バックスとギャリー・トレントJr.の「異例の大型契約」にNBAが調査 なぜ問題視されるのか?専門家が指摘する“密約”疑惑とは
【©️Milwaukee Bucks 】
NBAで、契約制度の公平性を揺るがしかねない問題が浮上している。
ミルウォーキー・バックスがギャリー・トレントJr.選手と結んだ4年総額6400万ドル(約96億円)の契約延長をめぐり、NBAが調査に乗り出したことが明らかになった。
発表された契約額そのものは、NBAのルール上 認められた範囲内に見える。
しかし、問題となっているのは「なぜトレントJr.選手が、直前まで市場価値に見合わない低額契約を受け入れ、その後、大型契約を手にしたのか」という点だ。
一部では、この一連の流れが「将来的な大型契約を前提にした事前の約束、いわゆる密約だったのではないか」との疑念が生まれている。
▪️素人にも分かる「何が問題なのか」
NBAには、チーム間の戦力バランスを保つために「サラリーキャップ」という制度が存在する。
これは、各チームが選手に支払える年俸総額に一定の制限を設ける仕組みだ。資金力のあるチームだけがスター選手を大量獲得することを防ぎ、リーグ全体の競争力を維持する目的がある。
一方で、長年在籍した選手には「バード権」と呼ばれる特別ルールがあり、チームはサラリーキャップを超えて再契約できる。
今回問題視されているのは、この制度を利用するために、もし事前に「最初は安い契約で我慢してもらい、後から高額契約を保証する」という約束が存在した場合、リーグの公平な競争ルールを損なう可能性があるためだ。
簡単に言えば、
「一度は格安契約でチームの資金制限を回避し、後から大型契約で報酬を補償する」
という流れが意図的に行われていた場合、他球団より有利な条件でチーム作りができてしまうため、NBAは問題視している。
▪️異例だったトレントJr.選手の契約経緯
ギャリー・トレントJr.選手は2018年NBAドラフト2巡目で指名され、その後トレードでポートランド・トレイルブレイザーズへ移籍。さらに2021年にはトロント・ラプターズへ加入した。
ラプターズでは若手ながらローテーション選手として評価され、3年総額5200万ドル(約78億円)の契約延長を経験している。
しかし2024年オフ、フリーエージェント市場では市場価値を大きく下回る1年260万ドル(約3億9000万円)の契約でバックスへ加入した。
当時のバックスはサラリーキャップを大幅に超過しており、大型契約を提示する余裕がなかった。そのため、この低額契約自体はNBAでは珍しいケースではない。
問題は、その後の展開だった。
▪️低額契約から約96億円契約へ
2024-25シーズン、トレントJr.選手は74試合に出場し、平均11.1得点を記録。特に3ポイントシュート成功率41.6%という高い数字を残し、ヤニス・アデトクンボ選手を中心とするバックスの戦術に適応した。
プレーオフでも重要な役割を担い、チームにとって欠かせない存在となった。
しかし、その実績を考えると、前年のベテラン最低保証額に近い条件で残留したことは、市場価値とのギャップが大きいと見られている。
さらに翌シーズン、トレントJr.選手はアーリー・バード権を取得。これによりバックスはサラリーキャップを超えて再契約することが可能となり、4年6400万ドルという大型契約が成立した。
この急激な待遇変化が、今回の調査対象となっている。
通常、チーム再建期に入る場合、球団は将来の柔軟性を確保するため、大型契約を慎重に扱う。
しかしバックスは、ヤニス・アデトクンボ選手を中心としたチーム構想から大きく方向転換しており、長期的な資金管理が重要な時期にある。
その状況で、直近シーズンに平均8.1得点、3ポイント成功率36.0%だったトレントJr.選手へ4年6400万ドルを投じたことから、「純粋な戦力評価だけでは説明しにくい」と指摘されている。
▪️過去にも存在したNBA最大級の契約問題
NBAでは過去にも、同様の疑惑が大きな問題となった例がある。
2000年にはミネソタ・ティンバーウルブズがジョー・スミス選手との契約をめぐり、将来的な高額契約を約束した「密約」が発覚。
リーグは重大なルール違反と判断し、球団には高額罰金、ドラフト1巡目指名権の大量剥奪、関係者への処分など厳しい制裁が科された。
今回のバックスのケースについても、NBAの調査で意図的なルール回避が認定されれば、同様に重い処分が下される可能性がある。
▪️NBAが守ろうとしているものは「競争の公平性」
今回の問題は、単純に「選手が高額契約を得た」という話ではない。
NBAが最も重要視しているのは、30球団が同じルールの下で競争できる環境を守ることだ。
もし一部のチームだけが、将来の報酬を裏で保証することでサラリーキャップ制度を有利に利用できれば、リーグ全体の戦力バランスが大きく崩れる可能性がある。
NBAの調査によって、今回の契約が正当な交渉の結果だったのか!?
それとも制度の抜け道を利用したものだったのか!?
今後の正式発表が待たれる。

