UFC王者ヴォルカノフスキーが 38歳で無敗のイヴロイエフ撃破に自信「キャリア最高のパフォーマンスを見せる」ゲイジーとの引退試合構想も明かす

2026.10.22

UFC世界フェザー級王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキー選手が、10月24日(日本時間)にアラブ首長国連邦・アブダビで開催される「UFC 333」のメインイベントで、無敗の挑戦者モフサル・イヴロイエフ選手を迎え撃つ。

38歳の王者に対し、挑戦者はMMA20戦全勝、UFCでも10連勝を記録する32歳。

経験豊富な王者と勢いに乗る無敗の挑戦者が、フェザー級の頂点を懸けて激突する。

 

試合を前にしたメディアdayの公式インタビューで、ヴォルカノフスキー選手は自身のコンディションに強い手応えを示した。「スタイル的に俺にはすごくいい組み合わせ」とイヴロイエフ選手への自信を語り、「38歳で、どうしてこんなことができるんだ?」と周囲を驚かせるような試合をすると宣言。さらに、ライト級王者ジャスティン・ゲイジー選手とのスーパーファイトについても言及し、条件が整えば互いの引退試合として実現させる構想を明かした。

 

▪️無敗の挑戦者を迎える38歳の王者 問われる経験と身体能力

「UFC 333」のメインイベントは、5分5ラウンドで行われるUFC世界フェザー級タイトルマッチ。王者ヴォルカノフスキー選手はMMA28勝4敗、UFCでは15勝3敗の戦績を誇る。一方、挑戦者イヴロイエフ選手はMMA20勝無敗、UFC10連勝中という実績を引っ提げ、初の世界王座獲得を目指す。

ヴォルカノフスキー選手は2023年、イスラム・マハチェフ選手とのライト級タイトルマッチで判定負け。同年10月の再戦ではKO負けを喫し、2024年2月にはイリア・トプリア選手にフェザー級王座を奪われた。しかし、2025年4月にディエゴ・ロペス選手との王座決定戦を制して王座に返り咲くと、2026年1月の再戦でも判定勝ち。再びフェザー級の頂点に立ち、王者として挑戦を受ける立場に戻ってきた。

9月29日に38歳を迎えた王者にとって、今回の防衛戦は年齢と実力をめぐる議論に答える機会でもある。キャリアを重ねた選手が若い挑戦者を相手にどこまで高いパフォーマンスを維持できるのか。その点にも注目が集まる。

対するイヴロイエフ選手は、20戦全勝という無敗記録が示す通り、安定感のある試合運びが持ち味だ。戦績の内訳はKO・TKO勝ちが3試合、一本勝ちが4試合、判定勝ちが13試合。UFCでの10勝はいずれも判定によるもので、相手に試合を決めさせず、ラウンドを通じて着実に優位を築く能力が際立っている。

2026年3月の前戦では、レローン・マーフィー選手と5ラウンドの接戦を展開。ローブローによる減点を受けながらも、組み技と打撃を組み合わせ、判定2対0で勝利した。苦しい局面でも冷静さを失わず、終盤まで運動量を維持できる点は、王者にとって警戒すべき要素となる。

 

▪️組み技を軸にするイヴロイエフ 王者は距離と防御で対抗

両者の戦いを左右する要素の一つが、レスリングを中心とする組み技の攻防だ。

イヴロイエフ選手は身長170センチ、リーチ184センチ。身長168センチ、リーチ182センチのヴォルカノフスキー選手を数値上では上回る。1ラウンド当たりのテイクダウン数などの指標でも組み技の強さを示しており、相手をケージ際やグラウンドに持ち込めれば、自身のペースをつくりやすい。

ただし、王者も組み技への対応力に優れる。ヴォルカノフスキー選手は相手との距離を管理する能力に長け、打撃では構えを切り替えながら攻撃の角度を変えられる。テイクダウンを狙う相手に対し、どこで打撃を当て、どのタイミングで組みを切るのか。その判断が防衛戦の重要なポイントになりそうだ。

イヴロイエフ選手にとっては、王者の距離感を崩し、得意の組み技を継続できるかが鍵となる。一方のヴォルカノフスキー選手は、テイクダウンを許したとしても立ち上がり、再び打撃戦に持ち込む展開を想定している。

経験を武器にする王者と、無敗の勢いを持つ挑戦者。単純な年齢差だけでは測れない技術のぶつかり合いが予想される。

 

▪️「38歳で、どうしてこんなことができるんだ?」 王者が語る自信の根拠

インタビューで、ヴォルカノフスキー選手は自身の年齢が試合の評価に影響していることを認めつつ、イヴロイエフ選手との相性には確かな手応えがあると語った。

「俺が試合をするたびに、みんなは『衰えているんじゃないか』『今回はどんな姿を見せるんだろう』と気にするだろうね。それは当然だし、そう考えるのも自由だ」

そのうえで、試合後には自身のキャリアを代表するようなパフォーマンスだったと評価されることを期待しているという。

「試合後には『ヴォルカノフスキーのキャリアでも屈指のパフォーマンスだった』という見出しが出ると思っている。『38歳で、どうしてこんなことができるんだ?』ってね。俺はそういう試合をするつもりだ」

