YouTube発の20歳監督が映画界を変える『Backrooms』が北米で記録的大ヒット A24の歴史を書き換えた“異変”
【© Happinet Phantom Studios 】
北米映画市場で、ひとつの“事件”が起きている。
A24製作のホラー映画『Backrooms』が、公開直後から驚異的な興行成績を叩き出し、ハリウッドの勢力図を揺さぶり始めているのだ。しかも、その中心にいるのは、まだ20歳の新人監督ケイン・パーソンズ氏。YouTubeカルチャーから誕生した若き映像作家が、いまや北米映画界最大級の話題をさらっている。
5月29日から31日にかけての週末興行で、『Backrooms』は3442館で公開され、
初週3日間で8140万ドル超を記録。これはA24史上最大のオープニング成績となっただけでなく、同スタジオの従来記録だった『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を大幅に更新する異次元のスタートとなった。
さらに驚くべきは、その勢いが“初動型”にとどまっていないことだ。
公開5日目には、これまでA24最大ヒットだった『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』の累計興収を突破。公開1週間足らずで、同社史上最大のヒット作品へと駆け上がった。
制作費は約1000万ドル。近年のハリウッド大作では珍しくない2億ドル規模の超大作群と比較すれば、極めて低予算の部類に入る。しかし、その“小さな映画”が、『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』や『Michael/マイケル』といった大型IP作品に迫る数字を叩き出している現実は、いまの映画業界を象徴しているとも言える。
背景にあるのは、“インターネット発コンテンツ”の圧倒的な浸透力だ。
『Backrooms』の原点は、ネット掲示板文化から派生した都市伝説系ミーム。
そこへパーソンズ氏が独自の映像センスを加え、YouTube上で公開した短編映像が爆発的支持を獲得した。そして今回、そのネットカルチャーが劇場映画へと拡張され、巨大な商業成功にまで到達したのである。
従来のハリウッドでは、映画監督になるまでに長いキャリア形成が必要とされてきた。しかし現在は、YouTubeやTikTokを通じて“世界規模の観客”を先に獲得したクリエイターが、そのまま映画市場へ参入する時代になりつつある。
実際、パーソンズ氏は『クロニクル』で当時27歳だったジョシュ・トランク氏の記録を更新し、北米興収ランキング1位獲得の最年少監督となった。
さらに興味深いのは、同時期に話題を集めている『オブセッション 災愛』の存在だ。同作を手掛けたカリー・バーカー氏も26歳という若さで、北米市場では異例とも言える“20代監督によるワンツーフィニッシュ”が実現している。
『オブセッション 災愛』もまた、通常の映画興行の常識を覆した。一般的に映画興収は公開初週をピークに下降していくが、同作は3週連続で週末興収を伸ばす異例の推移を記録。こうした現象は、『E.T.』以来40年以上ぶりとも報じられている。
一方で、大型フランチャイズ作品の苦戦も鮮明になってきた。
『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』は大幅な興収減に見舞われ、ランキング3位へ後退。莫大な制作費と既存IP依存型のビジネスモデルに対し、低予算かつSNS主導型作品が存在感を強めている。
もちろん、単なる“若手監督の成功物語”として片づけることもできる。
しかし、『Backrooms』現象の本質はそこではない。
YouTubeネイティブ世代が、もはや映画業界の斜向かいの存在ではなく、
中心そのものへ入り込んでいる。

