「倒し屋」YURA選手を完封した原口健飛選手の“技術”…RISEで示した「日本キック界トップ」の実力差

2026.6.6

「勢い」だけでは、世界レベルには届かない。

6月6日に行われた『GLORY×RISE LAST FEATHERWEIGHT STANDING TOURNAMENT』準決勝で、原口健飛選手がYURA選手を判定3-0で下し、決勝進出を決めた。

BreakingDown出身として注目を集め、圧倒的な攻撃力で勝ち上がってきたYURA選手。しかしこの日のリングで際立ったのは、原口選手の“当てさせずに当てる”高度なディフェンス技術と試合運びだった。

派手なKOではない。それでも、この一戦は現在の日本キックボクシング界における「経験」と「技術」の差を鮮明に映し出す内容となった。


 

試合開始直後から、原口選手の冷静さは際立っていた。

サウスポースタイルから細かくフェイントを織り交ぜ、YURA選手の踏み込みに的を絞らせない。右カーフ、左インロー、左ハイを散らしながら距離を支配し、相手に「打たせる形」を作らせなかった。

一方のYURA選手は、得意の右ストレートを軸に前へ圧力をかける。しかし原口選手は、ヘッドスリップやダッキングを駆使して致命打を寸前で回避。近距離でも慌てることなく、カウンター気味に右フックや左ストレートを返していく。

特に印象的だったのは、“危険地帯”での落ち着きだ。

YURA選手は2ラウンド、ノーモーションの右ストレートを何度かヒットさせた。

実際、会場がどよめく場面もあった。

しかし原口選手は被弾直後に即座に連打を返し、主導権を渡さない。

単なる被弾では終わらせず、

「打ち返すことで流れを切る」高度な試合運びを見せた。

3ラウンドに入ると、差はさらに明確になる。

YURA選手が強引に距離を潰そうとすると、原口選手は細かい連打とクリンチでリズムを分断。空振りを誘っては左フックを返し、左ミドルから左ハイ、さらに右フックへと滑らかにつなげていった。

「倒す」ための攻撃ではなく、「崩す」ための攻撃――。

その組み立ての巧さこそ、長年トップ戦線で戦ってきた原口選手の真骨頂だった。

YURA選手はBreakingDownで知名度を高めた後、RISEでも連続KO勝利を重ね、一気にスターダムへ駆け上がってきた。勢いと爆発力は間違いなく本物だ。だが、この日は“世界基準”の壁に直面したと言っていい。

原口選手は、GLORY世界王者ペットパノムルン選手とも3度対戦し、世界のトップファイターたちと拳を交えてきた。その経験値は、単なるキャリアの長さではない。駆け引き、距離感、呼吸、相手の重心移動を読む感覚――すべてにおいて、リング上での成熟度が違った。

試合後、原口選手はマイクを握り、「自分もYURAくんみたいな時期があった」と語った。

新世代へのリスペクトを見せながらも、「なんとか前に立ちはだかれてよかった」と続けた言葉には、自らが“壁”であるという自負ものぞかせた。

そして最後には、静かにこう言い切った。

「2戦目、優勝します」

その言葉には、単なるトーナメント制覇への意欲以上に、“日本キック界の中心はまだ譲らない”という覚悟が込められていた。

トーナメント決勝戦は、この後の19時ごろに開始予定


【文:高須基一朗】