「フェザー級は死にかけている」 UFCに現れた新たな破壊者 キルギスの無敗ファイターが“伝説級サブミッション”で世界へ名乗り
【©️UFC】
UFCフェザー級に また一人の危険な挑戦者が登場した。
2026年6月に米ネバダ州ラスベガスで開催された『UFC Fight Night: Kape vs. Horiguchi 2』。堀口恭司選手とマネル・ケイプ選手による注目のフライ級戦がメインカードで取り扱われた一方で、格闘技関係者の視線を強く引きつけたのは、フェザー級でUFCデビューを飾ったムルタザリ・マゴメドフ選手だった。
26歳のキルギス人ファイターは、元K-1ファイターとしても知られるメルシック・バグダサリアン選手を相手に圧巻の一本勝ち。しかも決着となったのは、UFC史上でも極めて珍しい「ツイスター系サブミッション」だった。
▪️世界が注目した“異質なフィニッシュ能力”
マゴメドフ選手の価値は、単なる無敗記録にとどまらない。
今回の勝利によって戦績は11戦11勝。
そのすべてをフィニッシュで終わらせている。
近年の総合格闘技では、トップレベルになるほど5R25分間でも決定的なシーンは少なく判定決着が増加傾向にある。
対戦相手の実力差が縮まり、リスク管理が重視されるからだ。
そのなかで全試合フィニッシュの数字は異例だ。
しかもマゴメドフ選手は打撃偏重のファイターではない。
5つのKO勝利と5つの一本勝ちを記録し、あらゆる局面で試合を終わらせる能力を持つ。
今回の試合でもその総合力が発揮された。
序盤こそバグダサリアン選手の鋭い打撃に対応を迫られたものの、タイミングを見極めてテイクダウンに成功。バックコントロールからボディトライアングルを完成させると、相手の動きを利用する形で特殊なツイスター系サブミッションへ移行した。
極めた瞬間、会場は騒然となった。
その技術的完成度の高さはもちろん、「この形を狙っていた」と本人が試合後に明かしたことも驚きを呼んだ。
偶然生まれた一本ではなく、計画的に遂行されたフィニッシュ。
長年磨き上げてきた武器を、世界最高峰の舞台で完璧に再現したのである。
▪️日本でお馴染みのRIZINシェイドゥラエフだけではない キルギス格闘技の新時代
近年、中央アジア勢の台頭は総合格闘技界における大きな潮流となっている。
その象徴的存在が、RIZINフェザー級王者ラジャブアリ・シェイドゥラエフ選手だ。
無敗記録と圧倒的なフィニッシュ率を誇り、日本でもRIZINの舞台で絶大なインパクトを残している。
しかし、今回のマゴメドフ選手の登場によって、「キルギス最強候補」は一人ではないことを世界に向けて証明した。
両者は過去に同国で合同練習を行った経験を持つとされるが、その共通点は競技レベルの高さだけではない。
レスリング、グラップリング、打撃を高次元で融合させる現代型ファイターでありながら、見せ場を必ずつくるフィニッシュへの執着を失わない点にある。
中央アジアの新世代は、勝つだけではなく倒し切ることを前提としている。
それこそが世界中の団体が彼らに注目する理由だ。
「フェザー級は死にかけている」発言の真意
試合後、マゴメドフ選手は大胆な言葉を口にした。
「フェザー級はほぼ死にかけている。自分がこの階級を再び輝かせたい」
一見すると挑発的な発言にも聞こえる。
だが、その背景には現在のUFCフェザー級が抱える構造的な問題がある。
長年にわたりスター選手たちが階級を支配してきた一方、新世代の突き上げが十分とは言えず、かつてのような群雄割拠のストーリ性のある選手のキャラ立ちの状況は薄れつつある。競争が停滞すれば、階級全体の注目度も下がる。
だからこそマゴメドフ選手は、自らを新時代の起爆剤として位置づけての発言だったのだろう。
もちろん、UFCでの実績はまだ1試合に過ぎない。
しかし、デビュー戦で歴史的な一本勝ちを収め、11戦無敗・全試合フィニッシュという異例の実績を携えている事実はとてつもなく大きなインパクトだ。
シェイドゥラエフ選手がRIZINで旋風を巻き起こしている今、世界最高峰のUFCではマゴメドフ選手がその存在感を先に示して、大きなうねりとなってUFCの下半期を盛り立ててくれそうだ。
【文:高須基一朗】


