C・ロナウドに暫定出場停止処分 ポルトガル連盟の規律規定第160条を読み解く 罰金18万円 最長6カ月の制裁リスクと泥沼化の可能性

2026.10.11

【©️ALNASSR】

ポルトガル代表の主将クリスティアーノ・ロナウド選手(アル・ナスル)が、代表合宿を途中離脱した問題で、ポルトガルサッカー連盟(FPF)から暫定的な出場停止処分を受けた。連盟は2026年10月10日、同選手に対する懲戒手続きの開始を公表。問題は、監督との関係をめぐる騒動から、代表活動に関する規律違反が成立するかどうかを判断する正式な手続きへと進んでいる。

焦点となるのは、FPFの規律規定第160条だ。

同条は、正式に招集された選手が正当な理由なく代表チームの練習や試合、その他の代表活動を欠席・途中離脱した場合、1~6カ月の出場停止を科すと定めている。プロ選手については、これに加えて5~10UCの罰金が規定されており、現地報道によれば金額は510~1,020ユーロ、日本円で約9万~18万円となる。

ただし、これらは規定上の制裁の範囲であり、ロナウド選手に対する最終処分が確定したわけではない。暫定措置と最終処分の違いに加え、離脱に正当な理由があったか、本人の謝罪が処分判断にどう影響するか、決定に対して不服申し立てが行われるかなど、今後の手続きには複数の争点が残されている。


 

■ 第160条第1項が定める制裁 出場停止1~6カ月と罰金510~1,020ユーロ

FPFが公表している2025-26シーズンの規律規定第160条は、「代表チームの活動への不参加または途中離脱」を対象としている。第1項では、正式に招集された選手が正当な理由なく代表チームの練習、試合、その他の活動、またはFPFやポルトガルを代表するスポーツ活動から離脱・欠席した場合、1~6カ月の出場停止を科すと規定している。

さらに、プロ選手については付加的な罰金も定められている。現地報道が紹介した金額は、5~10UCに相当する510~1,020ユーロだ。

日本円に換算すると、1ユーロ=176円として約8万9,760~17万9,520円となる。



制裁項目 規定上の範囲 日本円の概算
出場停止 1~6カ月 金銭換算の対象外
罰金の最低額 510ユーロ 約9万円
罰金の最高額 1,020ユーロ 約18万円


※円換算は参考値。実際の金額は為替レートによって変動する。

 

この規定で重要なのは、試合に出場しなかったこと自体ではなく、正式に招集された選手が正当な理由なく代表活動を欠席・離脱したかどうかだ。監督の起用方針に不満があったとしても、それだけで代表合宿を離れる行為が正当化されるとは限らない。

一方、離脱に至るまでのやり取りや、事前に許可があったかどうかなどは、事実認定に関係する可能性がある。条文の適用には、行為があったという事実だけでなく、「正当な理由なく」という要件を満たすかどうかの判断が必要となる。

 

■ 第160条第2項は自動的な暫定出場停止を規定

第160条第2項では、代表活動への不参加または途中離脱があった場合、規定に従って選手に自動的な暫定出場停止が適用されることを定めている。

今回のロナウド選手に対する暫定措置も、この規定と関係するものだ。現地報道によれば、同選手は代表合宿を離れた時点で暫定的な出場停止の対象となり、その後、FPFが懲戒手続きを正式に開始した。

ただし、暫定出場停止と最終的な懲戒処分は同じではない。

暫定措置は、調査と処分決定に先立つ段階で適用されるものであり、それ自体が最終的な違反認定や制裁内容の確定を意味するわけではない。最終的な処分については、適用規定に該当する行為があったか、正当な理由が認められるか、どの程度の制裁が相当かを検討する必要がある。

 

■ 第160条第3項 所属クラブの指示だけでは免責されない

第160条第3項では、所属クラブから明示的な指示を受けていたとしても、それだけでは代表活動を欠席・離脱する正当な理由にならないと定めている。

例外として、FPFが代表チームの親善試合の日程設定に関して守ると約束した規則を遵守しなかった場合が挙げられている。

この規定は、代表チームへの招集と所属クラブの事情が衝突した際、選手がどのような義務を負うかという問題に関係する。ただし、今回のロナウド選手の離脱について、所属クラブからの指示があったと確認されたわけではない。今回の事案にこの例外が適用されると判断できる材料も、現時点では示されていない。

