レスリング神童のニッカルが強烈フックでドーカスを粉砕 ミドル級 勢力図を揺るがすTKO劇
【©️UFC】
6月15日(日本時間)、米ワシントンD.C.のホワイトハウスで開催された『UFC Freedom 250』。世界中の格闘技ファンの視線がメインカードへ注がれるなか、ミドル級戦線の今後を占う重要な一戦で、ボー・ニッカル選手(米国)が圧巻のパフォーマンスを披露した。
相手は6連勝中と勢いに乗るカイル・ドーカス選手(米国)。
UFC復帰後に着実に評価を高めてきた実力者だったが、
その勢いはニッカル選手の前でわずか1ラウンドで断ち切られることとなった。
試合時間4分34秒。
強烈な右フックが炸裂すると、ドーカス選手は崩れ落ちるようにダウン。
その後は頭を抱えて防戦一方となり、ニッカル選手のパウンドとヒジ打ちの連打を浴びたところでレフェリーが試合を止めた。
会場を包んだ大歓声は、単なるKO決着への興奮だけではない。
そこには「ボー・ニッカルは本物なのか」という長らく続いてきた問いへの、一つの答えが含まれていた。
ニッカル選手はレスリング界では説明不要の存在だ。
NCAA選手権3度制覇に加え、U23世界選手権優勝という実績を持ち、総合格闘技転向時には「次世代のスーパースター候補」として大きな期待を集めた。
しかし、期待値が高かったからこそ、今年のレイニアー・デ・リダー選手戦で喫したプロ初黒星は衝撃だった。レスリングだけでは世界最高峰の舞台を制圧できない。そんな厳しい現実を突きつけられた敗戦でもあった。
だからこそ、この日の大舞台での勝利には大きな意味がある。
序盤から見せた豪快なテイクダウン、上から浴びせる鋭いヒジ打ち、そして最後は打撃で仕留めるフィニッシュワーク。ニッカル選手が見せたのは「レスラーが打撃を覚えた姿」ではなく、「総合格闘家として完成度を高めつつある姿」だった。
特に印象的だったのは、フィニッシュへ至る過程だ。
かつてであればレスリング主体で試合を支配していたニッカル選手が、この日は距離の駆け引きから前蹴り、そして右フックへと連動する打撃でつなげた。
ミドル級トップ戦線で生き残るために必要な進化を感じさせる内容だった。
現在のUFCミドル級は絶対王者不在の混戦期にある。
タイトル戦線を見渡しても、新旧勢力が入り乱れ、次世代スターの台頭が待たれている状況だ。そのなかで、27歳のニッカル選手は依然として市場価値の高い存在であり続けている。
今回の勝利によって、単なる有望株から再びタイトル挑戦候補へ。
そんな期待が高まるのも不思議ではない。
ホワイトハウスに響いた「USA」コールは、勝者を称える歓声であると同時に、
アメリカ格闘技界が次代のスター候補へ寄せる期待の表れだった。
【文:高須基一朗】


