への意欲だけではない。RIZINの女子格闘技が、今後どのようにファンの支持を広げ、興行の中で確かな存在感を築いていくのかという課題でもある。
女子格闘技の評価を一人の選手に委ねることはできない。各階級の選手が実力を競い、魅力的な対戦カードが生まれ、継続的に注目される環境が整ってこそ、競技全体の発展につながる。
その一方で、競技の注目度が問われる局面で、自ら大みそかの舞台に立つことを希望した伊澤選手の決断には、トップ戦線で支える選手としての自覚と強い意志が感じられる。
■大会概要
大会名:超RIZIN.6 師走の尾張名古屋下剋上祭り
開催日:2026年12月31日(木)
会場:愛知・バンテリンドーム ナゴヤ

