元NBA選手でトランスジェンダーであることを公にしているエネス・カンターがWNBAドラフト参戦を表明「参加資格を満たしている」異例の挑戦、その背景に女子スポーツを巡る議論

2026.8.8

元NBA選手のエネス・カンター・フリーダム氏が、2027年に予定されているWNBAドラフトへのエントリーを表明した。11年間にわたりNBAでプレーした208センチの元センターによる異例の“WNBA挑戦”は、女子スポーツにおけるトランスジェンダー選手の参加資格を巡る議論が続く中で発表された。


 

カンター氏は現地時間7日、自身の公式Xに動画を投稿。

WNBAの現在の参加資格に関する規定を検討した結果、

2027年4月に行われるドラフトへの参加資格があると主張した。

「私のチームとともにWNBAの参加資格を慎重に検討した。現在のガイドラインに基づけば、私は参加資格を満たしている」

そう説明したうえで、「もし必要なのが、自分が誰なのかを宣言することだけなのであれば、WNBAでプレーするために必要な条件をすべて満たしている」と発言。最後には「トレーニングキャンプで会いましょう」と、実際の参戦を意識したメッセージを残した。

 もっとも、現時点でWNBAがカンター氏のドラフト参加資格を認めたわけではない。今回の発表は、あくまで本人がリーグの規定を独自に解釈したうえでの表明だ。

 

▪️WNBAの規定に着目 「女性」の定義を巡るポイント

カンター氏が注目したのは、WNBAと選手会が締結した労使協定(CBA)の参加資格に関する条項だ。

2026年から2032年までを対象とする新CBAでは、「WNBAでプレーする資格があるのは女性である選手のみ」と定められている。

一方で、カンター氏が問題提起しているのは、公開されている規定の中で「女性」をどのように定義するのか、また性自認を参加資格の判断に

どのように反映するのかが明確に記されていない点だ。

 

さらにCBAには、性的指向などを理由とした差別を認めない趣旨の規定も存在する。カンター氏は、こうした複数の条項を組み合わせることで、自身もWNBAへの参加資格を主張できると考えているとみられる。

ただし、現在のCBAが「自己認識した性別を申告すればWNBAへの参加資格を得られる」と定めているわけではない。WNBAの公式FAQでも、ドラフトについては年齢や大学資格などの条件が示されているものの、今回のカンター氏の主張を認める記載は確認されていない。

 

▪️女子スポーツを巡る議論が広がる中での発表

今回の表明が注目を集めている背景には、WNBAを舞台とした女子スポーツにおけるトランスジェンダー選手の参加を巡る議論がある。

WNBA選手のソフィー・カニンガム選手が女子スポーツにおけるトランスジェンダー選手の参加について発言したことをきっかけに、米国ではスポーツ界を中心にさまざまな意見が交わされている。

こうした状況の中で、元NBA選手のカンター氏がリーグの規定を取り上げ、「自分も参加資格があるのではないか」と問題提起した格好だ。

カンター氏自身も、今回の表明が特定の個人やコミュニティーを攻撃することを目的としたものではないと説明している。

 「誰かを嘲笑したり、からかったり、特定のコミュニティーや個人の選択を軽視したりするためではない」

 そのうえで、WNBAが掲げている原則を自らのルールにも適用することを期待していると強調した。

 

▪️WNBAは現時点で公式見解を示さず

 今回の発表を受け、WNBAがどのような対応を取るのかにも注目が集まっている。

 現時点でリーグ側は、カンター氏のドラフト参加表明について公式な見解を示していない。一方、WNBA選手会(WNBPA)は、正義、公平性、多様性、インクルージョンを支持する姿勢を示し、難しい問題について対話を続けていく考えを表明している。

 WNBAは2026年に新たな7年契約のCBAをスタートさせたばかり。リーグの競技環境や選手の待遇だけでなく、社会的なテーマについても大きな注目を集める時期となっている。

 

▪️NBAを離れても発信を続けるカンター氏

カンター氏は2011年のNBAドラフトで指名され、ニューヨーク・ニックスやユタ・ジャズ、オクラホマシティ・サンダー、ボストン・セルティックスなどでプレー。2022年にNBAを離れて以降は、人権問題や政治問題について積極的に発信する活動家としても知られている。

今回のWNBAドラフト表明も、単なる競技復帰ではなく、プロスポーツにおけるルールや公平性について問題を投げかける意味合いが強いとみられる。

果たしてカンター氏の主張に対して、WNBAはどのような判断を示すのか。