井上拓真選手、那須川天心選手との世界戦翌朝も“無傷の笑顔”驚異のディフェンス力が示した世界王者の真価
一睡もせず会見登場「強敵に勝ててホッとした」控え室で天心選手とノーサイド談笑
WBC世界バンタム級王座決定戦から一夜。
圧倒的なスピードと打撃精度で“神童”と称されてきた
那須川天心選手を3-0で下した井上拓真選手が
25日、横浜市の所属ジムで会見に臨んだ。
注目を集めたのは、その “全く腫れのない顔” だった。
世界戦を終えた翌朝とは思えないほどのノーダメージ。日本ボクシング界屈指の技巧派が誇るディフェンス力が、改めて世界基準であることを証明した形だ。
「一睡もしてません」と苦笑しつつも、表情は晴れやか。「返り咲いたというより、強敵の天心選手に勝ててホッとしている」と静かに語った。
■天心の猛攻を“ノーヒット”で切り返す
キック時代から54連勝と圧巻の攻撃力を誇る那須川天心選手に対し、
井上拓真選手は柔らかな上体の動きと的確なブロックで対応。
天心選手の拳をことごとく空転させた。
記者の間でも「この相手にここまで被弾しないボクサーがいたのか」と驚きの声が上がったほどだ。
試合後、控え室では互いに健闘を称え合う場面も。
天心選手から「最後に一発蹴っていいですか?」と笑い混じりの冗談を振られると、
井上拓真選手は「それだけは勘弁して」と返し、場は和やかな雰囲気に包まれたという。
「リング上ではピリつくのが当たり前。でも終わればノーサイド。これがスポーツのいいところ」と井上拓真選手。余裕を感じさせる言葉にも、王者としての矜持がにじむ。
■バンタム級戦線の中心へ ビッグマッチが続々浮上
今回の勝利で、日本ボクシングの激戦区・バンタム級の世界の頂点へに再び返り咲いた。
昨年10月に敗れたWBA王者・堤聖也選手との雪辱戦、堤選手と対戦予定のノニト・ドネア、さらにはバンタム級に上げてきた井岡一翔選手との頂上決戦。
名だたるビッグネームとの対戦が現実味を帯びてきている。
「盛り上がるカードなら誰とでも。話があれば僕は仕上げるだけ。どんな相手でも強い井上拓真をつくりあげる」と意欲満々。
大橋秀行会長も「堤選手とのリベンジや井岡選手との試合も面白い。
魅力的なカードがたくさんある」と期待を寄せる。
■“強敵を寄せつけなかった防御の職人”
天心選手の連勝神話を止めたのは、派手な打ち合いではなく、世界トップクラスの防御技術だった。打たれずに勝つ―ボクシングの最も純度の高い美しさを、井上拓真選手はあの12ラウンドで体現した。
一夜明けても傷一つないその顔は、王者としての磨き抜かれた技術の証明。
兄・井上尚弥選手同様に、バンタム級のモンスター級の主役が、ここに誕生し一夜だったことは間違い無いだろう。

