大学野球 「楽しんでこい」―父・清原和博氏の言葉を胸に 慶大・清原勝児選手が導いた“奇跡の9回大逆転”
【©️慶應義塾体育会 野球部】
神宮球場に漂っていた空気は、9回を前にしてどこか重かった。
東京六大学野球春季フレッシュトーナメント初日(6月2日)。
慶大は東大相手に5点のビハインドを背負い、敗色濃厚とも映る展開だった。
しかし、その空気を最後まで諦めなかった男がいた。
プロ野球通算525本塁打を誇る“平成の怪物”・清原和博氏を父に持つ、
慶大の清原勝児内野手(2年)である。
結果的に、慶大は9回に一挙7得点。土壇場で試合をひっくり返し、8―6で劇的勝利を収めた。新人戦6連覇を狙うチームにとって、大きな意味を持つ白星となった。
試合後、勝児選手は静かにこう振り返った。
「焦らず、自分たちの野球を貫こうという意識が全員にあった。それが逆転につながったと思います」
この日の勝児選手は、1点ビハインドの5回守備から途中出場。堅実な守備で流れを引き寄せると、7回には左前打を放ち、昨春新人戦以来となる安打を記録した。
特筆すべきは、その“変化”だろう。冬場から徹底して取り組んできたウェートトレーニングによって肉体面が強化され、「初球から強く振れる感覚が出てきた」と語る。父譲りとも言われる長打力だけではなく、大学野球で生き抜くための地道な積み重ねが、少しずつ結果として表れ始めている。
そんな息子のプレーを、スタンドから見守っていたのが父・和博氏だった。
試合前に掛けられた言葉は、実にシンプルだったという。
「とにかく楽しんでこい」
数々の重圧と栄光を経験してきたレジェンドだからこそ、
最後に行き着いたのは“野球を楽しむこと”の大切さなのかもしれない。
勝児選手もまた、その言葉を噛み締めるように語った。
「これからもっと活躍して、父を喜ばせたい。ずっと、楽しく野球をしていきたい」
“清原”という姓には、常に大きな注目が集まる。
比較され、期待され、ときに過剰な視線も向けられる。
それでも勝児選手は、父の背中を追いながらも、
父とは違う“自分自身の野球”を築こうとしている。
神宮で見せた9回の大逆転劇は、単なる1勝ではない。
それは、「清原和博の息子」ではなく、
“慶大・清原勝児”の顔役として象徴するものだった。

