上場企業トップが仕掛けた“異例の会見”の真意─松田元氏が語ったジョイントベンチャーと「Web3×格闘技」再編の全貌、そして平本蓮選手が担う“新時代のヒーロー像”
【画像左から=クロフォード氏 abc株式会社 松田元代表 平本蓮選手】
2026年5月1日、格闘技界にとって象徴的な一日となった。都内では複数の大型記者会見が同時多発的に行われ、ボクシング界の頂点に立つ井上尚弥選手と中谷潤人選手の前日公開計量、そしてキックボクシング界のカリスマである武尊選手の引退会見が大きな注目を集めていた。
その一方で、もう一つの“異質な会見”が静かに、しかし確かな存在感を放っていた。
仕掛けたのは上場企業トップの松田元氏。
都内の企業オフィスで開かれたその場に登壇したのは、ボクシング3階級制覇王者のテレンス・クロフォードと、SNS時代を象徴する人気ファイターの一人である平本蓮選手である。
一見すると対談形式のシンプルな会見。
しかし、その本質は従来の格闘技イベントとは一線を画していた。
語られたテーマは「試合」ではなく「市場」。
すなわち、格闘技ビジネスそのものの再設計である。
■「対戦カード」ではなく「収益構造」を語る
会見冒頭、クロフォードはこう語った。
「この機会をもらえたことは光栄だ。ボクシングを通じてビジネスパートナーシップを築きたい」
ここで提示されたのは、アメリカで成熟したPPV(ペイ・パー・ビュー)モデルを、日本市場へ本格的に導入する点だった。従来、日本ではスポンサーや放映権に依存してきた格闘技興行に対し、“視聴者が直接価値を支払う”構造への転換を図る狙いがある。
さらに注目すべきは、その実現手段として提示された「ジョイントベンチャー」だ。
複数の競技団体、プロモーター、テクノロジー企業、さらには海外資本を横断的に束ね、統合的に収益を創出する“共同事業体”を形成する。単発イベントではなく、継続的に価値を生み出すプラットフォーム構築を見据えた枠組みである。
その中核に据えられたのが平本蓮選手だ。
圧倒的なSNS発信力を背景に、ファンとの距離を限りなく縮めてきた彼は、もはや単なる競技者ではない。「視聴者を動かすメディア」として機能する存在として位置付けられている。
会場にはRIZIN関係者をはじめ、ボクシング、キックボクシングの関係者が一堂に会した。競技の垣根を越えた顔ぶれは、この取り組みが“業界横断型ジョイントベンチャー”であることを強く印象付けた。
■松田元氏が語った「ジョイントベンチャー×ブロックチューン」の核心
更に会見の核心にあるのが、松田氏が掲げる
ジョイントベンチャーとブロックチューンの融合である。
松田氏は壇上で次のように明言した。
「単独の団体や企業で完結する時代ではない。競技、配信、テクノロジー、金融、それぞれの強みを持ち寄り、一つのエコシステムとして再構築する必要がある。今回の取り組みは“イベント”ではなく“事業”。長期的に価値を生み出すジョイントベンチャーとして設計している」
この発言が示すのは、従来の“興行単位”のビジネスからの脱却だ。
試合、大会ごとに完結するモデルではなく、
継続的に収益を生む“産業構造”への転換が意図されている。
その基盤となるのが、Web3の概念を取り入れたブロックチューン構想でもある。
■Web3×ジョイントベンチャーによる再設計
・トークン化(Tokenomics)
選手や試合、さらには事業そのものをデジタル資産として可視化。ファンや投資家が関与できる新たな価値循環を創出する。
・PPVの進化
単なる視聴課金にとどまらず、NFTや限定体験、コミュニティ参加権を組み合わせた“体験型収益モデル”へと進化。
・共同運営モデル
複数の団体・企業が参画し、リスクと利益を共有。競争から協調へという構造転換を促す。
・グローバル資本との接続
松田氏はニューヨーク市場への展開にも言及。格闘技IPの金融化という新たな可能性を示唆した。
■「10ミリオンファイター」を“設計する”時代へ
松田氏は会見で、極めて踏み込んだ発言を残している。
「我々は、このジョイントベンチャーを通じて“10ミリオンファイター”を生み出す」
「それは偶然ではなく、設計によって実現するものだ」
PPVで1000万ドル規模を稼ぐファイターを“意図的に創出する”―
この発想は、従来のスター像を根底から覆すものだ。
これに対しクロフォードは、
「この会見で、その半分はすでに達成している」
と応じ、構想の現実性に自信をのぞかせた。
■平本蓮という“新時代のカリスマ”
平本選手は「尊敬するアスリート(クロフォード)と時間を共有できて光栄」と語り、終始リラックスした様子を見せた。
しかし松田氏は、その価値をより明確に言語化する。
「平本選手は単なる選手ではない。コミュニティを動かす“起点”だ。ジョイントベンチャーの中核を担う存在になる」
SNSを起点に話題を創出し、ファンと直接つながる―そのスタイルは、まさにWeb3時代における“分散型影響力”の体現である。競技実績だけでなく、影響力そのものが価値となる時代において、彼は“新たなヒーロー像”を提示している。
■UFCへの道、その先にある“統合市場”
会見では将来的なUFC参戦の可能性にも言及された。RIZINで実績を積み、グローバル市場へ進出するという流れは従来と変わらない。
しかし今回の構想では、そのプロセス自体がジョイントベンチャーの価値向上に組み込まれる。選手のキャリアそのものが“投資対象”として機能する設計だ。
クロフォードは平本選手に対し「まずは復帰戦に集中してほしい」と現実的な助言を送りつつ、その先に広がる可能性にも理解を示した。
■同日多発した会見が示す“転換点”
この日、東京で行われた三つの会見
・井上尚弥選手 vs 中谷潤人選手=ボクシング世界戦の頂点
・武尊選手=引退会見での一時代の終焉
・クロフォード×平本蓮選手×松田元氏=ビジネスの再定義
それぞれは異なる文脈を持ちながら、ひとつの方向を指し示している。
それは、格闘技が日本で大きく盛り上がる“競技”から“産業”へと進化する転換点にあるという現実だ。
松田氏は最後にこう言い切った。
「格闘技は、もっと大きな産業になれる。そのための“仕組み”を、いま作っている」
ジョイントベンチャーとブロックチューン構想が現実のものとなるかは未知数だ。だが確実に言えるのは―格闘技ビジネスのルールと定義は、この日本が世界の中心となってすでに書き換えられ始めているという事だ。
【文:高須基一朗】





