「危ない試合」を引き受ける覚悟─羅向選手が見せた ONEで生き残るための“逆転力”

2026.2.7

©️ONE Championship】

2度のダウン。敗色濃厚。
それでも、リングを支配したのは最後まで立っていた25歳だった。

2月6日、タイ・ルンピニースタジアムで行われたONEチャンピオンシップ「フライデーファイツ141」。
第7試合のフライ級ムエタイで、元NJKFライト級王者・羅向選手(ZERO GYM)が、まさに“崖っぷち”から試合をひっくり返した。


 

相手は、荒々しい突進力を武器にするワン・ムハンマド・サブリ(マレーシア)。
羅向は2回に左フックで2度のダウンを奪われ、KO寸前まで追い込まれる。

それでも、試合はそこで終わらなかった。

本来の羅向選手は、距離を支配し、左ミドルと左ストレートで組み立てるサウスポーだ。
しかしこの日は、序盤からサブリの“荒いファイト”に巻き込まれ、理想とは程遠い近距離の消耗戦を強いられた。

 

2回の2度のダウンは、その象徴だろう。
冷静に見れば「修正できなかった」とも言える。
だが、ONEという舞台では、それだけで評価は終わらない。

3回、羅向選手は退かない選択をした。
距離を取るのではなく、自ら前に出てロープへ詰める。
左右の連打で圧をかけ、右フックで流れを変え、最後は渾身の左肘―。

3回1分17秒。
サブリは立ち上がれず、試合は劇的な逆転KOで幕を閉じた。

試合後、羅向選手は叫んだ。
「ZEROのみんな見てる? まくったぜ!」

インタビューでは、こうも語っている。
「僕の試合はいつも危ないんですけど、こうやっていつも逆転して、まくってます」

ONEがこの試合に与えた評価は明確だった。
35万バーツ(約174万円)のパフォーマンスボーナス。
それは単なる勝利ではなく、「観客を沸かせ、物語を生むファイター」であることへの報酬だ。

ONEでは、“安全な判定勝ち”よりも、“危険でも前に出る姿勢”が評価される。
羅向選手の戦い方は、その価値観と真っ向から重なる。

倒されても、引かない。

理想が崩れても、勝ち筋を探し続け、観客と主催者の双方に刻みつけた一戦だった。