RIZIN=榊原CEOが描く「ハワイから北米」への新章 格闘技だけではない 日本エンタメの新たな架け橋に―アソビシステムもハワイFESを発表

2026.9.1

RIZINが、いよいよハワイを起点とした北米戦略に踏み出そうとしている。

2026年9月10日に京セラドーム大阪で『超RIZIN.5 浪速の超復活祭り』を控えるRIZINの榊原信行CEOが、公式YouTubeチャンネル『Preparation』の中で、

ハワイ大会の開催構想を明らかにした。

そこには単なる海外大会の開催という以上の意味がある。

日本の格闘技を海外へ届ける。その舞台として榊原CEOが選択肢に挙げたのが、

米国本土の巨大都市ではなく、ハワイだった。

そして現在、ハワイに目を向けているのはRIZINだけではない。

日本のポップカルチャーを世界へ発信してきたアソビシステムも、2027年3月にホノルルで「ASOBIEXPO HAWAII 2027」を開催すると発表。

きゃりーぱみゅぱみゅ、新しい学校のリーダーズ、

FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、CUTIE STREETらが出演予定となっている。

格闘技と音楽、アイドル、ファッション。

一見すると別々に見える二つの動きが、

いま「ハワイ」という場所で交差する可能性も大いにありそうだ。


 

■RIZINが見据える「北米への入口」

榊原CEOは今回の米国出張で、PFLのジョン・マーティンCEOやAJ・マッキーらと面会。その後、ハワイへ移動し、ハワイの格闘技興行を長年支えてきたTJ・トンプソン氏の案内で、ホノルルのブレイズデル・センターを視察した。

同会場は、かつてBellatorをはじめとする格闘技イベントが開催されたハワイを代表するアリーナだ。

榊原CEOは、

「RIZINの北米1発目はハワイで大会をやれるのが一番我々的にも、全く知らないところでスタートするよりいい」

という趣旨の考えを示している。

これは極めて興味深い発想だ。

米国市場へ進出する場合、ニューヨーク、ロサンゼルス、ラスベガスなど、

巨大都市を最初の舞台に選ぶのが一般的だ。

しかしRIZINにとってハワイは、

日本との歴史的・文化的なつながりが深く、日本人選手を受け入れる土壌もある。

いきなり「米国市場」に飛び込むのではなく、

「日本と米国の間にあるハワイ」を入口にする。

そこにRIZIN独自の海外戦略が見えてくる。

 

■ハワイには、日本格闘技の歴史がすでにある

ハワイは決してRIZINにとって未知の土地ではない。

かつてK-1が開催されたアロハスタジアムでは、世界的な格闘技イベントが行われ、日本の格闘技文化がハワイに届けられてきた。

2008年にはK-1がスタン・シェリフ・センターでも大会を開催。

さらに、ハワイ出身の曙をはじめ、日本の格闘技界とハワイには長い交流の歴史がある。

そして現在、ハワイ出身のスターとして世界的な知名度を持つのが

マックス・ホロウェイだ。

日本の格闘技ファンにとっても、ハワイは単なる観光地ではない。

世界と日本をつなぐ格闘技の接点として、

すでに豊かな歴史を持っている場所なのである。

 

■最大の課題は「会場」

一方で、ハワイ大会の実現には現実的な課題もある。

榊原CEOが視察したブレイズデル・センターは、現在のハワイで大規模な格闘技興行を行う際の有力な選択肢となる一方、施設そのものは決して新しいものではない。

榊原CEOも現地を視察し、設備面について率直な感想を口にしている。

しかし、ホノルルには大規模な屋内アリーナの選択肢が限られている。

かつてK-1などが使用したアロハスタジアムは2020年に閉鎖され、

現在は新スタジアム建設へ向けた動きが進んでいる。

つまり、ハワイで格闘技イベントを開催する場合、「やりたい場所」ではなく「開催できる場所」をどう確保するかという問題が常について回る。

RIZINがブレイズデル・センターに注目する背景には、

こうしたハワイ特有の事情もある。

 

