ゆりやんレトリィバァさん初監督作『禍禍女』、台北金馬でNETPAC賞 日本映画に突きつけた“新しい異物感”が国際映画祭を動かす

2025.11.20

【©️金馬影展TGHFF】

お笑い芸人ゆりやんレトリィバァさんが手がけた

初監督作『禍禍女(まがまがおんな)』が、

台湾の第62回台北金馬映画祭でNETPAC賞を受賞した。

日本人監督としては前例のない受賞だが、

本作がもたらした衝撃は“快挙”の一言では片付かない。

むしろ、日本映画が見落としてきた感情と手触りを突きつけた点こそ、

国際評価の理由と言えるだろう。


 

授賞式の壇上でゆりやんさんは、世界的撮影監督・李屏賓氏から賞状を受け取り涙をこぼした。しかし、その涙の背景には、芸人が本格映画の監督を務めるという日本国内の固定観念への挑戦があったはずだ。

金馬映画祭はアジアでも屈指の映画祭で、これまで黒沢清氏や是枝裕和氏など名だたる監督が作品を送り込んできた。

その舞台で、無名の新人監督として挑んだゆりやんさんの作品が選ばれた意義は小さくない。

NETPAC賞はアジア映画の新潮流を評価する部門だが、

今年の選考はとりわけ“予定調和の破壊”を重視したという。


 

『禍禍女』は、恋愛をテーマにしながらも、

甘さとは無縁の“裂け目”だらけの物語が展開する。

自身の体験を土台にしつつ、

感情のほころびを大胆にさらけ出した点が評価され、

すでに海外映画祭で4冠を獲得。

今回の受賞で、作品の“異物性”は決定的に国際的な存在感を持つことになった。