なお、2025-26シーズンの規律規定で確認できる第160条は、上記の3項で構成されている。

病気や負傷を理由とする欠席の医療審査など、別の規定や旧版に見られる手続きを、第160条の現行条文そのものとして扱わないことも重要だ。

 

■ 謝罪すれば罰金は半額になるのか 減軽には規定上の条件が必要

ロナウド選手は10月6日、自身のSNSに声明を投稿し、代表合宿を離れたことについてチームメートに謝罪した。また、今回の行動に対する処分はFPFが判断すべきだとの考えを示し、代表主将としての責任を受け入れる姿勢を明らかにしている。

この対応が処分判断に影響する可能性はある。ただし、第160条自体に、謝罪をすれば罰金が自動的に半額になるという規定はない。

現地のスポーツ法に関する解説では、事実を全面的かつ留保なく認め、その自認に疑いがない場合、別の規定に基づいて制裁の限度が軽減される可能性が指摘されている。しかし、SNSで謝罪したことと、規律手続き上の減軽要件を満たすことは同じではない。

今回の声明が規定上の正式な自認として扱われるのか、軽減規定の適用条件を満たすのかについては、実際の手続きと判断を確認する必要がある。

また、ロナウド選手は代表チームのキャプテンを務める立場にある。本人もその責任に言及しているが、主将であることが処分を必ず重くする、あるいは世界的なスター選手であることが処分を軽くすると断定できるわけではない。

最終的には、規律規定上の評価基準に照らし、行為の経緯や本人の対応などがどのように判断されるかが重要となる。

 

■ 泥沼化する可能性も 想定される4つのケース


ケース1:正当な理由が認められず、出場停止と罰金が科される

調査の結果、代表活動からの離脱について正当な理由が認められず、規律違反が成立すると判断された場合、規定に沿った出場停止と罰金が検討される可能性がある。

規定上の範囲は1~6カ月の出場停止と、プロ選手に対する510~1,020ユーロの罰金だ。ただし、これらは制裁の幅であり、最長期間や最高額がそのまま適用されると決まったわけではない。


ケース2:事実の認容などが考慮され、処分が軽減される

本人が行為を認め、謝罪していることが情状として考慮される可能性はある。

ただし、軽減の可否は、適用される規定が定める条件や手続きで確認された事実によって決まる。公の場で謝罪したという事実だけで、罰金や出場停止が自動的に半減すると結論づけることはできない。


ケース3:離脱の経緯や事前の許可が争点となる

今回の問題では、監督との間で出場機会をめぐる認識の違いがあったと報じられている。

ロナウド選手側が説明する経緯と、監督や連盟側の認識が異なる場合、事前の許可や合意があったのか、離脱にどのような事情があったのかといった点が争点になる可能性がある。

ただし、起用方針をめぐる対立と、代表活動から離脱することの規律上の評価は別の問題だ。具体的な事情を確認したうえで、正当な理由があったかどうかを判断する必要がある。


ケース4:不服申し立てなどで問題が長期化する

最終処分の内容に選手側が納得できない場合、適用規定に従って不服申し立てを行う展開も考えられる。

その場合、事実認定、規定の適用、処分の相当性、手続きの適正さなどが争点となり得る。審査が続けば、問題の解決まで時間を要する可能性がある。

もっとも、今回の案件でどのような不服申し立てが認められるのか、実際に申し立てが行われるのかは、現時点では確定していない。手続きが長引くと決まったわけでもない。


 

■ 罰金だけでは終わらない可能性 クラブ公式戦への影響は処分の範囲次第

今回の処分を考えるうえでは、出場停止がどの活動に及ぶのかも重要な論点となる。

ロナウド選手はサウジアラビアのアル・ナスルに所属しているため、ポルトガル代表での問題がクラブでの公式戦に影響するのかという点にも関心が集まる。

しかし、代表活動に関する規律違反に対して出場停止が規定されていることだけで、アル・ナスルでの試合にも自動的に出場できなくなると断定することはできない。実際の処分の対象範囲や、他の競技会での効力については、適用規定と最終決定の内容を確認する必要がある。

また、今回の連盟による懲戒処分と、所属クラブとの契約に基づく措置、民事上・刑事上の責任は別の問題だ。代表活動からの離脱が直ちに刑事責任を生じさせるわけではなく、別の法的根拠や事実関係が必要となる。