■RIZINルールをどうするのか

もう一つの大きなテーマが競技ルールだ。

RIZINは、PRIDEから受け継いだ日本独自の格闘技文化を大切にしている。

一方、米国では州ごとにアスレチックコミッションによる規制が存在し、

一般的にはユニファイドルールが基準となる。

RIZINが日本で採用している独自ルールを、そのまま米国で実施できるとは限らない。

榊原CEOも、現地のアスレチックコミッションとの調整や、予算、プロダクションコスト、会場スケジュールなどを課題として挙げている。

つまり、RIZINハワイ大会の実現は、単に会場を押さえれば完成するものではない。

「RIZINらしさ」をどこまで海外で実現できるのか。

その調整そのものが、北米進出の第一歩になる。

 

■それでも「ハワイだからこそ」できることがある

では、なぜハワイなのか。

その答えの一つが、人と文化のつながりだ。

ハワイには日系コミュニティーが根付き、日本文化への親和性も高い。

さらに日本からの旅行者にとっても、ハワイは長年にわたって特別な存在であり続けてきた。

日本人選手がハワイのリングに上がる。

ハワイ出身の選手が日本のRIZINに参戦する。

そして日本からファンが現地へ足を運ぶ。

大会そのものが、日本とハワイを往来する「文化交流の場」になり得る。

榊原CEOが、日本のファンにも早い段階から告知し、ハワイへ足を運んでもらいたいという趣旨の発言をしているのも象徴的だ。

RIZINにとってハワイ大会は、海外で開催する一大会ではない。

「日本のファンが海外で日本のエンターテインメントを楽しむ」という新しい観戦文化を生み出す可能性も秘めている。

 

■そして、ハワイに注目するのはRIZINだけではない

ここで見逃せないのが、アソビシステムの動きだ。

アソビシステムは2027年3月、ホノルルで「ASOBIEXPO HAWAII 2027」を開催する。

出演するのは、きゃりーぱみゅぱみゅ、新しい学校のリーダーズ、FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、CUTIE STREETなど、日本を代表するポップカルチャーのアーティストたち。

単なる海外ライブという枠を超え、日本の音楽、アイドル、ファッション、食、カルチャーを含めた「日本のポップカルチャーそのもの」をハワイから発信するイベントへと進化している。

これは非常に象徴的な動きだ。

RIZINが「日本の格闘技」をハワイへ。

アソビシステムが「日本のポップカルチャー」をハワイへ。

ジャンルは違っても、その先にある目的は共通している。

日本のエンターテインメントを、ハワイという場所を通じて世界へ届けること。

日本との距離が近く、文化的な親和性があり、観光地として世界的な知名度を持つ。

そして、アメリカの一部でありながら、日本文化を受け入れる素地も大きい。

だからこそハワイは、日本のエンターテインメントにとって「海外進出の最初の一歩」として非常に面白いポジションにある。

日本のスターがハワイへ行く。

ハワイのファンが日本のコンテンツを知る。

日本からファンが現地へ飛ぶ。

その映像やニュースがSNSを通じて世界へ広がる。

そうなれば、ハワイは「終着点」ではなく、「世界への中継地点」になる。

 

■格闘技とポップカルチャーが同じ場所に集まる意味

RIZINとアソビシステム。

両者が同じタイミングでハワイに大きな可能性を見いだしていることは、

日本のエンターテインメント産業全体にとっても興味深い。

格闘技には、スポーツとしての競技性がある。

音楽やアイドルには、ライブやファッション、SNSを通じた発信力がある。

そこにハワイという観光都市の魅力が加われば、「イベントを見るために旅行する」という新しい観光需要も生まれる。

たとえばRIZINの大会を観戦し、その前後にワイキキで日本のポップカルチャーに触れる。

逆に音楽イベントを目的にハワイを訪れたファンが、日本の格闘技にも興味を持つ。

エンターテインメントと観光を横断することで、これまで別々だった市場が一つにつながる可能性がある。

 

■RIZINハワイ大会は「北米進出」の試金石に

榊原CEOは、ハワイ大会について

「1カ月以内には結論を出す」という趣旨の見通しを示した。

「日本からハワイへ」ではなく、「日本とハワイから世界へ」。

2027年に向けて、ハワイが日本エンターテインメントの新たな舞台として存在感を高めていく可能性は十分にある。

ハワイ大会を実現できるのか。

 

榊原CEOが描く「ハワイから北米」という構想は、日本格闘技の海外進出だけにとどまらず、日本のエンターテインメントそのものが世界へ向かうための新しいルートを示すことになるのかもしれない。

サプライズ出演したギャビ・ガルシアの“激変”も含め、

今回の『Preparation』は、RIZINの次なる一手を占う意味でも

見逃せない内容となっている。