ムエタイ女子最強決定戦 “絶対女王”アリシアが死闘を制す ペッディージャーとの頂上対決でV5達成

2026.6.19

【©️ONE Championship 】

女子ムエタイ界の勢力図を占う大一番は、王者の意地がわずかに上回った。

6月19日(日本時間)、タイ・バンコクの聖地ルンピニースタジアムで開催された『ONE Friday Fights 159』において、ONE女子アトム級ムエタイ世界王者のアリシア・ヘレン・ロドリゲス選手(ブラジル)が、同級キックボクシング世界王者ペッディージャー・ルッカオポーロントン選手(タイ)の挑戦を判定2-1で退け、5度目の王座防衛に成功した。

この一戦は単なるタイトルマッチではなかった。ONE Championshipの女子立ち技部門を代表する2人の王者が、それぞれ異なる競技的バックボーンを背負いながら激突する“事実上の最強決定戦”として大きな注目を集めていた。


 

▪️女子立ち技部門を支配してきた世界最高峰の絶対女王”

アリシア選手は、圧倒的なフィジカルと破壊力を武器に長期政権を築いてきた女子ムエタイ界の象徴的存在だ。

昨年7月にはヨハンナ・パーソン選手をKOで撃破し、防衛回数を4に伸ばした。首相撲からのヒザ蹴り、強烈なローキック、そして前進圧力を兼ね備えた戦いぶりは、多くの挑戦者を屈服させてきた。

一方のペッディージャー選手もまた、女子立ち技界における別の頂点に立つ存在である。200戦を超えるキャリアを誇り、ONE女子アトム級キックボクシング王者として君臨。昨年のONE日本大会では元K-1女王のKANA選手を下し、その実力を世界に示した。さらにムエタイルール復帰後も連勝を重ね、ONE参戦後は無敗街道を突き進んでいた。

 

▪️技術と圧力が交錯した25分間

試合は序盤から両者の持ち味が鮮明に表れた。

第1ラウンド、アリシア選手は得意の前進圧力を武器にローキックを織り交ぜながら距離を詰める。一方のペッディージャー選手は軽快なフットワークとジャブ、ワンツーを駆使し、出入りの速い攻撃で応戦した。

第2ラウンド以降は首相撲の攻防が増加。ムエタイらしい駆け引きが展開されるなか、ペッディージャー選手が崩しやヒジ打ちで存在感を発揮する。終盤には王者をコーナーへ追い込み、ラッシュを浴びせる場面も見られた。

しかし、王者は崩れない。

第3ラウンドになるとアリシア選手は得意のヒザ蹴りを連続で突き刺し、試合の流れを引き戻す。至近距離での攻防では体格とパワーを生かした圧力が際立ち、挑戦者を後退させる場面もあった。

それでもペッディージャー選手も譲らない。ラウンド終盤には鋭いヒジ打ちでアリシア選手の顔面をカット。王者の流血という劇的な展開が試合の緊張感をさらに高めた。

 

▪️判定を分けた女王の経験値

第4ラウンド以降は、まさに女子ムエタイ最高峰にふさわしい激闘となった。

パンチ、ヒジ、ヒザ蹴りが交錯する乱打戦のなか、アリシア選手は一撃の重さで存在感を示し、ペッディージャー選手は回転力と手数で対抗する。両者ともに譲らず、勝敗の行方は最終ラウンドまでもつれ込んだ。

迎えた第5ラウンド、アリシア選手は再び前進。ヒザ蹴りやヒジ打ちを軸に圧力を強める。一方のペッディージャー選手も巧みな距離管理とカウンターで応戦し、最後まで王者を苦しめた。

判定はスプリットディシジョン。ジャッジの評価が割れる大接戦の末、軍配は王者アリシア選手に上がった。

 

▪️ONE女子立ち技戦線の価値を高めた歴史的一戦

今回の防衛成功によって、アリシア選手は5度目の王座防衛を達成。改めて女子ムエタイ界における“絶対女王”としての地位を証明した。

しかし、この試合が示したのは王者の強さだけではない。ペッディージャー選手の存在によって、ONE女子立ち技部門が新たな競争時代へ突入したこともまた明らかになった。

近年、ONE Championshipは男子だけでなく女子立ち技競技の価値向上にも力を注いでいる。その象徴とも言える両王者の激突は、女子ムエタイが世界市場でさらなる存在感を高めていく可能性を示す内容だった。


【文:高須基一朗】