王者は、イヴロイエフ選手を軽視しているわけではないと強調する。むしろ、挑戦者の長所を理解したうえで、自分の技術や経験が生きる組み合わせだと分析している。

「コンディションは抜群だし、戦う準備はできている。ただ勝つだけじゃなく、すごい勝ち方をするつもりだ」

年齢を重ねたことで練習方法には変化が生まれたものの、瞬発力や動きの鋭さには問題を感じていないという。栄養管理やリカバリーを含め、チームのサポートを受けながら練習の質を維持してきたことも、自信につながっている。

「昔とまったく同じ練習ができるかといえば、そこは変わったかもしれない。でも、今も瞬発力はあるし、ミット打ちでも動きはシャープだ。練習の強度は必要だけど、練習量まで昔と同じにする必要はない」

経験に頼るだけでも、若い頃と同じ身体能力を追い求めるだけでもない。自身の状態に合わせて調整を重ねながら、勝利に必要な準備を整えてきたという考えだ。

 

▪️マハチェフ、トプリアへの敗戦を経て「今が一番いい姿を見せられる」

ヴォルカノフスキー選手は、過去にマハチェフ選手やトプリア選手に敗れたことで、実力を疑問視する声が上がったことも振り返った。しかし、その後のロペス選手との2試合では、いずれも判定勝ちを収め、王者としての実力を改めて示している。

今回の試合でキャリア最高の姿を見せられるのかと問われると、王者は年齢による変化を否定することなく、現在の自分に自信を示した。

「22歳の頃とまったく同じだなんて、みんなに嘘をつくつもりはない。でも、今も抜群のコンディションで、瞬発力も十分にある。ファイトIQがあることも、みんな分かっているだろ。それなら、昔と同じかどうかは問題じゃない。これまでで一番いい姿を見せられると本気で思っている」

さらに、イヴロイエフ選手の攻撃についても、自分なら対応できるとの見方を示した。

「彼には厄介なところがたくさんある。でも、俺なら対応できるものばかりだと思っている。たとえ倒されても、俺は笑顔で立ち上がる。そしてまた、相手の目の前に戻るんだ」

無敗の挑戦者が得意とする展開に引き込まれず、冷静に対応できるか。王者の言葉が実際の試合でどこまで体現されるかが見どころとなる。

 

▪️ゲイジーとのスーパーファイトは引退試合が条件か

インタビューでは、ライト級王者ジャスティン・ゲイジー選手との対戦構想にも話題が及んだ。

ヴォルカノフスキー選手は、フェザー級での防衛を優先する姿勢を示しながらも、ライト級への挑戦を検討するなら、単に別階級のタイトルを求める形ではなく、特別な意味を持つ試合にしたいと説明した。

「俺は、ただタイトルマッチをやらせてくれと要求するタイプじゃない。ライト級には挑戦にふさわしい選手がたくさんいるからね。ただ、俺がその階級の状況にうまく収まるとしたら、こういう形があるんじゃないかと考えたんだ」

その構想とは、両者が王者として対戦し、その一戦を互いの引退試合にするというものだ。

「『これをお互い最後の試合にしよう。王者同士のスーパーファイトだ』という形だね。2人ともそれで引退して、その後はそれぞれの階級が動いていけるようにする。それなら階級を停滞させることもない」

複数階級の王座を狙うために長期間ベルトを保持し続けるのではなく、特別な一戦を最後に現役生活を終え、その後は各階級の選手たちに王座争いの機会を委ねる。ヴォルカノフスキー選手は、そうした形であれば実現の可能性があると考え、提案したという。

ただし、これは現時点で合意や正式決定が発表された対戦ではなく、あくまで王者自身が示した構想だ。今回の防衛戦を終えた後、具体的な交渉に進むかどうかも明らかになっていない。

フェザー級王座を守りながら、キャリアの最終章にどのような試合を描くのか。ヴォルカノフスキー選手の発言は、今後のUFCの階級戦線を考えるうえでも興味深い。

 

▪️「記録よりも、困難を乗り越えることに意味がある」

UFC史上の偉大なファイターとして、トップ3に入る存在だと思うかと問われたヴォルカノフスキー選手は、自ら評価を下すことには慎重な姿勢を示した。

「その判断は、みんなに任せるよ。ベルトや防衛回数、数字には、それほどこだわっていない。俺はただ、自分に挑戦して、その課題を乗り越えるのが好きなんだ」

年齢を重ねても王座を争い、過去の敗戦を経て再び頂点に立つ。その歩みそのものが、自身にとって大きな意味を持っているという。

「自分を疑っている人たちに、間違っていたと証明できるのも、もちろん気分がいい。でも、自分に何が成し遂げられるのかを示すことの方が、若い世代にも刺激を与えられると思う」

今回のイヴロイエフ戦は、無敗の挑戦者が初の王座獲得を果たすのか、

それとも38歳の王者が経験と技術で再び疑問の声を封じるのかを占う一戦だ。