悶絶レバーショットは「偶然」ではない―谷津晴之選手が53秒KOで示したONEムエタイ生存戦略
【©️ONE Championship】
ONE Championshipが展開する金曜定期大会『ONE Friday Fights 141』が2月6日(日本時間)、タイ・バンコクのルンピニースタジアムで行われた。
ストロー級ムエタイに出場した谷津晴之選手(新興ムエタイジム)は、リン・テット・アウン(ミャンマー)を1ラウンド53秒、レバーショットによるKOで下し、連敗からの脱出に成功した。
だが、この“秒殺”は単なる幸運や勢いの産物ではない。ONEという舞台で生き残るために求められる「勝ち方」を、谷津選手が極めて明確に提示した一戦だった。
対戦相手のアウンは、ミャンマー伝統格闘技ラウェイの王者という異色の肩書を持つ。戦績は20勝4敗26分。ONE初参戦ながら、前進圧力を武器とする典型的な“削るファイター”だ。
開始直後、アウンは上体を丸めながら距離を詰めてきた。だが谷津選手は一切慌てない。カーフキック、ミドル、前蹴りを使い分け、相手の侵入角度とタイミングを限定していく。ポイントは「当てること」ではなく、「踏み込ませる場所を決めること」にあった。
そして、アウンが強引に距離を潰そうとしたその瞬間、谷津選手の左レバーが完璧なタイミングで突き刺さる。防御不能の一撃だった。
▪️ONEで評価されるのは「勝利」ではなく「物語」
ONE Friday Fightsという舞台は、単に勝てばいいわけではない。
短時間での決着、明確なフィニッシュ、観客と運営に強い印象を残す“物語性”が評価基準になる。
谷津選手はONE参戦後、3試合連続KOを含む4連勝で一気に注目を集めた。
しかし直近2戦で連敗。
ここで再び判定勝ちや僅差の内容に終わっていれば、序列は簡単に下がりかねなかった。
だからこそ、53秒KOという結果には意味がある。
しかも、狙い澄ましたボディブローという「再現性の高い武器」での決着。
これは偶然ではなく、戦略の帰結だ。
▪️秒殺KOが示す「次の一手」
勝利後、谷津選手はマイクでコーチや関係者への感謝を口にし、パフォーマンスボーナスも手にした。
金銭的な報酬以上に、このボーナスは「ONE側からの評価」を意味する。
連敗からの脱出―それ以上に重要なのは、「この選手はまだ使える」というメッセージを示せたことだ。ONEという巨大プロモーションにおいて、選手のキャリアは勝敗以上に“印象”で左右される。


